耐性とエルフ。
どうやら私は男の子だと思われていたらしい‥。
確かに髪はショートカットだし、身長もそんなに高くないし、どう見たって女の子じゃないの?!不服申し立てすると、ラヴィさんが頭を抱えた。
「‥男だと思ったから、うちへ来ないかと言ったが、まさか女の子だとは‥」
「あ、そういう事だったんですね」
「当たり前だ!!いくら子供でも男女で同じ家なんて常識的にまずいだろう!」
「いきなり女の子扱いになっても‥」
「先生、女の子に耐性ないからな〜〜」
「チェルナ!ちょっと黙ってなさい!!」
そ、そうか‥。
流石に女の子と一つ屋根の下はダメだって感覚はこっちの世界でも同じなのか‥。ちょっと大丈夫かなって思ったけど、逆にここまで真剣に考えてくれるなら安心かもしれない。
「まぁ、ラヴィさんは大丈夫でしょ」
「なんだその自信は!?」
「いやー、ラヴィさんに女の子をどうこうしようって気概は感じられな‥」
「女子が!!!そんな事を!!!!言うんじゃありません!!」
滅茶苦茶真剣に怒られた。
それを私の隣で見ていたチェルナは「面白い事になってきた」と呟いたけど、あの、お弟子さんだよね?
「と、ともかく!それなら部屋や風呂に入っている時は俺が絶対に入れないように術を掛けておくが、適宜不便を感じたらすぐに申告しろ!」
「え、住んでもいいんですか?」
「ここでどこかへ放り出す俺は一体どんな悪鬼だ?」
「そうですね。大変助かります」
うん、ラヴィさんは本当にいい人だ。
家事全般できないけど。
と、話がまとまると私のお腹がぐうっと鳴った。
「そろそろポトフできましたかね」
「‥お前はもう少し女子としての危機感や、その他諸々を育てろ」
「今はお腹が空いてるので無理ですね。あ、チェルナ君も食べる?」
「食べる〜!」
「‥チェルナ、お前も感化されないようにしなさい」
ブツブツと文句を言いつつポトフをお皿によそって、さっき買ってきたチーズにパンを挟んで一緒に食べる。かなり大きな一口大のジャガイモや玉ねぎ、人参だけど、私の知っている食材で助かった‥。こんな無茶苦茶な目に遭ってて、料理まで最悪だったら私は号泣してたよ。
どこか緊張感漂う顔で私を見つめるラヴィさんを横目に、ふうふうと息を吹きかけて、少し冷めたじゃがいもかじると、ほんのりコンソメ味がついていて美味しい。
「ん〜〜〜、美味しい!!」
「そ、そうか!」
「ラヴィさんも食べないんですか?」
「た、食べるとも!!」
ラヴィさんもふうふうと人参を少し冷ましてから一口かじると、目を輝かせた。
「うむ‥!!魔術だけでなく料理までできるとは私は素晴らしいな!」
「いや〜〜〜‥、これだけでそう決定付けちゃうのは早いかな」
「なんだと?!野菜を切って煮たんだぞ!」
「まぁ、そうですけど‥」
世の中のコックさんは、そうなるとものすごい偉業を毎日成し遂げてる事になるな〜。スープを飲む傍らチェルナ君は見た目通り猫舌らしく、未だ野菜に真剣に息を吹きかけ続けている‥。めっちゃ可愛い。
「それにしても、今度はどこに鍵が現れるかなぁ‥」
「鍵?」
私の言葉にチェルナ君が目を丸くする。
あ、そういえばここに地球から連れて来られたのは言ったけど、その理由は言ってなかったな。掻い摘んで説明すると、チェルナ君は呆れたように私を見て、
「‥大外れを引いたのか」
と、しみじみ言った。
もちろん頷いたさ。大いに頷いたさ。
「まぁ、そんな訳で何か変化があれば、そこに鍵があるって事なんだ」
「そうか‥。じゃあ、僕ギルドで働いてるし何かわかればすぐ教えるよ」
「ありがとう!!頼りになる!!」
「‥おい。そういう異変があれば俺にもちゃんと連絡が来るんだぞ?」
「ラヴィさんも多分頼りになる!!」
「おい!なんだその差は!?」
いやぁ〜〜、家事力と自活力の差かなぁ‥。
あ、でも魔術を自分の家なのに私の為に掛けてくれるし、そこは大変有り難い。よく見れば料理をする際にちょっと切れてしまった指が雑に包帯で巻かれている。
‥なんていうか、不器用なんだけど可愛いんだよね。
「ラヴィさんって、私よりずっと大人なんですよね?」
「そうだが!?」
「‥大人なのに可愛いですよね」
「は!??」
固まるラヴィさんの横で、スープをごくごくと飲み干すとお腹がポカポカする。真っ赤になったラヴィさんが、「か、可愛いじゃなくて、格好いいだろう!?」って言ってたけど、とりあえずポトフを堪能した。




