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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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森の恵み

 ギルドには寄らずに帰ってきてみると、まだ居た。

 明日は魔力草を取りに行くので索敵魔法の練習をしたかった。街中では練習ができない。

「今から、東の森に行ってみようと思うんだけど、一緒に行く?」

 すると男共は顔を上げる。

 お互いに顔を見合わせうなずく。

「行くっ」

 ジークから元気な返事があった。

「じゃあ、すぐに準備してここに集合」

 部屋に戻って装備を調えリビングに集まる。しかしマリーは居なかったので、ジーク達が声をかけたかどうか気になった。

「マリーは?」

「部屋から出てこないから分からない」

 ジークはどうやら声をかけたらしい。それでも来ないならどうしようも無いな。

「あの・・・、やっぱり家にいようかと」

 ジョンが控えめに手を上げた。

「うん、じゃあそうしてあげて」

 マリーに気を遣っているのだろう。一応、出掛ける前に自分からも声をかけておこう。しかし、階段を上げるのは面倒なので階段の下から声を張り上げる。

「マリー!出掛けてくるから、留守番よろしくねー!」

 するとドタバタと慌てるような音が聞こえてきた。

「なんで私は誘ってくれないんですか!?」

 階段の上から顔を見せたマリーは少し涙目だった。

「じゃあ、一緒に行く?」

「ついでみたいに言わないで下さい!」

 うーん、面倒くさい。索敵魔法の練習なら一人の方がいいから、みんなを誘ったのは悪い雰囲気を変えようとしただけであって、確かに、ついでに声をかけただけだからなぁ。どうしようかと床を見て考えているとマリーが階段を駆け下りてきた。そして、お腹に勢い良く抱きつかれた。

「うわーん!ごめんなさい!ごめんなさい!置いていかないで下さい!!!」

 マリーが突然号泣したので驚く。ジーク達に助けを求めようとしたが顔をそらされた。

「大丈夫、大丈夫、置いて行かないから」

 なかなか泣き止まないマリーの頭を優しく抱きかかえる。

 マリーを置いていくのはタブーらしい。どおりでジーク達が何処にも出掛けずに大人しく家に居たわけだ。


 その後、みんなで東の森に行く。東の森は魔物がほとんどいないという話だったが、確かにいなかった。索敵魔法には何も引っかからない。色々なことを試してみたが、反応が無いとうまくいっているのかどうかさえ分からない。やがて索敵魔法の練習は諦め、薬草やらハーブの採集をしながら森を歩いていた。平地は街のある辺りの川沿いにしか無い。森は東に向かって緩やかに登り傾斜だ。一時間以上歩くと傾斜が急になり、そこから先は山岳地帯となっているがマリー達は山を登ったことは無いらしい。

 森の中を先頭で歩いていると、風による草木がこすれる音とは異なる音が微かに聞こえた。すぐさま左手でみんなに停止を合図する。

 音の方に目をこらすと100メートルほど先に草を食べている鹿を発見した。

 魔物ではない動物のお肉。よだれが垂れそうだよ。

 すぐさま弓を構える。

「痛ってぇ。急に止まんなよ」

 前方不注意のジークが前を歩いていたトムにぶつかったらしい。

 その声を聴いて鹿が逃げ出した。

 くそっ。逃がしてたまるか。肉っ。

 距離があるし枯れ枝があったりするので雷撃は届きそうもない。風のエンチャントとホーミング、2つの魔法を発動し矢を放つ。

 矢は低い弾道で飛んでいき、スピードに乗る前の鹿のお尻に突き刺さった。ゴブリンのように二足歩行で向かってくるなら心臓も狙えるんだけど。

 鹿は走った勢いのまま転倒する。

 しかし、すぐに起き上がり逃げようとする。

 しぶといな。だが油断は無い。準備を終えていた2射目を放つと首のあたりに刺さった。

 すぐに鹿に向かって駆け出す。

 足元が草でよく見えないので低空を跳ねるように歩幅を大きくとる。倒木や岩、たまに見える地面、足をついても問題のない場所を蹴る。

 タン、タタタン、タンタン、タタン。

 森の木々の間を風の用に駆け抜ける。気持ちが良かった。

 まだ逃げようとしていた鹿に、あっという間に追いつき腰のナイフで止めを刺した。

 マリー達はまだ遠くで立ち尽くしていたので手を振って呼ぶ。

 今日は鹿鍋かなぁ。ふふふっ。

 そこではっと気が付いた。

 鹿を見てからの行動と思考パターンが完全にエレーナのものになっていたような気がする。でも、今はとても楽しい気分なのでこのままでもいいかな。自分が鹿を解体するのは平常心ではいられないから。少しは慣れてきたけど。


