表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/115

後始末

 踏み潰された者が一名、巨木で叩き潰された者が一名、振り回されていた木の折れた枝の部分で頭を串刺しにされた者が一名、吹き飛ばされて運悪く首を折った者が一名。

 いや、踏み潰されたと思われた男は生きていたので、犠牲者は3名だった。


 キンキン。

 スティーブが、自分の剣で巨人の目玉をたたいている。

「そんなに堅いんだ」

「そう。だからあの矢を受けても傷一つ付いていないだろ」

 屈みこんで矢が当たった辺りを確認してみるが、綺麗な物だった。

「無傷なら、あんなに怒ること無かったと思わない?」

 矢のお返しに巨木がぶっ飛んできたのは解せん。

「虫の居所が悪かったんだろ。普通目玉は狙わない」

 スティーブは笑っているが死にかけたことを思い出してほしい。

「おい、傷つけんなよ。高く売れるんだからよ」

 オズワルドはたまたま通りかかったようだが、歩みを止めずに立ち去っていった。

「傷なんて付けられないっての」

「いや、死ぬと魔力が霧散するから少し強度が落ちるんだ」

「そういう事は、早く教えてよ。もしかして知らないの私だけ?」

「そうかもな。有名な話だから。ちなみに、これは超高額な盾になる。盾に隠れても敵が見える優れものだ。後は、王族の馬車の窓とかな」

「立派な用途だね。しかし、そんな有名になるほどサイクロプスってダンジョンにうじゃうじゃいるの?」

「いや、深い階層にボスとしているんじゃなかったかな。だから、普通は外に出てくることも無い。今回の場合は、この足跡をたどると新しいダンジョンが見つかるんじゃないかとオズワルドが息巻いていたよ」

「へぇー」

「街に帰ったら、もっと騒がしいことになるかもな」

「へぇー」

「おいおい、なんだそのやる気の無さそうな返事は」

「私は、探索にもダンジョンにも行く気はないので」

 空を見上げると日差しが大分傾いてきている。もうすぐ日が沈むだろう。

 ちなみに今は巨人の頭を冷却している。

 ダンジョン種が地上で見つかることは激レアだ。深い階層の魔物は倒しても素材をそれほど持ち帰れないので、今回のサイクロプスのサンプルは貴重らしい。全て持ち帰りたいが、『今日は無理なので冷やしておいてくれ』とオズワルドに軽く頼まれた。しかし、このサイズ、全く終わる気がしない。

 今、魔石を取り出しているので、邪魔にならないよう頭を冷やしている。それが終わってこの堅い角膜らしい部分を取り始めたら、今度はお腹を冷やす手筈になっている。他の魔法使いは激しい戦闘で魔力がすっからかんになり全員へばっている。手伝ってくれる人はいない。

 できれば凍らせてくれとのことだが、それは無理。時間がかかりすぎて。

 それらの素材を取り出したら、10人ほどの見張りを置いて帰路につく。暗い夜道を歩くことになるだろう。外れを引いた10人はかわいそうだが、野営の準備も無くここで一夜を明かすことになる。

 ちなみに、サイクロプスの肉は食えた。野営チームが焚き火で焼いていたので、スティーブに一切れもらってきて貰ったのだ。可も無く不可も無く。無難な肉だった。しかしこの巨体、血抜きなんてできないぞ。心臓を貫いたから血は大量に出たけど。そしたら、その血も貴重とのことで、ポーションの空き瓶とかに詰めている人がいた。

 あ、お花摘みも忘れずに済ませてきた。数少ない女性の冒険者と一緒に。交代で見張りをしながら。あの踏み潰された男が埋まっていた巨人の足跡の中で。周りからは見えないのでちょうど良かった。臭いは(こも)ってしまうのだが、この世界の住人は皆慣れている。

 女性冒険者は魔法使いが多かった。レイラみたいに魔法学園の出身者かと思ったら、それは珍しいらしい。普通は弟子入りして魔法を学ぶのだそうだ。魔法学園の出身者は格が違うらしい。レイラはじいさん魔法使いより凄いという話を聞いた。今日もレイラがいたらすぐに倒せたんじゃ無いかという話だった。

 そのときに聞いた話だが、街への伝令として返された二人は男女で、来月結婚する予定だったとか。オズワルド、意外だな。そんな気遣いができるようには見えないが。

 魔槍はかなり遠くまで飛んでしまっていたようだ。オリンピックだったらぶっちぎりで金メダルだ。可哀そうな槍の持ち主はギルマスに直談判し、10数人を引き連れ捜索に出ていたが、運よく暗くなる前に見つけることができたようだった。


