SS:ルーカス
Side story
俺はルーカス。最果ての街フォレストワースで活動している冒険者だ。ランクもA。お金にも全く苦労しないほど稼いでいる。しかし、この街は新しくできたばかりで外壁も建設中な事もあり人が少ない。装備には大金をかけているがそれも充実し、お金は貯まる一方だ。そうだな、贅沢をしなければ一生遊んで暮らせるだろう。
今まで特定の女と付き合ったりはしてこなかったが、そろそろ身を固めてもいいかもしれない。しかし、俺のうわべだけを見てすり寄ってくる女ばかりで辟易しているというのが正直なところだ。まあ、こんな小さな街では仕方ない。俺を知らないヤツなんていないんだから。
そんなとき、隣街のマデリンで面白い催し物を開催していると言う話を聞いた。よく見てみれば、いつの間にかギルドに腕相撲大会のポスターが貼られている。
最近この生活にも飽きてきたところだった。マデリンは少し前まで活動していた街だ。知り合いも多い。たまには顔を出してみようか、という軽い気持ちで腕相撲大会にも参加してみることにした。
予選を軽々突破し、本戦のメンバーを見てみるがライバルになりそうなのは少ない。おそらく楽勝だ。
なんて余裕で構えていた一回戦。
相手はエルフの女だった。
冒険者をやっているとエルフを見かけることは多い。
どいつもこいつも美男美女ではあるのだが、目の前にいるヤツは頭一つ抜けている。
まるで人形のような造形美。笑顔だからいいものの近寄りがたい印象。そして、病的なまでの痩せ型体型。
エルフは魔法適性に優れている。弓を使うヤツもいるがほとんどが魔法職だ。
それなのに力自慢の腕相撲大会に出場しているだと?
それが前回大会で準決勝まで勝ち上がったとは信じられない。
よっぽど参加者が集まらなかったか、対戦相手に恵まれたのか。
無駄にパフォーマンスをして受けているところを見ると、・・・八百長という線もあるか?俺には何のアプローチもなかったが。
腕を組んでみて、さらに疑念は深まる。
薄い掌に、細い指。
大丈夫か?
折れたりしないよな?
しかし、あのマチルダに勝ったという。
フォレストワースの冒険者仲間だからマチルダのことはよく知っている。
あいつの性格からして、八百長はあり得ないだろう。
なめてかかって負けたとかか?
その後、少し待ってほしいと言うから同意したのだが、なにか様子がおかしい。
エルフの女から感じられるプレッシャーが膨れ上がっていく。
そして、体全体がうっすらと発光し始めた。
おいおい、冗談じゃないぞ。
うちのパーティーの魔法使いが最大威力の魔法を放つときがこんな感じ・・・、いやそれよりも遙かに膨大な魔力を感じる。
「おい、何をやっているんだ?」
しかし、エルフの女は何も答えない。表情は抜け落ち、寒気がするほどの冷たい顔をしていた。
やばいぞ。
俺はこのとき、手加減という気持ちは霧散し、全力で叩き潰すために精神統一した。
「レディ・・・ゴー!」
審判の言葉に合わせて全力で力を込めようとした。
フライング気味に発動する何らかの魔法。
握っていたエルフの手が超絶に堅くなる。
硬化魔法かよ。
しかし、この固さは無理だな。
がっちり足と手で踏ん張っているので、ピクリとも動かせない。
いきなり守りで来るとは何を考えているのか分からんが、攻めに転じてくる前になんとかしたい。
この状態からでも打てる手がないわけじゃない。
素早く体の向きを変え、肘の位置を皮膚が動く範囲で相手側にずらす。
そして、横に腕を倒すのでは無く、手前に引き込むように力の方向を変えた。そして、パワー全開。
一瞬の抵抗の後、すっと力が抜けるように相手の腕が倒れてきて、手の甲があっさりとテーブルに着いた。
しかし、なぜか対戦相手のエルフは宙を舞っていた。
おいおい、なんだこれ。これも演出か?
負けるときも派手なヤツだな。
テーブルを超えて飛んできたので、おもわず両手でそっと受け止める。
案の定、というより、思った以上に軽かった。
さっきまでの自信満々の態度からして、どんな悪態を付いてくるのかと身構えていたら、赤い顔して縮こまるとか・・・意外にかわいいところもあるもんだ。
男にもてそうな顔しているくせに、どれだけ男に免疫無いんだよ。
その後、調子に乗って肩に担いでしまったが、まぁアレだ、俺はこんなガリガリで絶壁には興味は無いし・・・、嫌われてしまったとしてもまあいいさ。
だがまあ、記憶に残る女だったな。
しかし、もう思い出すこともあるまい。
その後、大会に優勝し、表彰式であのエルフの女が俺の前に現れた。
記念品の盾と、優勝賞金として3000Crと書いた大きな看板を手渡された。表彰式後に金貨30枚と交換してくれるそうだ。
名前はリューというらしい。
そして驚いたのが腕相撲協会会長という肩書き。
なんでそんな事になっているのか。
少しだけ興味がわいた。
ま、少しだけな・・・。




