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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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野営付きの依頼

 コンコン。

 ドアをノックする音がする。

 眠い。昨日は疲れたし、夜も遅かった。もう少し寝かせてほしい。

 コンコン。

「お姉さん」

 マリーの声だ。

 仕方ない。少し肌寒い中、布団から抜け出しドアを少しだけ開ける。

 ドアの隙間から覗き込むと、マリーの驚いた顔があった。

「お、おはようございます」

 マリーの視線が下がっていき、そして下を向いた。

「おはよう」

「綺麗な女の人が来てますよ」

「綺麗な女の人?」

 はて、誰だろうか?

「玄関先で待っていますよ」

「分かった、すぐに行く」

「どうでも良いですけど、そんな格好で寝てて風邪引かないんですか?」

 そんな格好ね。いつものパンツいっちょだが・・・。

「お布団が暖かいから大丈夫」

 そういえば、絹のパジャマ仕上がっていないかな。寝るときが楽しみだ。今日もお店に行ってみよう。


 着替えて玄関を開けると、メラニアさんが立っていた。

「おはようございます」

「おはよう。ねぇ、約束忘れてない?」

 そういえば、魔素注入のアルバイトがあった。イレギュラーなことがあったから、すっかり忘れてしまっていた。

 メラニアさんは、少し怒っているように見える。

「ごめんなさい」

 昔だったら、確実に言い訳していたところだが。

「もう、やっぱり。でもいいわ。昨日はずいぶんと大変だったみたいだし。それで、疲れているところ申し訳ないんだけど、頼めるかしら」

「あ、大丈夫です」


 二人並んで、お店まで歩く。

「昨日はこっちも大変だったのよ。夕方も近くなってから避難命令が出て、荷造りして門の近くに待機していたら、今度は巨人を討伐したって連絡があるし」

「それは、大変でしたね」

「そして、真夜中になってから魔力草を渡されて。さっきまで徹夜でポーション作り。それも、これから数日は毎日魔力草が入荷するらしいわ。だから・・・、悪いんだけど・・・その間、毎日お願いできないかしら」

「いいですよ」

「ごめんなさいね。毎日だと大変だからって話をして、少し量は減らしてもらえたから。でもこれから毎日夜遅くまで仕事になっちゃった。こんな不規則な仕事をしていると、お肌が荒れちゃうのよね。でも、ポーション飲めばすぐに良くなるから。そういう点では私達って恵まれているのよね」

 その後も、メラニアさんの口は止まらなかった。討伐の話も聞かれたけど、すぐにお店に着いてしまった。

「申し訳ないんだけど、少し仮眠させてね。終わったら起こしてちょうだい。ポーションで眠気も無くなれば良いのにね・・・。ふわぁ」

 その後、しっかりと魔力を補充してポーションを完成させると、メラニアさんはまだ眠い目をこすりながら錬金ギルドに納品に行った。

 アルバイト代は200Crだった。少し安いんじゃ無いかと思って軽~く言ってみたら、即500Crになった。まだまだ上乗せできそうな気もするが、綺麗なお姉さんとのおしゃべりは癒やしの時間である。嫌いでは無い。いや、そういう表現は良くないな。はっきり言って好きである。冒険者ギルドの受付嬢ともお話ししたいが、冷たい態度だしなぁ。あ、レイラの所に魔法学園の話を聞きに行こう。

 でもその前に、お腹が空いた。ここはご褒美に、美味しいものが食べたい。

 変な時間だったがプライムローズはオープンしていた。少しお昼には早い時間。朝飯は食べていないので、ブランチという事になるのだろうか。テラス席で優雅にお食事をしていると・・・。

「あっ、お姉さん!こんな所にいた!」

 マリーに見つかった。優雅な時間は終わってしまったようだ。

「荷物運びの依頼を一緒に受けませんか」

「荷物運び?」

「お姉さんと一緒なら、依頼を受けても良いって話なんですよ。基本はDランクの依頼なので、報酬が良いんです!」

 マリーのテンションがとても高い。これは破格の報酬なのだろう。でも、それって大丈夫なのだろうか。裏がありそうな。

「ちょっと一緒にキルドまで来て下さい!」

「えぇー!」

 マリーに引っ張られて冒険者ギルドに連れていかれた。


「ギルバートさん!お姉さん連れてきました!」

「おっ、じゃ受けるのか?」

「待って下さい。まずは話を聞かせて下さい」

 トントン拍子に依頼を受けることになってしまっては困るので、いったん止めに入る。

「じゃ、奥で話そう」

 そう言って案内されたのが、副ギルド長ヘクターの所だった。

 なぜこんな所へ?嫌な予感がする。

「ああ、やっと見つかりましたか。まずは落ち着いて話を聞いてほしいのですが。運んでほしい荷物はマジックバッグに入った荷物で、場所は巨人のところです」

「な!?」

「落ち着いて下さいね。こちらの事情としましては、元々Dランクのパーティに依頼する予定だったのですが、運ぶ荷物が予想以上に高額な物になりまして、もう少し信頼のおける者に頼みたいと言うことになりした」

 そこで言葉を区切り、こちらをじっと見つめるヘクター。こちらから何も言わずに聞いている姿勢を見て話を続ける。

「そこで、ちょうどギルドにいたアイアンイーグルに話を持ちかけました。しかし、Eランクの彼らでは実力的にあの周辺の魔物に太刀打ちできないため、リューさんと一緒なら依頼可能という話をしました」

「それでも私一人では、心許ないです」

「そこは、安心して下さい。もう一人、Cランクの案内役が付きます。まあ、リューさんがいるなら案内役は不要なのですが。戦力としてちょうど良いでしょう。はっきり言って、今回頼もうとしていたDランクのパーティより、リューさん一人の方が魔物への対処能力は高いと見ています。どうですか、受けていただけますか?」

 少し考える。Cランクと二人で5人を守るのか。数の多いフォレストウルフとかに襲われるとまずい。

「そのDランクパーティと一緒に行くというのは?」

「すこし素行の悪いパーティでして、女性の方が一緒だとトラブルが心配です」

 そういうことかよ。

「報酬はいくらなんですか?」

「アイアンイーグルは、一人当たり100Crです」

 Dランクの標準報酬らしい。マリーは期待を込めた顔でこっちを見ていた。

 アイアンイーグルの5日分の稼ぎを1日でということか。断り辛いなぁ。これがヘクターさんの狙いか?

