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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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戦いの跡地

 今日はゆっくりショッピングの予定だったのに再び山道を歩いている。

 マリー達は、おしゃべりもせずに少し後ろから付いてくる。殿に案内役だったCランクの冒険者。

 躊躇(ちゅうちょ)すること無く全方180度に索敵魔法を放ち続けながら歩いた。確かに魔物の気配は無かった。

 途中で帰りの荷運び隊とすれ違った。Dランク程度の冒険者も多く混じっているようだ。

 皆、背負子に荷物を背負っている。マリー達も背負っていた。

 すれ違うときに軽く話をしたが魔物の目撃情報は無かった。

 結局、魔物とは遭遇せずに現場に到着した。

 巨人は半ば解体されていたが、あのときの場所に倒れ伏したそのままに居た。

「お姉さん、これを倒したんですか?」

 マリーは信じられないといった表情で巨人を見ていた。

「そう。みんなでね」

「すっげー!」

 ジークは一人興奮しているようだったが、他の男共はあまりの大きさに青ざめている。

 マリー達と一緒に巨人を見上げていると、オズワルドに声をかけられた。

「おう。冷却を手伝ってくれるんだってな。早速で悪いが、こっちで頼む」

 休憩する暇も無かった。


 解体前のものや、解体して梱包されたものまで、色々なものを冷却させられた。さすがに魔力がきついかと思ったが、これだけ使っていると効率が上がってくるようで夕食直前まで働いた。

 今回の野営は気楽だ。周辺には簡易的な柵が作ってあり、辺りにはかがり火が焚かれていた。夜の警備はそれを請け負った冒険者がいる。夕食もそれを準備する人が居て、簡易テーブルで順番に取ることができた。テントも用意されていて、さらには仮設のトイレやシャワーまであった。この辺はマリー達が持ってきた荷物に入っていたようで、マリー達は設置を手伝ったのだとか。一緒に夕食を取りながら話をした。

 テントはマリーと一緒だった。

 マリーは疲れていたのか、借り物の毛布に包まるとすぐに寝息を立てて寝始めた。

 しかしその寝息はすぐにいびきに変わり、結局、自分は寝不足のまま朝を迎えたのだった。

 眠い目をこすりながら朝食をとる。

 食事には巨人の肉が使われていた。巨人の肉は特に高価なわけでもなく普通の肉の扱いと同じようだ。値段的にはオークと同程度。ただ、ここにはたっぷりあるのでマリー達は喜んでお代わりをしていた。

 ジーク達、男共の顔には髭が生えていた。剃刀(かみそり)を忘れたらしい。なんか変な感じ、少し老けて見える。

 肉を冷やしたら昼まで時間が空いた。暇なのでこのキャンプ地を見て回る。

 いろいろな人が働いていた。非戦闘員も見かける。

 解体された柔らかいものは樽に詰めたり、凍らせて箱に詰めたり。大きな葉でくるんでから袋詰めされる部位もある。骨の優先順位は低いらしく野積みされていた。

 解体現場にはトーマスとサラもいた。仕事の邪魔にならないように遠くから見ていると、気が付いたサラは手を振ってくれた。笑顔だったが、血だらけのエプロンに、目の下には酷い隈、ギルド職員にはなりたくないと改めて思う。


 少し斜面を上り、岩に腰掛け窪地全体を見渡す。

 巨人が暴れた広場は、折れた木が散乱し地面も荒れていたが、木はすっかり片付けられ整地されていた。周囲には柵が張り巡らされ、多くのテントが立ち並んでいる。巨人の深い足跡があった辺りにトイレが設置されている。あの穴はそのまま利用されているのだろう。しかし、野営地のど真ん中にトイレってどうなの?臭いは気にならないのか?

 巨人の頭はすっかり骨だけになり、内蔵も早々に解体されたようだ。上半身で残っているのは両腕のみとなっている。腰から下は藁で厚く巻かれていた。

 巨人の近くには穴が掘られ、解体処理されたものが整然と積み上げられている。

 そこから目線を移動すると、手前の林の中に斜めにそびえ立つ巨木。少し間違えばあれが自分の墓標になっていたかもしれない。

 遠く遠く何処までも続く魔の森は、今日は静かに眠っているようだ。暖かな風が頬をなでていく。やさしい日差しを背中に受け、少し眠気を催してしまう。ここが危険地帯だと言うことは分かっているのだが・・・。

 一昨日の地獄のような戦場とは打って変わり、今日は穏やかな時間が流れている。とても同じ場所とは思えない。

 あの戦いでは何人か命を落とした人もいた。慰霊碑とかあるのだろうか。さっき歩いて回ったときは見かけなかったけど、無いなら作るのを提案しようかな。

 付近を見回すと岩の隣に数輪の見知らぬ花が咲いていた。それを手折(たお)る。名前も知らない花を見つめながら、また岩に腰をかけた。

「やあ、こんなところで何をしているんだい?」

 突然声をかけられたので驚いて振り向いた。

 この人は見覚えがある。猿を最後まで追いかけた5人の内の一人だ。

「休憩中です。ガルフさんでしたっけ?」

「覚えていてくれたのか。ありがたいねぇ。俺もここいいか?」

 ガルフも同じ岩に腰をかけようとしてきたが、すぐ隣では無く少し下の辺りだ。距離感がいい大人だ。

「どうぞ。ガルフさんも休憩ですか?」

「ああ、今見回りしてきたところだ。ここは見晴らしが良いな」

 ガルフは遠くを眺めている。

「魔物は近くに居そうですか?」

「いや、全然だな。戻ってくるのにもう数日かかりそうな感じだ。たぶん、あの咆哮が聞こえた範囲の魔物はすっかり逃げちまったんじゃねぇかな。俺も出来れば逃げ出したかったぜ」