 帰りは夜道を歩くことになった。

 40人ほどが一列になって歩いて行く。

 命をなげうってまで戦った勇敢な者の遺体は、そのパーティメンバーが運んでいる。巨人相手に勝利はしたが、おおっぴらに喜べない雰囲気がそこにはあった。

 巨人の木に飛ばされている人は何人も見ていたが、そのうちの誰が死んだのかは認識していない。目の前で死んだに違いないのだが、面識の無い人だし、何の感情も沸かなかった。大人数の戦いでは、こんなものなのだろうか。でも暁の誰かが死んでいたら泣いていたに違いない。

 自重して程よい明るさの照明の魔法を弓の先端に付けて歩いていたら、暁は隊列の真ん中に配置された。

 そして『もっと明るくできるだろ』とかオズワルドに言われた。まったくもって人使いが荒すぎる。他の魔法使いは魔力切れで、小さな明かりの魔法しか使っていないというのに。オズワルドは森の木漏れ日亭での話を知っているな。じゃなかったらそんな提案するはずが無い。噂の広まり方がはんぱないな。娯楽が少なすぎるのがいけないんだきっと。ここ数日の話も尾ひれが付いて広まるのかもしれない。

 先頭や最後尾の方は、急造したお手製の松明(たいまつ)を使っている。短くなってくると熱いので、当然交換が必要で、替えもいくつか持っている。隊列の真ん中だけこんなに明るくて、しかも色が白いし、帰りを待っている者が街から見たら異様な光景だと思う。

 ちなみに大自然の中でこんなことをすると、虫がたくさん集まってくる。飛び疲れた虫の一部は、私の頭の上で休憩したりしている。部分的にもっと異様な光景だと思う。

 顔に体当たりされるのは我慢しよう。でも鼻の穴に飛び込むのはホント勘弁してください・・・。


 帰りも何の魔物とも遭遇しなかった。

 川に差し掛かると、こんな夜中なのに渡し船が待っていて、順に渡っていく。

 街の門は閉まっていたが、討伐隊を迎え入れるように開け放たれた。

 街に入ると結構な人数の歓迎を受ける。

 道端には荷車や馬車が並び、荷解きをしている人が多くいた。

 巨人討伐の連絡を受けて、避難用に荷造りした荷物を片付けているのかな。


 オズワルドはギルド内に討伐隊全員を集めた。

「今日は、ご苦労だった。猿も巨人も討伐完了だ。なお、巨人の討伐は、サルの討伐とは別に報酬が支払われる。強制依頼の固定報酬は、明日には支払うが、成果報酬は数日かかる。特に巨人の素材はいくらになるか分からないからな。時間はかかるが期待していいぞ」

「「「うぉー!!!」」」

 歓喜の雄たけびが、そこかしこからあがった。

「で、今日は帰る前に自分の成果を報告してから帰ってもらう。こちらでもあらかた把握しているが、後になって文句が出ないようにな。それから、この時間じゃ飯も食えないだろうから、ギルドの食堂は無料で開放する」

「「「うぉー!!!」」」

「おい、少し早い!静かにしろ!ただ、酒は飲み過ぎるなよ!べろべろに酔っぱらって報告できなくても知らんからな!」

「「「うぉー!!!」」」

 確かに、腹が減った。夕方に巨人の肉は食ったけど。ふらふらと飲食のカウンターの方に向かおうとするとオズワルドから声をかけられた。

「暁は明日早いんだよな。最初に報告聞くからこっちに来てくれ」

 自分はゆっくり昼まで寝る予定ですよ。でも、先に対応してくれるなら何も言わないでおこう。


 別室で報告を聞くようだが、一人一人個別らしい。

 そして、自分の前にはオズワルドが座っている。

 なんで?ここはアーサーじゃないの?