「興味がおありなら、リューさんの報酬とお仕事について相談したいので、皆さんには表で待っていてもらいましょう」

 マリー達は、ギルバートに連れられて部屋を出て行く。

「お姉さん。お願いしますね!」

 最後にマリーに笑顔で念押しされてしまった。


「実際の所は、まだ魔物は帰ってきていないようでして遭遇報告はありません。なので、そんなに心配する必要は無いかと思います」

「では何ですか?」

「リューさんに頼みたい仕事は、巨人の冷却です」

「嫌です。みんなと一緒に帰れなくなるじゃないですか」

「それなのですが、最初にお話を持ちかけたときには帰りの運搬部隊に間に合う時間帯だったのですが、今からですと彼らの足では間に合わないと思います。そのため、今日は現地で野営した後、明日の運搬部隊と一緒に帰還ということになります」

「えっ、そんな話は聞いていませんよ」

「はい、今話したのが初めてです。アイアンイーグルにはリューさんとの話がまとまってからお話しする予定です」

「それじゃ、報酬の方も一人100Crではなくなるんですよね」

「はい、それはもちろん。急な話になりますので、お詫びもかねて色を付けさせていただきます」

 ヘクターは、そこでお茶を一口飲んだ。そして話を続ける。

「それと、巨人の冷却に関しての事情なのですが、冷却は魔道具で行っています。それには魔石を使用します。オークやゴブリンの魔石といった下級魔石の在庫を全て持って行ってあるのですが、一日程度しか保たない事が予想されます。運悪く天気が良いですからね。それに暖かい。リューさんはこのマデリン支部から供給される下級魔石の量をご存じですか?」

「いえ、分からないです」

「国全体の1/7です。これらの魔石は、庶民の生活用の魔道具に使用されます。一時的ではありますが、魔石の価格に影響があるかもしれないレベルです。中級以上の魔石は魔力の量に比べて価格の方が高いため、冷却コストが高くなりすぎてしまいます。一部、冷却できずに素材を腐らせて販売価格が下がるのと、どちらが良いのか判断に悩むところです。かといって市中の下級魔石を買い占めると、庶民の生活に多大な影響が出てしまいます。これは我々も望んでいません。そこで、リューさんに一日と言わず、半日だけでも冷却をお願いしたいのです」

「他に魔法使いはいないのですか?」

「レイラさんのような方が数人でもいれば良いのですが、昨日の討伐でもお分かりの通り、今、この街にはいません。リューさんへの依頼料は10000Crでどうでしょうか?そのくらい我々も苦慮しているということを、ご理解いただければありがたいです」

 依頼料が最近おかしな事になっている。これが高ランク冒険者の旨みと言うことだろうか。まだDランクだけどね。他に替えの効かない事ができるというのは、それだけの価値があると言うことなのだろう。

「では、12000Crではどうですか?」

 ヘクターは事もなげに告げる。

 考えていたら、あっという間に2000Cr追加されたよ。これで、魔力草採集一回分なんて、少しゴネたらまだまだ簡単に上がりそうな気もするけれど、金に貪欲だと思われるのも嫌だ。

「分かりました」

「受けていただけると?」

「はい」

「なんと!ありがとうございます」

 しかし、マリー達を上手く使われたような気がしてならない。

「荷物ってどのくらいあるのでしょうか?もしかして、私が一人で持てるのでは?」

 マリー達を危険な目に合わせたくないと思っての発言だった。

「案内役と二人でなら、ギリギリ持てるかもしれないですね。その方が我々もありがたいですが。でも、そうしてしまったら彼らは仕事を取られたと思うのではないですか?」

「ああ、そうですね」

 マリーが怒り狂うかもしれない。

「今回の依頼では、あくまで、リューさんは護衛ですので荷物持ちを手伝ったりしないで下さいね」

「あ、はい。気をつけます」

 言われていなかったら、手伝っていたかも。

「それと依頼内容の詳細ですが、行きは荷運び隊アイアンイーグルの護衛です。現地到着後、すぐに冷却の作業を行って下さい。作業は、今日の夜、明日の朝、明日の昼の3回を予定していますが、現地の指示に従って下さい。魔力切れになった場合はそこまでで結構です。ちゃんと睡眠時間や、休憩時間もありますよ。よろしいでしょうか?」

「はい」


 その後、またアイアンイーグルを交えた話し合いになった。

「出発時間が遅くなってしまったので、この依頼は野営込みで明日の帰還となります」

「「「えっ!?」」」

 まあ、突然そんなことを言われたらそういう反応は当たり前だ。

「その代わりに、依頼料は一人当たり220Crにします」

「え、そんなに!?」

 マリーの目が見開かれる。

「はい、リューさんにお願いされたのでね。ただし、雑用も手伝って貰いますよ」

「お姉さんありがとー!」

 マリーに抱きつかれた。

 間違ってはいないが、そんなに感激されるほどの事をした覚えは無い。なんか、ヘクターさんにうまく操られた感が・・・。

 だが、全てうまくまとまったようで、不満は一切無い。


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