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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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力仕事

「お待たせ~」

 荷車を引きながら手を振る。

「それどうしたんですか?」

 マリーが怪訝(けげん)そうな表情で訪ねてくる。

 荷車には、斧、スコップ、(くわ)、ツルハシ、ロープ、材木と、いろいろ積んである。

「お仕事に使う道具を借りてきました」

「え」

 あからさまに嫌そうな顔になる。

「防具も買ったのに、ゴブリン狩りじゃないのかよ」

 さすがのジークも不満顔だ。

「みんな、筋力が無さすぎです」

 ジークの腕を取って袖をまくる。

 それは、同じ年代のパーティ、シルバーウルフの子供たちと比べても細かった。

「なんだよ急に」

 ジークはちょっとむくれて手を引っ込めた。

「昨日、自分でもそれは実感しました」

 自分も袖をまくり、ペチペチと枝のような腕をたたいて見せた。

「え!?お姉さんあのマチルダにも勝ってなかった?」

 確かにそうかもしれないが・・・。

 気を取り直し、そんなジークの意見は視線だけで黙殺する。

「今日からしばらく筋力強化期間とします」

 みんなしばらく無言となり視線を交し合っている。

「それはいいけど、俺たちお金が無いから訓練ばかりする訳には・・・」

 ジークが代表してやりたくない言い訳をしてきた。

「大丈夫です。筋力強化と合わせて、お金も稼げます」

 アイアンイーグルの面々がざわつく。

「力仕事とか、そんなの?」

 ジークが不安そうに聞いてきた。

「そうです。この野原の切り株を引っこ抜きます」

「ちょっと!お姉さん!そんな割に合わない塩漬け依頼を受けてきたんですか!」

 マリーが怒り始めた。

「一石二鳥でちょうどいいかと思ったんだけど」

「お姉さんは、切り株を抜くのがどれだけ大変かわからないからそんな事が言えるんです。それだけ報酬が見合っていないから、何年も前から誰も受けないんですよ!」

「それはそうかもしれないけど、みんな自主的に訓練していないんでしょ」

「うっ」

「このままでゴブリン狩りに行っていたら、いつか大怪我するよ。大怪我で済めばいいけど。体は防具を付けていても、頭をこん棒で殴られたら死んじゃうかもしれないんだからね」