「あー、なんか報告あるか?なければ帰って良し」

 うわ、適当過ぎるだろ。

 止めを差したのは、作戦会議をしたから分かっているとして、他に・・・。

「えー、巨人を転がしました」

「それは知ってる」

「では、槍を投げて、膝の上くらいに刺さりました」

「それも知ってる」

 おや、結構ちゃんと把握しているようだ。

「ふむ」

 少し考える。するとオズワルドは、何か紙を見ながら話しはじめた。

「13匹の猿に有効な攻撃。内、単独による攻撃で落下した猿6匹。連携した同時攻撃により落下した猿4匹。撲殺1」

 猿討伐からか。にしても随分詳細に把握しているようで、これは報告不要かも。

「巨人の注意を引き付けて巨木を食らったろ。そんで、巨人を転がし、槍を突き立て、最後にとどめを差した。と」

「あ、そういえば、巨人に踏みつぶされていた人を助けました」

「あの魔槍の持ち主か。Bランクパーティ、ブレイクスルーのリーダー、ケインだな」

「名前は、知らないんですけど、きっとそう」

「一緒に戦った仲間の名前ぐらい覚えておいてやれ」

「うぐっ」

 忘れたんじゃないし、聞いていないだけだし。それも失礼な話かもしれないが。でもみんなは自分を知っているんだよな~。なんでかな~。

「あとは、そうですね。何度か巨人の動きを止めました」

「あー、転がした後な、ピクピクしてたわ。で、そんなもんは、もうどうでもいいんだよ」

「えっ?」

「おまえの貢献度は圧倒的だからな。報酬は期待していていいぞ。おら、もう帰った帰った。次がつかえているんだよ」

「はぁ。では、失礼します」

「次も期待しているぞ」

 最後の言葉にだけ言い返したかった。もう嫌だと。

 そういえば、巨人を冷やしたのもかなり疲れたんですけど、明かりの魔法も。

 閉めた扉をすぐに開ける。

「冷却魔法と、照明魔法も!」

 ビクンと驚いたようなオズワルドが怒鳴る。

「俺が頼んだんだから、そんなの分かっている!さっさと帰れ!」

 今度こそ帰ろうと扉を閉めかけると。

「おっと待ったぁ!明日、巨人を凍らせてくれないか。報酬は弾むぞ」

 今度はオズワルドから呼び止められたが、もちろん断った。


 ギルドのロビーに出ると入り口からマリー達が中を覗いていた。手を振ると駆け寄ってくる。

「お姉さん、大丈夫ですか!?」

 かなり焦ったような声だった。

「大丈夫だけど」

「血だらけじゃないですか!」

 マリーに言われ、あらためて体を見て見た。

 胸の防具には点々と滴り落ちた血の跡がある。これは吹き飛ばされたとき。

 袖口にもべったりと血が付いている。これはスティーブ足を治療したときの血だな。

「んー、まぁ、今は治っているから平気だよ」

「首回りとか、真っ赤ですよ」

「首?」

 擦ってみると赤い泥が手についた。

「うわ。汚い。首は洗うの忘れてた」

 最後、巨人に土をかけられたときに付いた泥と砂だろう。そういえば顔しか洗ってなかった。

 マリーにジト目で睨まれる。

 巨人と比べれば可愛いね。

「大丈夫。それより、お腹が減ったから何か食べさせて」

「お姉さん、疲れているでしょう。私たちが持ってきますよ」

「おっ、うれしいねぇ」

 どこか座るところを探したがテーブルは全て埋まっていた。

「じゃ、外で食べようか。ちょっと寒いかもしれないけど。あっ、そうそう。今日は無料らしいからみんなも食べれば?エールも無料らしいよ」

「マジかよ!」

 急に勢いづくジーク達。急いで長い列に並び始めた。


 ギルドの外で石畳みの上にコートを広げ待っていると、そこにアーサー達がギルドから出てきた。

「よっ。今日はお疲れさん。明日早いから、先に帰るよ」

 アーサーも疲れた顔をしている。

「今週は休みが無かったですね」

「昔は、休みなんて取らなかったからね。慣れてるよ。ああそうだ、魔力草はちゃんと納品してきたから、これ取り分」

 小金貨42枚を手渡された。

「えっ、私何もしていませんけど」

 今日、魔力草を採集したのは暁のはず。自分は採集していない。

「昨日、共に取りに行ったじゃないか。それと、オークの分も」

「いいんですか?」

「それがパーティというものだ。では、お先に」

 アーサーは手を上げて帰っていく。

「ありがとうな」

「また、来週。よろしく」

「では」

 スティーブ、ルイスも、モーガンも笑顔を残して夜道に消えていった。

 暁に入るのも悪くないと思うのだが、やはり冒険者は自分の命を賭け金にしてギャンブルしているようなものだと思う。どんなに安全なところに賭けても、1つの負けで全てを失うリスクが付いて回る。

 自分の白い手を見つめる。そこには、斧をふるった時の、弓を射る時のタコが出来ていた。そしてポーションで消しきれない、うっすらとしたシミや傷跡。こちらの世界に来たときには真っ白だったキャンパスに刻まれていく自分の生きた証だ。やはり、大きなミスをする前に、冒険者という危険極まりない職業からは足を洗おう。

 神様、本当に自由に生きてもいいのですよね。

 今まで迷ってきたが魔法学校へ通う事を決めた。魔法騎士科は無い。魔法科は就職先が魔法師団では、また戦いに身を置くことになりそう。それに貴族が多いのもトラブルの予感が。錬金科も悪くないが、メラニアさんの話を聞いているといまいち。前世の知識も役に立たないし。狙うのは魔道具科にした。知識チートで便利な魔道具を開発し、お金ガッポリ、快適な生活環境を整えるのはどうだろうか。

 そこにマリー達が手に料理を抱えて戻ってきた。

 巨人討伐のおこぼれにあずかれて、みんないい笑顔だ。

(ごめんねマリー)

 心の中で謝る。近々話さなければならないと思うと気が重くなるが、今日は祝杯だ。楽しく飲もう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