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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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88/115

インフレ率1000%

 朝、一番でトイレに入る。

 どうも若い連中よりは早起きしてしまうようで、外はまだ薄暗かった。すると当然トイレの中もかなり暗いわけだが、明かりの魔法があるのでそんなものは関係が無い。マリー達は起きられないのでは無く、明るくなるまで布団の中で待機しているのかもしれないが。

 入って早々に傍らに設置された真新しい魔道具に魔力を注ぐ。すると充満していた香ばしい臭いが一瞬で消え去った。この魔道具最高。自分はそのまま事が終わるまで魔力を注ぎ続ける。この魔道具持ち歩きたい。魔法陣がもう少し小さければ。通常のサイズは直径20cmの円形だ。バッグか何かに入れて持ち歩くなら可能だけど。


 昨日の夜は話ができなかったので、朝食中に話す事にした。

「えー、みんなもう気が付いていると思うけど、トイレに消臭の魔道具が付きました」

「ほら、やっぱりそうだったろ」

 ジークが誇らしげに言っている。

「で、魔石を入れれば誰でも使えるけど、できるだけ自分の魔力を流して使うように」

「「「えー!」」」

 まだ魔力をうまく扱えない男共が不満を口にする。

「どうせ練習していないでしょ。うまく流せれば、臭いが消えてとても分かりやすいから」

 男性恐怖症を克服してから一度だけ、マリーにしてあげた様に魔法使用時の魔力の動きを体験させている。ちなみに魔法を発動できたのはまだマリーだけ。

 そして、深呼吸。あの話をしなければならない。こういうことは、後に伸ばすと(ろく)なことが無いんだ。

「それというのも、お姉さんは、魔法学園に行くことに決めました」

 部屋のざわざわとしていた雰囲気が凍り付いた。

「えっ?」

 マリーのキョトンとした顔が『ウソでしょう』と訴えかけてくる。

「なので君たちには、できれば、後半月そこそこで、ゴブリンを危なげなく倒せる程度の力を付けてもらいたいです」

「お姉さん・・・、やっぱり、私たちを見捨てるんですか?」

 マリーの目に涙があふれてきた。

「いや、見捨てるわけじゃないから」

「いらなくなったから捨てるんですね」

 マリーの顔はもうクシャクシャになっていた。

「捨てない、捨てないから。勉強が終わったらまた戻ってくるから」

「じゃあ、一緒に連れて行ってください」

「寮に入るからそれは無理なんだ」

 今の稼ぎがあれば、家を借りてみんなで住むことは可能かもしれないが、昼間に勉強して夜に生活費を稼ぐことになる。それはたぶん大変なことだと思う。自分の過去の経験上、アルバイトすると勉強がおろそかになる。それができる人もいるのかもしれないが、自分はできない。やりたい仕事が見つからないからとか、まだ遊んでいたいからとか、みんなが行くからとか、そういった理由で学校に通うのならともかく、今回は本当に魔法を勉強したいから学校に行くのだ。

 そして、王都周辺の魔物は駆逐されているので、討伐依頼がほとんど無いらしい。それではマリー達のレベルアップは望めない。物価も高いだろうし、今以上に自分が養っていくような事態になりかねない。

「一生懸命頑張ります。だから置いていかないで。ちゃんといい子にしてます。わがままも言いません。だから、だから・・・うわーん」

 泣き止まないマリーの頭を抱きしめた。


 体感的に大分経った頃、泣きつかれたマリーは寝ていた。

 それをそっと抱えて暖炉前の(わら)クッションに寝かせた。

「この家はどうなるの?」

 ジークがそっと聞いてきた。

「ここは、そのまま使ってていいから。ベッドも魔道具もそのまま置いていく。ただ、家賃は全額払ってね」

「うう、大丈夫かなぁ」

「最悪払えなくても、何とかなるようにはしておいたから」

 商業ギルドの口座にお金を残しておいて、不足したらそこから払われる事になっている。

「では、後をよろしくね。出かけてくるから」

 ジークとアレン、トムは切り株抜きに行くようだ。一緒に家を出た。

 ジョンは眠っているマリーとお留守番。マリーを放って全員で出掛けてしまったら、大変なことになるのは目に見えている。マリーが目を覚ました時は大変だろうが、ジョン、頑張れ。


 冒険者ギルドに顔を出すと別室に案内された。

 ジーク達は道具を借りて先に南門へ向かう。

 また何か嫌な予感が・・・。

 部屋に入るとオズワルドとヘクターがいた。

「おはようございます。なんでしょうか?」

「これが推薦状だ」

「ありがとうございます」

 用事は推薦状の事だったかと思い、少しほっとした。

 仕事が速いね。さすがヘクターさんに頼んで正解だった。

「それと、討伐の成果報酬だ。猿が200、」

『安っ!』と言いそうになってしまった。基本報酬が30000Crだっただけに。

「そして、巨人が30万だ」

 今、とんでもない金額を聞いたような。

「・・・、えーと、もう一度お願いします」

「30万Crだよ。小金貨で3000枚だ」

「えっ、えっ、えっ・・・」

 揶揄(からか)われているのかと思い、ヘクターを見る。

 ヘクターは笑顔で頷いた。

「えーっ!!」

「おら、どうだ。驚け。これが冒険者だ。これでもまだ冒険者やりたくないと言えるか?」

 オズワルドは笑顔だが、目が笑っていない。

「えーと、登録だけは残しておきます」

 辞めるとは言えなかった。Cランクは強制依頼があるから辞めようかとも思っていたのに。

「そうかそうか、そうだよな。王都に移動する日が決まったら受付に言っておけ。そんで、王都に着いたら王都のギルドに顔を出して、移動してきたと言えばそれで手続きは終わりだ」