 みんな下を向いている。

 どんなに力を付けても頭を殴られたら同じだろうという無粋な突っ込みは無かった。

 たぶん今、最初に出会った時のゴブリン戦を思い出しているに違いない。

「とにかく、収入が無くなるのはまずいので、私は薬草採りに行きます!」

 マリーがそういうので、男達はどうしようかと、おろおろし始めた。

「じゃ、ぼくお姉さんと仕事する」

 そんな中、トムが手を上げ自信なさげに言う。

 トムが力仕事を選ぶとは意外だった。

「・・・じゃ、俺も」

 ジークもこっちについた。

「薬草採りに行くよ」

 ジョンはマリーに気を使ったようだ。

「俺はどうしようかな・・・。森の中で人数少ないと危ないかもしれないから、マリーについていくかな」

 アレンは悩んでから薬草採取にしたようだ。

「じゃ、こんなところで時間をつぶすのはもったいないんで、もう行きます」

 マリーはプリプリ怒りながら大股に歩きだす。

 そんなに急がなくてもいいのに。

「あ、串焼き買ってきてあるんだけど、食べてからにしない?」

 タイミング的に非常に言い難かったのだけど、言わなかったら後でまた機嫌を損ねそうなので声をかけた。

「・・・」

 マリーの動きはピタリと止まり、ゆっくりと回れ右した。

「そういうことは、早く言ってください・・・」

 その後、マリーは少しだけ、ほんの少しだけ機嫌を直してから薬草採取に出かけて行った。


 ザクッ、ザクッ。

 切り株の周りを掘り起こし。

 ドカッ、ドカッ。

 張っている根を斧でたたき切る。

 ミシミシ、メキメキ。

 後は、直下に伸びている根をどうにか始末すれば抜けるはず。切り株にロープをかけて引っ張ったり、あるいは材木を使いテコの原理で力を加える。

 自分は直接手をかけて、身体強化を発動する。

「ファイトー!」

 こういう時は、この掛け声でしょ。

「「はいっ!」」

 いい返事だが・・・いい返事なのだが。

「ちがーう!」

「えっ?」

 作業が中断してしまった。

「ファイトと言ったら、イッパツなの。分かった?」

「あ・・・はい」

 ジークもトムもキョトンとしている。

 もくもくと作業していてもつまらないからね。

「じゃ、もう一回。ファイトー!」

「「イッパツ」」

 バキバキバキ。

 あまり元気のない合いの手だが、まあいいや。

 一時間くらいかけて、やっと切り株が傾いた。


 荷車に引っこ抜いた切り株を1つ乗せて冒険者ギルドに戻ってきた。

 入り口からは入らないので裏手にまわる。

 そこには、冒険者から買い取った素材を数えているトーマスがいた。

「おっ、なんだおめえさん。その依頼受けたのかよ。くっくっ」

 こっちの汗だくの赤い顔を見て笑い始めた。

 革鎧は脱ぎ、長袖の革の服は袖まくりしているがなかなかに暑い。

 確かにこの依頼は割に合わない。ここまでして切り株一つ10Crとか。

 だいたい一つ一つ運んで持って来なくちゃならないというのが時間的に無駄。

「これさ、切り株持ってこなくてもいいんじゃない?」

「いや、俺に言われても困るんだけど」

 ちっ、下っ端め。

 すぐさまギルドの表から入り直しカウンターを見る。

 受付のギルバートが暇そうにあくびをしていた。

 きれいなお姉さんも居たけれど軽くあしらわされそうなのでそこには行かない。

「切り株の依頼の事なんだけど」

「おっ、なんだもう音を上げたのか?」

「切り株の買取金額が1つ10Crというわけではないんですよね」

「ああ、まぁ、そうだな」

「では、切り株を取り除いたことを確認できれば持って来なくても構わないと」

「ああ、でも切り株は薪にもなるから持って来ないっていうのもなぁ」

 ギルバートは渋る。

「せっかく塩漬け依頼をやる気になっているのにそのくらいは負けてくれてもいいんじゃないですか?」

「うーむ」

「切り株が必要なのじゃなくて、取り除くことが目的なのですよね。数年間、受ける人がいなかったと聞いていますよ。私がやる気になっている今しかないのでは?」

 軽く煽ってみる。ここで折れないようなら、この切り株一本で依頼は終了。もう受けなくてもいい。マリーには大きな顔をされてしまうかもしけないけど。

「しょうがないな・・・。でもどうやって確認するんだ」

「現地まで、確認に来てもらうとか」

「いや、さすがにそれはこっちの手間がかかりすぎる。だいたい切り株を回収しなかったら、同じ切り株を今引っこ抜きましたと言われても分からないじゃないか」

 少し思案する。

 確実に抜いたことが分かればいいんだろう。

 すると、すぐにアイデアが浮かんだ。エルフは頭もよく回るのかもしれない。

「では、あらかじめ区画を区切っておいて、その中の切り株の数は最初に数えておく。依頼完了確認時にその区画内に切り株が残っていないことを確認する。とか」

「うーむ。そのくらいなら、まぁいいか。区画は広くてもいいのか?毎日確認させられると困るんだが」

「いいですよ。数日かけてやるので。全部引っこ抜けなくても確認時に残っている数を数えればいいですよね」

「よし、じゃそれで手を打つか。ここまで譲歩したんだからちゃんと仕事してくれよ」

