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本音と鍵。


あれからご飯を食べた私とチェルナ君、ナズ君は子供だという事で部屋で休むように言われて別室へ案内された。‥ラヴィさんが一番怪我したにも関わらずまだ仕事とは、大人って大変だ。


食堂の二階にある小さな部屋にはソファーとベッドが置いてあって、ナズ君とチェルナ君はベッドに倒れた。なんだか子供らしいなと笑って、私はソファーの方へ座るけれどようやく緊張が解けたのか、どっと疲れが出た。



「っはーーーー!!疲れたぁああ!!」

「そうだよねぇ、魔法も使いまくってたし‥。あ、ナズ君すっかり忘れてたけどブレスレット返すね」

「ブレスレット持っててもいいのに‥」

「いやいや大事な物だから!あと帰らなくて大丈夫?」

「もう少ししたら帰る。けど、魔道具あって良かった。今度こっち来る時、便利そうなの持ってくる」

「‥できればもう何事も起こらないで欲しいんだけどね」



それにしても魔道具って便利である。

穢れにも使えるなんてすごいよなぁ‥。ナズ君に手渡したブレスレットを見て、ガチャでもああいうアイテムで出てくれればいいのに‥って思うけど、ふと何かを忘れているような気がする。


「チェルはもう少ししたら帰るのか?」

「そうだね。聴取はしてきたし、薬の業者は逮捕したし、他の植物も全部ギルドの人が抑えてくれたから帰って報告書を書いて、報奨金の計算をしなきゃ‥」

「「忙しそう‥‥」」


私とナズ君の言葉が重なってしまう。

そんなに働くの?子供なのに?思わず飴でもないかとラヴィさんの持っていた鞄を見つめて、ハッとした。



「ギルドの人達、鞄に入れっぱなしだった!!」

「「あ」」

「ど、どうしよう!?まだネズミかな?それとも人間に戻ってるかな?」

「僕すぐに先生に鞄を渡してくる!!」

「俺も行く!!」

「え、ちょっと?!」



二人は慌ただしく鞄を持って部屋から飛び出して行ってしまった‥。

やっぱり私より若いから体力あるな。ポテッとソファーの背もたれに頭を載せると、ぐったりと体を横たわらせた。


ああ疲れた‥。

でも今回もなんとかなって良かった。



「鍵は今度はどこに行ったのかな‥」



魔女に祝福された石から力を貰ったけど、そうなるとどんな存在になるのかな?異世界に行くには、その世界のものに変わらないといけないってラヴィさんが言ってたけど‥。そうなると鍵はこの世界のものになるの?でも、それはこっちの世界だけの話なのか‥。


悶々と考えていると、コンコンとドアがノックされて返事をするとラヴィさんがそっと顔を出した。



「あ、ラヴィさん!チェルナ君達が鞄を‥」

「ギルドの職員ならもうとっくに魔法で治しておいた。2人は食堂でお菓子を貰って食べてる」

「‥それは良かった。ラヴィさんはお仕事は?」

「俺もひと段落ついたから休みに来た」

「それなら隣でもどうぞ。あ、それか私がベッドに座りましょうか」

「‥‥‥‥ソファーでいい。ベッドには座るな」



なんとも言えない顔をしたラヴィさんに頷いて、ソファーの横を開けるとラヴィさんが静かに座ったかと思うと、大きく息を吐いた。うーん疲れているなぁ‥。


「‥頭でも撫でましょうか?」

「なんでそうなる?!普通は肩を揉むとか‥、いや、そういう事は間違ってもしなくていいが、頭を撫でる以外にも出来る事はあるだろう」

「うーん、じゃあキス‥は流石にダメか」

「当たり前だ!犬の時は、その、一回は事故だったが‥、そういうのは好きな人にするものだからな?」


真っ赤な顔でラヴィさんがじとっと睨んだけど、その好きな人がラヴィさんなんだけど。けれどそれを言ったらまずいだろうしなぁ‥。



「‥じゃあ、今度はそうします」



私の言葉にラヴィさんの体がピタリと止まった。

え?何かまずい事言った?だって好きな人にしろって言ったのラヴィさんだよね?緑の瞳に戻ったラヴィさんを見上げて、


「好きな人なら、いいんですよね?」

「‥‥‥‥そうだな」


ラヴィさんは小さくそう呟いて、自分の手をじっと見つめたかと思うと、私に手を差し出した。



「えっと?」

「‥近くにいれば何かに巻き込まれてないとわかって安心できるから、手を握ってろ」

「素直じゃないな〜〜。手くらい握るのに」

「お前はそういうことをホイホイと言うんじゃない」

「ラヴィさんだから言ってるんですよ」

「‥‥‥これだから、子供は」



プイッと横を向いたけれど、ラヴィさんの耳が赤い。

本当に不器用で、可愛いなぁ。そっと大きな手を握ると、ゆっくりとラヴィさんの手が私の手を握り返してくれた。その暖かさに胸の奥がじわじわと嬉しくなる。



好きでもない相手と手なんか繋がないよ。



そう言えたら楽なんだけどな‥。

本音に鍵をしてラヴィさんの肩に頭を寄りかからせると、気持ちが溢れないようにゆっくりと目を瞑った。




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