装備の打ち合わせ
次の日も切り株抜き、そして、お昼にウサギ狩り。
レベルが上がった時の変化が大きすぎるので、自分の筋肉が付いてきているのかどうかが分かりにくい。見た目的には少し付いたような気がするのだが。これでは、筋トレよりゴブリン討伐と考えてしまうのも頷ける。
合間を見て、革鎧屋に行く。
「待ってたよ!さあ、さあ」
今日もテンションの高い女親方だった。
「まず、装備は、手首から肘までを守る手甲、肩から肘までを守る肩当、胸部と背中を守る胸当て、腰から太ももまでを守るスカート、膝から下を守るブーツと。今までの構成を変えないようにした。内側には、衝撃吸収力と靭性に優れたサイクロプスの革、そして表には硬いキングスコーピオンの甲殻だ。こいつはいいぞ。表面が滑らかだから刃物は垂直に当てないと滑ってしまい切れない。ブーツは、向う脛とつま先部分のみ甲殻を使い、足首は動きを妨げない程度に柔らかく仕上げる。靴底は再生能力があるトロール革だ。そんで、魔法防御の仕組みだが、ブラジャーとスパッツだったか。スパイダーシルクのを注文してあるんだよな」
「そうです」
「まず、ブラジャーの中央に4cm程度のポケットを作ってもらってくれ」
「ポケット?」
「そうだ、そこに極小防御魔法陣を彫り込んだ金属板を入れる」
「そんなところに金属ですか」
「金属だと流し込める魔力量が段違いだ。強力な防御魔法となる。それに、ブラジャーに仕込めば普段使いもできる。心臓に近いのもいい。自然放出魔力量が多いから、何もしなくても防御魔法が発動している状態になる」
「なるほど」
「そして、魔力経路だが、腹とスカート、肩当まではヒドラ革が魔力を通す。そして、スパッツを通ってブーツまで行きわたる。んで、腕と背中部分だけを覆う長袖の鎧下に肩当を縫い合わせる。袖だけのカーディガンのようなものだ。なので、肩当を装着するときは、その服を羽織るような感じになる。そして生地にはミスリルの糸を混ぜ込む。これで手甲まで魔力を通す」
「その金属板一つで全身防御できるということですね」
「その通り」
「それでいくらになったんですか?」
「金貨850枚だ」
「結構いきましたね」
「そうだな。これでもサイクロプスの革はオークション前のものを安く卸してもらったものだし、キングスコーピオンの甲殻もフォレストワースの特産だからな。王都や迷宮都市で買うよりはかなりお買い得になっていると思うぜ」
そういう事なら、いいかな。お買い得とか言われてしまうとね。
「あ、そうだ。頭ってどうなりましたか?」
「それなんだが、髪の毛も一応魔力を通すので、肩に掛かるようにしておけばそれだけでも効果があるのだが、帽子はあまり好きでは無いのだろう?」
「そうですね」
「となると、魔法石なんだが・・・」
「魔法石?魔石では無く?」
「魔法石というのは、迷宮でまれに見つかる魔法陣が刻まれた石だ。その効果は様々で、たぶん頭の防御に使えるようなものもあるはずだ。ただし、高い」
「どのくらいですか?」
「金貨1000枚くらいだな。まあ、金があって迷宮都市に行くことがあったら探してみるといい。この街では売っていないからな」
「ふーん。そんなものがあるのか」
さすが迷宮は何でもありなのか。
「だから、バンダナのように頭に巻く感じでいいか?」
「はい、それでお願いします」
「それと、コートとかも新調しないか?魔物の毛皮で。この前買った奴では夜とか寒いだろ。この前のは街中で使って、今回のはフィールド用ということで」
「そ、そうですね」
女親方の笑みに気押された。
「きれいなグレートボアの毛皮があってな。それでどうだ」
ん、グレートボア?もしかして、こっちに来て初日に倒した個体だったりして。特徴なんかは覚えていないから判別できないと思うが。
「では、それで」
「あと、肘までのケープもどうだ。肩当を使わないときはそれだけ羽織っていれば、素肌を隠せるし、日焼けも防げる。フード付にしておけば、雨避けや、顔を隠したりしたいときにも便利だ」
そういえば、この体の持ち主、エレーナも使っていたな。
「では、それで」
「よし、それじゃ、合計ぴったり金貨1000枚だ」
きっちり予算を全部使い切りやがったよ。オーバーしなかっただけましだけど。
「・・・では、それで」
「よし、こちらこそよろしく!いやー、久しぶりに腕が鳴るなぁ」
女親方は握手した後、肩をグルグル回していた。
「でも、あと2週間くらいでこの街を離れるので、それまでに間に合いますか?」
「んん!?そうか、いや、何とかしよう。まかせとけ」
今度は、背中をバンバン叩かれた。
ここで使ったお金は、新しく素材を手に入れた冒険者に渡り、その冒険者は手にしたお金で新しい装備を買う。ここにしっかりとしたお金の循環がある。
冒険者は景気がいいはずだ。一大産業といってもいい。
とはいうもののの、自分は生粋の日本人気質なので全ては使わない。
明日をも知れぬ身ならともかく、もうすぐ冒険者は引退予定なので。貯金も好きだし。
だったら買わなくてもいいのではないかと思うかもしれないが、冒険者の感覚では、装備は資産。宝石ほどではないものの、ブランドバッグや車のようなものだ。使えば価値は下がるかもしれないけれど、売却可能だし、身に着けていれば持ち運びに便利。
それはステータスであり、そしてなにより命を守ってくれる。
次の日は、もう魔力草採集の日だった。
すると当然、魔法学園に行く話が出るわけで。
「王都に行くとき、一緒に行かないかい?」
アーサーが提案してきた?
「いいんですか?」
「たまにはね。こことフォレストワースの往復だけの毎日というのも飽きてきたし」
「それならお願いします」
知っている顔があるなら旅も少し気楽になる。
「それで、その時には王都向かう商隊の護衛を一緒に受けてもらいたい」
「仕事をしながら移動という事ですか」
「そうだね」
「分かりました」
「では、依頼はこちらで探しておくよ」
「よろしくお願いいたします」
そんな感じで、チーム暁と一緒に王都に向かうことが決定した。




