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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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延長戦(前)

 魔法使いのじいさんと自分は、左右に分かれて一番遠くに配置された。

 物陰に隠れ片膝立ちで様子をうかがっている。

 背負っている矢筒には20本の矢しか入らない。自分専用の特注の矢は残り3本。他は支給品を補充した。支給品は、少し長さが短く、そして軽い。威力重視なら残り3本の矢は貴重だ。

 ズン・・・。ズン・・・。ズン・・・。ズン・・・。

 だんだんと大きくなってくる、しかし単調な地響き。

 嫌でも心臓の鼓動が速くなってくる。

 メキメキ。バキバキ。

 そのうち木が裂けるような音も混じり始めた。

 いよいよだ。

 弓を握りしめ、地面の上に押し付けている拳に力が入る。

 そんな拳に触れるものがあった。

 ふと、隣を見るとスティーブが笑顔で言う。

「力、入りすぎだ」

「ありがと」

 その笑顔も無理をしているのが分かる。気持ちは嬉しいが、そんなんじゃダメだよ。Bランクの先輩冒険者さん。

 巨人から距離を取っていれば投石があったとしても見てから回避可能だ。身体強化があるから。反応速度も上げられる身体強化は、ある意味チート級だ。そんな自分よりスティーブの方が危ないだろう。レイラの顔がふと頭に浮ぶ。父親の顔も知らない子供なんてかわいそうだ。ここは頑張らないと、と自分を鼓舞した。

「来るぞ!」

 遠くの方で声がした。

 丘の上を颯爽(さっそう)と超えてくる人影。

「後は任せた!」

 囮役の冒険者が帰ってきた。

 丘の上に一つ目の巨大な顔がせり上がってきた。

 そこに小さな火種が飛んでいく。

 じいさんの先制攻撃だった。

 ドン!!!

 顔面が炎に包まれる巨人。

 一瞬のけぞったが、その爆炎は左手で簡単に払われた。

 鼻が赤く(ただ)れていたが致命傷には程遠い。

「グオオオオオォォォォーーーーー!!!」

 巨人が吠えた。

 体が震えて動けない。

 次に巨人は地面を掴み、何かを狙うわけでもなく広範囲に投げつけた。

 スティーブが素早く盾を構えて目の前に立ち塞がる。

 バチバチバチ! パラパラ。

 近くの地面から小さな小石が跳ねる音がした。しかし盾には何も当たらなかったようだ。

 大量の緑の葉や枝が頭上から降り注ぐ中、すぐに盾の陰から顔を出し巨人と周囲の状況を確認する。

 いろいろと声が聞こえてきたが、切羽詰まったようなものは無い。ぐったりしているような人も見当たらなかった。少しホッとする。

 巨人は丘の上に立っていた。

 最初はじいさんの方を見ていたが、手前に囮役の冒険者がいることに気付き下を見た。右手に持っていた巨木を上段に構えると、丘の上から飛ぶ巨体。そして、振り下ろされる巨木。

 ドゴン!!!

 地面の揺れとともに衝撃波のようなものも感じた。

 囮役の冒険者は吹き飛ばされてしまったようだが、すぐに立ち上がると逃げていく。少しホッとした。

 さて、やっと自分の射程距離内に入ってきたようなので矢を番える。

 20m以上ある上半身は、木の(こずえ)が厚く邪魔をして狙いにくい。

 全体的に筋肉の鎧で覆われている。そして、肩幅があり、腕が膝に届きそうなほどに長かった。近くで見上げたら首が痛くなりそうだ。こんなの本当に倒せるのか?

 まずは足という話だったので下の方を狙う。

 一番痛そうなのは膝だが、骨に当たっても無意味だろうから、皿の少し上かな。

 結果、矢は狙った場所に刺さったが、大してダメージを与えたようには見受けられない。

 試しに、2本目、3本目は、支給品の矢を使ったが、一応刺さった。しかし、ぶらぶらと垂れ下がるだけで巨人は歯牙にもかけない。人間につまようじの先端が刺さって、ぶらぶらしているような感じだ。血も出ていない。