「手続きですか」

「活動拠点を移すときの手続きですよ」

 ヘクターがオズワルドの説明を補足する。

「そんで、卒業したらまた戻ってこい」

 オズワルドの笑顔は、今度は目も笑っていた。

「はぁ」

 曖昧(あいまい)に返事をしておいた。知人も増えたけれど、あんな危ない魔物が徘徊(はいかい)しているような危険地帯なんだよね。ここは。

「今回の報酬は、ギルドの口座に入っています。受付で冒険者章を提示すればいつでも引き出せます。商業ギルドと同じです」

 今度はヘクターが話し始めた。

「え、冒険者章で買い物も出来るんですか?」

「申し訳ないのですが、そういったことは出来ません」

「じゃ、今、全部引き出します」

「ぜ、全部・・・。もしかして商業ギルドに持って行きますか?」

「はい。そっちの方が使うとき便利なので」

「では、こちらの方で手続きしておきましょう。申し訳ありませんが、他の討伐参加者には昨日のうちに支払いを済ませたので、現在、ギルドの金貨が底をついていまして」

「巨人の素材が売れなかったんですか?」

「いえ、大半の素材が王都でオークションにかけられる予定ですので、まだお金が入ってきていないのです。とはいいましても冒険者には早めに報酬を用意しないと・・・粗暴な方も多いので」

「それは大変ですね」

「ご理解いただけてありがたいです」

 昨日、お祭りが終わっても店で飲み直す人が多いと思ったら、報酬がたんまりと入ったからだったのか。これに合わせて延期した腕相撲大会を開催していたら、いい売り上げがあったかもしれない。でも延期した大会は3日後に迫っている。最近、一週間が早い。

「ところで、こんな依頼があるのですが、興味ありませんか?」

 ヘクターが差し出した依頼書には依頼書には大きくこう書かれていた。

『巨人の足跡をたどり、新しいダンジョンを発見した場合 2,000,000Cr』

 ゴクリ。

 生つばを飲み込んでしまった。2億円かよ。一生遊んで暮らせるよ。いや、エルフだと寿命が長そうだから無理なのか?

「・・・その手には乗りませんよ」

「そんなに警戒しないでください。今ちょうどこの依頼書を書き上げたところで、手元にあったというだけですよ」

 ヘクターは笑っていた。

 オズワルドはニヤついていた。

 なんか怖いんだよな。


 メラニアさんのところで魔素注入のバイトした後、革鎧をお願いした店に行く。

「おっ、来たか!ちょっとこっちに来てくれ」

 ご機嫌な女親方は、テーブルを挟んで話し始めた。

「これをこの素材で、ここをこうして・・・」

 とても弾んだ声で話し続けている。

「もう少し予算があれば、この素材が使えるんだがなぁ」

 などと本当に残念そうな笑顔で、こちらを覗きこんでくる。本当にそう思っているのか、ただの営業トークかよく分からないが、少し悪戯(いたずら)心がくすぐられてきた。お金もあるし。

「じゃ、予算は金貨1000枚で。このくらいあれば、足りますか?」

「はあ!?金貨1000枚?そりゃ楽勝だけど。ほんとか?」

「はい。それで、最強装備にして下さい」

「いや、ちょっと待て。そこまで出せるなら・・・明日また来てくれ。全部見直すから」

「えっ?」

「ふっふっふ。夢が膨らむなぁ」

「あの・・・夢は夢のままでいいんですが。足りない分を補う程度で」

「いや、予算が足りなくて泣く泣く妥協(だきょう)した部分がいっぱいあってな」

「まぁ、それならいいんですが。ほんの少ししか性能が上がらないのに、希少で高い素材とかは使わなくていいですからね」

「分かってるって、任しとけ、任しとけ」

 なんか不安だ。まぁいい。明日話を聞いてダメなら買わなければいいんだ。


 その後は、ジーク達と一緒に切り株抜き。

 久しぶりに斧を振るってみるとかなり軽く感じられた。もしかして、レベルが上がったのかも。

 その後、マリー達も合流した。マリーは無口だったが。しかし、みんな今までより真面目に作業している。時間が無いと分かったおかげだろうか。

 お昼はゴブリン鍋が無い。作りたくてもまだゴブリンが帰ってきていない。ゴブリンが居なければ魚も捕れない。仕方がないので、久しぶりにウサギを狩る。

 そして、薪を売りに行く。

 切り株抜きをしていると街道を歩くエディ達が挨拶してくる。ゴブリンはまだ戻ってきていないようで、ゴブリンを探しながら薬草採集をして稼いでいるという話だった。


 夕方、道具をギルドに返しに行ったとき、みんなでレベルの計測を行った。

 マリー達はみんな揃って3になっていた。1つ上がって大喜び。

 で、自分はというと21から25へ、一気に4つも上がっていた。測定したギルバートも驚いていた。だいたいどのくらいでレベルが上がっていくのかを知っているはずの受付が。

 これは巨人のせいだな、絶対に。大人数で討伐したが、やはり(とど)めを刺すとレベルの上がり方が速いのだろう。


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