 手早く血抜きをした後、いつもの河原に向かう。

 マリー達も浮かれて早足になっていた。

 鍋や桶はトムに家から取ってきてもらう。マリーはお手伝い。残りは薪拾い。

 内臓は川の水で入念に洗う。

「お姉さん、これ食べるんですか?」

 お手伝い中のマリーは内臓を洗いながらいやそうな顔をしている。機嫌は直ったようでなによりだ。

「そう。おいしいよ」

「うぇぇ。私はお肉の方を食べたいんですが」

「そっちも食べるけど、傷みやすい内臓を先に食べるの」

 やる気の無さそうなマリーにやる気を出させるのにはどうしたらいいのか。

「丁寧に洗わないと美味しくなくなっちゃうよ。この洗いがキモだから。(きも)だけに」

 冷たい空気が流れた。

 歳を取ると何故か言いたくなるのだよ。

 しかし、マリーはちゃんと念入りに洗ってくれるようになったのでよしとしよう。

 その後、魔法で出した水で仕上げ洗い。煮るのも当然魔法の水だ。あのゴミ捨て場がすぐ上流にあると思うと魔法の水は欠かせない。

 準備をしているとスティーブが現れた。

 ちょうど馬車を護衛しながら帰ってきたところだったようで、馬車の方を見ると他のチーム暁のメンバーが手を振っていた。

「よっ。うまそうだな。それ」

 いやいや、まだ煮込んでもいないんですが。生の内臓を見てうまそうだというその感性が分からないよ。というか、この貧乏なマリー達にたかろうというのかこの男は。

「貴重なお肉なんで、高いですよ」

「一人あたり銀貨二枚でどうだ」

「マリーどうする?」

「お姉さんの獲物なので、お姉さんがそれでいいのなら」

 と言ったのにもかかわらずマリーは明らかに不満顔だった。自分たちの食べる分が少なくなってしまうとでも考えているのだろう。

「じゃ、一人金貨一枚で」

「「えっ!?」」

 ちょっとふっかけすぎたようだ。マリーもスティーブもあきれている。

「そりゃ少ーしばかり、高すぎやしませんかね」

 と、スティーブ。口調がおかしくなっている。魔物じゃ無い肉は貴重だと聞いていたんだが、これは失敗。

「では、銀貨5枚で」

「よし、決まりだな」

 ずいぶんあっさりと交渉がまとまった。これはまだまだ引き出せそうだ。

「あと、お酒もよろしく」

 言わなくても持ってくるだろうとは思うが一応確認のつもりで。どうせその代わりに炭酸追加させられるのだろう。

「はは、任せとけ」

「それと、お野菜も何か買ってきて。鍋に入れておいしいやつ」

 ネギとか白菜とかあるのだろうか。あったとしても同じ名前とは限らない。

「おいおい、がめつくない?」

「そのくらいどうって事無いでしょ。Bランクの暁としては」

「はは、そりゃそうだ。じゃ、少し待っててくれ。依頼終わらせてくるから」

「えー、待つわけないじゃん。食べたいなら早く用事を済ませて来なさいよ」

「うおおおい。こっちはスポンサーだぞ」

「別に、スポンサーなんていらないし。あ、お野菜だけ先によろしく~」

「なんてヤツだ。くそっ、わかったよ」

 スティーブは走って去って行く。

 そんなやりとりを見ていたマリーが口を開く。

「すごい。いつのまにか、Bランクの冒険者を手玉に取ってる」

「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないで」

「完全に支配下に置いてましたよね」

「だからその言い方。一応、年齢的には彼らの母親と同年代だし。年上は敬うもの。そういう所じゃない?」

「それだけですかね~」

「後は・・・、まあスティーブなら腕相撲でも勝てそうだし。所詮世の中、弱肉強食」

「うわぁ、それは分かっていますけど、お姉さんには『世の中、力だけじゃ無い』とか言ってほしかったです」

「なにそのおまじない。美味しいの?」

「お姉さん、性格変わってきてません?」

 ううむ確かに。力を得て調子にのっているような気もする。今日もごろつきの腕をひねり上げたな。こっちに来る前だったら考えられないことだ。

「力が無くては生きていけない、この環境が悪い」

 力が無かったら搾取されるのだ、あのスラムの子達のように。

「・・・そうですね」

 マリーも何か思い至ることがあったのかな。しかし、今日は鹿パーティーなので楽しく騒ぎたい。重い話は聞きたくないのでスルーした。


「では、森の恵みに感謝して、乾杯」

 泡エールを飲みながらモツ煮を食べる。最高だ。

 人も集まったので風呂も準備している。

 ちなみにモツ煮は好評だった。マリー達は食べたことが無かったらしい。野菜の中にネギのようなものがあったから臭みも取れてとても美味しい。

 そして、ここでレバ刺しを披露する。

「お、鍋に入れるのか?」

 アーサーは分かっていないな。

「何言っているんですか。新鮮な肝臓はそのまま食べるのが美味しいんですよ」

 みんなが注目する中、一切れつまんで口に放り込む。

「うまっ」

「「「え~・・・」」」

 あきれたような声がしたが無視して泡エールをぐびぐびいく。

「かー、最高」

 誰も食べないなら一人で食べるから別にいいんだ。

「ん、おいしい」

 誰も食べないかと思ったらトムが食べた。トムは本当にチャレンジャーだな。

 トムと二人で二切れ目をいただいていると、ほかのみんなも手を出し始めたのであっという間に無くなった。

「おっ、これは本当に旨いな」

「オークもいけるのかな」

 なんて話している。


 お風呂にも入ってさっぱりしたし、お酒も飲んでいい気分。

 モツ煮だけで足りるはずも無くお肉も焼いたり煮たりしてほとんど食べ尽くしてしまった。

 動物がいるなら狩人として生きていくのもいいかもしれないと思ったが、めったに見かけないらしい。そして誰も仕留めたことは無いそうだ。暁も低ランクの頃はレイラが学園に通っていて居なかったので遠距離攻撃できる手段が無かったとか。

 明日は、また朝早くから魔力草を取りに出掛けるので、ほどほどのところで解散した。


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