 無意味な攻撃をするのは虚しいので、上半身を狙える位置に移動する事にした。ここは少し斜面を登った位置なので、降りていく。

「おい、あまり正面に出るな」

 スティーブが忠告してくる。

「じゃ、この辺で」

 少し木々の間が空いていて、巨人の頭まで見える場所を見つけた。

 すぐに構え、どこを狙うか考える。

 巨人の足元には既に近接職が多数いて、アキレス腱の辺りをちょくちょくと攻撃しているようだ。巨木が振り下ろされても、何とか避けている。

 股間には何もない。男でもなく女でもない。ダンジョンが生み出した魔物なのだろう。

 心臓は無理だろう。深く刺さるとは思えないし。

 喉?そういえば、足の次に首を狙うと言っていたはず。

 喉仏に刺さったら痛そうだ。

 巨木の振り下ろしや、足踏みにより揺れる地面に、しっかりと足を踏ん張りタイミングを見て第4射。

 見事、狙ったところに刺さると、巨人は一瞬こちらを見た。凍り付くような視線だった。

 しかし、すぐに足元に視線を移す。

 ちょうどモーガンのハンマーが当たったようで、あからさまに嫌そうな顔をした。

 そして、振り払われる巨木。周辺の木々を巻き込んだおかげで、モーガンは吹き飛ばされていた。

「モーガン!」

 スティーブが叫ぶ。

 10m以上飛ばされてぐったりしていたが、すぐにアーサーが駆け寄り何か飲ませているようだった。ポーションだろう。

 追撃があるとまずい状況だったが、他の冒険者の痛い攻撃があったらしく、巨人の気は逸れた。

 遠目ではあったが、モーガンは自分で立ち上がったように見える。その足元はふらついていたが、スティーブと二人で胸をなでおろした。

 気を取り直して次の攻撃を準備する。どこを狙えば嫌がるのか。

 その時、じいさん魔法使いから槍のような炎が放たれる。

 その魔法が頬に当たった。

「ゴアァァ!!!」

 激しい閃光により巨人は目をつぶり、鼻先より狭い範囲だが、頬が黒く炭化した。

 巨人が声を上げたよ。痛かったようだ。

 やはり嫌がらせなら感覚器官が集まる顔だよな。口や鼻の穴もいいが、やっぱりあの巨大な目だろう。

 巨人は、巨木を天高く振り上げていた。素早く周りから冒険者が逃げ散っていく。

 あはは、隙だらけだよ。5射目、最後の特注矢を放つ。

 キン!

 見開いたままの目に当たったはずの矢は、甲高い音と共に弾かれた。

「え!?」

 巨人の視線がこちらをロックオンした。

 振り下ろされる腕から放たれる巨木。石などとは比べ物にならない破壊のエネルギーが乗った一撃だった。

 まずい!!!

 自分はギリギリ躱せるかもしれないが、スティーブが間に合わない。

 盾を握りしめたまま飛びのいていたステーブの胴に飛びつき、最後の一蹴りで出来るだけ巨木の射線から離れるように押したが間に合わない。しがみついたまま足を屈めると、スティーブの体の後ろに隠れる状態になった。

 とてつもない衝撃が自分の体を襲い、次の瞬間には空中を回転しながら飛んでいた。

 上下も分からないまま地面にたたきつけられ、さらに転がり岩に当たる。

「ぐはっ!」

 止めていた息が強制的に吐き出され、やっと止まった。

 耳鳴りがひどかったが、意識はある。

 すぐに手足を確認したが、すべて動いた。全身が痺れて痛みは良くわからない。

 息を吸おうとしたが、横隔膜が痙攣(けいれん)し、息が吸えなかった。

 骨折していないならと、腰のポーチからポーションを取り出し、一気に飲み干す。このポーション瓶は嵩張(かさば)るし重いのだが、こういう時に割れたりしにくいようでとても重宝する。

「ハァ、ハァ」

 息も吸える様になった。

 すぐに巨人を確認する。他の人たちが引き付けてくれているようで、こちらを気にすることなく遠くで暴れていた。

 スティーブは?

 辺りを見回すと意識もなく倒れているスティーブを見つけた。

 すぐに駆け寄ると、同時に駆け寄ってきた人影があった。

「ルイス!」

「そっちは大丈夫そうだな。おい、スティーブ!起きろ!」

 脈を確認後、容赦なく体をゆすぶり、さらには頬を張るルイス。

 スティーブの体を確認すると、右足が(すね)の辺りであらぬ方向に曲がっていた。

 患部を持ち上げると血が滴っている。骨も見える。

 すぐに魔法で水を出し洗浄する。

 こんなときでも、たまに巨人の確認を怠らない。巨人は、さほど移動しておらず、新しく引き抜いた木を振り回していた。

 次に骨を元の位置に戻す。幸いもスティーブの骨はバラバラにはなっていなかった。

「ぐあっ」

 スティーブの意識が戻る。

 足に力が入った。

「ちょっとじっとしてろ!」

「あぁ」

 スティーブはルイスの言葉に反応した。

「すみません。ここにハイポーションをかけてください」

 足を抑えながらルイスにお願いする。

「もう使っちまった。スティーブのは・・・」

 スティーブの腰のポーションホルダーには割れた瓶しかなかった。

「私のポーチの真ん中の奴を使ってください」

 今、両手でスティーブの足を抑えているので手が離せない。

 ルイスが手際よく瓶を取り出し中身を半分振りかける。傷口が塞がり、骨も押さえるのが不要な程度にはつながったようだ。残りの半分は口に含ませる。

「あぁ、死んだかと思った」

 スティーブがこっちを見る。

「すみません。私が移動したから・・・」

「そんな事は無い。これは避けられなかった俺の責任だ。それに、一人だったら避けられたんだろ。助けてくれてありがとな」

 スティーブは立ち上がり辺りを見回す。

 盾は半壊し遠くの木の枝に引っかかっていた。

(リューが体を押してくれたから、ギリギリで巨木を躱すことができた。斜めに当たった盾が吹き飛び、その余波で自分たちも飛ばされてしまったが。)

 スティーブはそう理解していたが、ここでそんな話はしない。

「確か後方に余った盾が置いてあったよな。ポーションも貰ってくる。俺が戻ってくるまで無茶すんなよ。顔の血拭いとけ」

 そう言い残しスティーブは、走っていく。

「顔の血?」

 額を指でこすると、ぬるっとした感触があり、指には血がついていた。

 頭に痛いところは無いし、たぶんポーションを飲む前の出血だと思うが、一応残りのポーションを飲んでおいた。そして顔を洗う。革鎧にまで滴っていた血は、とりあえず放置だ。

 壊れた盾の近くに自分の弓も落ちていた。軽く引いてみるが問題なさそうだった。しかし、矢筒の中の矢は全て折れてしまっている。これはもう戦えないという事でいいのかな。


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