「私もですよ」

 二人して笑う。

「花が好きなのか?」

 手に持っていた花がガルフの目に止まったらしい。

「いえ、勇敢な戦士達の慰霊碑があったら手向けようかと」

 するとガルフの目が見開かれた。

「ああ、すまねぇな。あいつのためになんか」

「えっ!?」

「そうだよな、知らねぇよな。一人は俺たちのパーティメンバーだったんだよ。お調子もんでよ。いいやつだった」

 ガルフはしばらく遠くを見つめていた。

「そうそう、この前の大会。会長の試合で投げた金貨を口でくわえたヤツ。覚えてねぇかな」

 いたね。そんなことをしたヤツが・・・。覚えているとも、酔っ払って楽しそうに笑っていた笑顔を。

「それは・・・えと、お悔やみ申し上げます」

「あ、わりぃ。気を遣わせちまったかな」

「いえ、いえ」

 気まずい。

「でもよ、俺は遠くから見ていて、会長が真っ先に死んだと思ったけどな」

「私?」

「アレを喰らってよく生きていたよな」

 ガルフの視線の先には巨木があった。

「ああ、さすがにアレは自分でも死んだと思いましたよ」

 二人して笑う。

「とんなことでよ、どうだ、俺たちのパーティに入らねぇか?」

「すみません」

「ああ、気にすんな。お決まりの挨拶みたいなもんだからよ。俺らくらいになると新たなメンバーはなかなか見つからなくて・・・。ま、暫くは護衛依頼で繋ぐしかないかな」

 少し強い風が吹き、長い金髪が揺れた。ガルフを見ると、まだ遠くを眺めていた。

「・・・そろそろ行くかな。じゃ、またな」

 ガルフは寂しげな笑顔を残して去っていった。


 昼前に荷運び隊が到着すると、キャンプ地全体が慌ただしくなった。

 自分が冷凍したものをつぎつぎとマジックバッグに詰めていく。

 そして、まだ解体が終わっていない巨体も冷やしたり凍らせたり。どうも部位によっても扱いが違うらしく、細かく指示された。

 それが終わると遅い時間の昼食を食べてから、帰還する荷運び隊と一緒に出発する。マリー達はまた荷物を持たされていたが、自分は手ぶら。荷物を背負っていないのは自分だけのようだったので、少しいたたまれない気持ちになりながらも、隊列の中央付近を歩いた。なんでかなと思っていたら、街に到着する1時間くらい前に日没を迎えてしまい、明かりの魔法を使うことになった。またこれかい。おかげで結構な人数に異常な明かり魔法を目撃される事態となってしまった。自分は明かりの真下なのでまぶしくは無いが、後ろを振り返るとみんな下を向いて歩いていた。だよね~。


 ギルドに帰ると、ヘクターに呼び出された。

「ご苦労様でした。道中はいかがでしたか。魔物はいなかったでしょう」

「そうですね。気配もありませんでした」

「テントでの野営も悪くは無かったでしょう。いろいろ取り揃えましたからね。簡易ベッドもあると良かったのかもしれませんが、そこまで荷物を増やしてしまうと持って帰ってくるのも大変ですから」

「いえ、十分快適でしたよ」

 マリーと同じテントでさえなければ。

「そうですか。それはよかったです。それと、あたらしい冒険者章です。古いのはお預かりします」

「は?」

 手渡された冒険者章を見ると、銀色に輝いていてCと刻んであった。

「リューさんは本日からCランクです。おめでとうございます」

「えっ、早すぎじゃないですか?こんな簡単にCランクに?」

「簡単ではないですよ。その簡単では無い事をリューさんはここ数日で成し遂げたのです。誇っていいですよ」

 ヘクターさんはそんな事を言っているが怪しいものだ。猿討伐前にオズワルドがCランクにしたがっていたのだから。

 しばらく疑惑の目で見つめていたが、ヘクターの笑顔は崩れなかった。表情からは何も読み取れない。

「そんなに疑わないでくださいよ。本当に凄い事なのです。サイクロプスに止めを差したのですから」

「あれは、みんなで協力してやったことだし、槍は借りものだし」

「それでもです。素手で巨人を殴り倒す人はいません。武器が借りものであるかどうかなんて、それこそ関係ありませんよ」

 そこで、お茶を一口飲むヘクター。

「それに、登録から一カ月もかからずにCランクになる人は他にもいますよ。レイラさんとか」

「へぇ」

 しかし、ヘクターはあえて口にしなかった。ランクにもパーティ込みでのランクと、ソロでのランクがあることを。そして、DランクからCランクに上がるのに8日というのも例を見ない。

「それと、ロックレインモンキー討伐と、今回の依頼の報酬合計で、42000Crです。大金貨で42枚入っています」

 ゴスン。

 ヘクターがテーブルに置いた革袋から重厚な音がした。

 一昨日、アーサーから手渡された報酬42枚と同じ枚数だが、金貨の種類が違う。

 持ち上げてみるとずっしりとした重み。札束もいいけど、貴金属の重みもすばらしい。

 開けてみると、黄金の輝きがまぶしすぎて手が震えてくる。

 ゴクリ。

 思わず生唾を飲み込んでしまった。

「ありがとうございます」

 持ち歩くには余りにも怖いので、この後すぐに商業ギルドに持ち込んだ。


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