「がんばりますよ。では、今から区画を区切ってもらってもいいですか?」

「え。今からかよ」

「今です。どうせ暇でしょ」

「いや、書類を整えてからでないと・・・」

「そんなの後でいいですから、小さい区画を1つだけでいいので今決めてください」

「しかたないなぁ。ちょっと待ってろ」


 力仕事をするとすぐにお腹が減ってくるものだ。

 南門に向かう途中のいつもの屋台で串焼き4本をポケットマネーで買い、みんなで食べながら現地に向かう。

 ジークとトムのやる気を回復させ、ギルバートさんへの安い賄賂・・・じゃない、お礼の意味も込めて。

 現地に到着するとギルバートは持参した杭を4本打つ。

「じゃ、この杭の内側で。切り株は10本な。杭を移動させるんじゃ無いぞ。打った場所は覚えているからな」

 しっかりとクギを刺してくるギルバートさん。

「そんなことしませんよ。冒険者は信用第一ですから」

「新人が一番信用ならないんだよ。頭のいい奴は特に」

「私は大丈夫ですよ。お金が目的ではないですから。それにお金に困っていませんし」

「まぁそうだろうな。この短期間でDまで上がって、毎週一日ハイキングするだけであの稼ぎとか。うらやましいよ」

 今朝、ギルドでこの依頼を受けるときDランクに上がった。

 だけど、冒険者ギルドのお仕事よりポピーナでのバイトの方が儲かるんだよね。

「じゃ、ハイキング行くの代わってください」

「やめろ、普通に死ぬわ。あ、そういえば昨日は災難だったな。一回戦でルーカスにあたっちまうとは」

「とんだ赤っ恥でしたよ」

「冒険者を続けていく気は無いと言っていたが、腕相撲で食っていくことにしたのか?」

「違います。余りにも細いので少しくらいは筋肉を付けようかなと」

「今でも十分に強いと思うがな・・・」

「そうではないんです。見た目です」

 ギルバートの目の前に腕まくりして細い腕を見せつける。

「確かに細いが・・・。なんだ、気になる奴でも出来たか?」

 まさか、一番忘れたかったものにクリティカルヒットした。

「ちがーう!」

 3人の男はビクリとした。

 自分に言い聞かせるように大声を出してしまった。少し冷静になろう。

「こほん。まあ、確かに私も負けず嫌いなので、あんな負け方をしてしまうともう少し見返してやりたいなというのはあるんですけどね。ちょっと瘦せすぎなところを改善しようかなと。どうせなら力を付ければ、長生きできそうですし」

「まぁなんだ。あんたのほどの力があれば、めったな事では死なないと思うが・・・、ま、頑張れよ。ちょいと時間くっちまったな・・・」

 ギルバートは後ろ手に手を振りながら帰っていった。

 変な空気になってしまった・・・。

「じゃ、この切り株からやろうか」


 その後、2本ほど抜いて休憩にした。

 普段こんなに力を使うことは無いので腕がパンパンになった。

「疲れた?」

 へばっているジークとトムにも聞いてみた。

「は、ひ」

 これは相当疲れているようだ。

 ここで、びっくりアイテムを投入する。

 ポーションだ。

 一口飲むとスーッと楽になった。魔法の薬、訳して・・・いやこれは訳すと危ない。

「はい、じゃ、一口ずつ飲んで」

 飲みかけのポーション瓶を差し出すと、ジークとトムの目が生き返った。

 そして、我先にとポーション瓶をつかみ取ろうとする。

「ちょっと喧嘩しないで、一口だけだから、一口飲んだくらいじゃ無くならないから大丈夫」

 どっちが先に飲むのかで()めている。

 どこにそんな元気が残っていたのだろうか。

 次は水分補給。家から持ってきたコップに水魔法で水を出し、さらに魔法で冷やす。

「くー、生き返る~」

 飲み干してから次の一杯を準備した。

「はい、今度はどっちから?」

 すると、また揉めそうな雰囲気だったので二人を止める。

「さっきは、ジークが先だったんだから、今度はトムからでいいでしょ」

 と言ってトムに渡した。

 トムはジークを見ながら満面の笑みで水を飲んでいた。

「おい、早くしろよ」

 悪態をつくジーク。

 今日はどうしたんだろうか。全く子供みたいだ。

 さて、この調子で夕方までに後3本くらいは行けそうだ。

 ポーションは買ったら高いが、自作なら一本で薬草の単価分10Crですむ。

 それで切り株を1つ多く抜けるならそれだけで元は取れる計算だ。

 神父さんの回復魔法は魔法力で直接修復するらしいので、筋肉が増えるのかは微妙なところなのだが。ポーションは自己治癒力を高めているのがメインなので、筋肉は増えるはずだ。

 これが今朝、思いついたアイデアだ。

 後は筋肉の元となるたんぱく質、プロテインをどうするか。

 お肉は高いから買って食べるとなると食費が大変なことになる。

 これについても実はいいアイデアが浮かんでいる。

 もちろんアレですよ。アレ。

 まあ、ジークとトムは涙目になるかもしれないが、切り株の仕事を選択したからにはきっちり仕上がってもらいましょう。


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