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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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革鎧

「みんな、ちょっと提案があるんだけど」

 次の日の朝、朝食前にリビングに集まってもらっていた。

「昨日のような事もあるので、やっぱり防具というのは重要だと思うんだ」

「昨日のような事って?」

 ジークはすっかり忘れているようだ。

「ビリーの事じゃない?」

 マリーが指摘する。

「ああ、角ウサギにやられたってやつか」

 自分にとってはかなりショッキングな出来事だったのだが、ジーク達にとっては日常茶飯事なのだろうか。

「で、お姉さんがお金を貸すので、防具を買わない?」

「え、いいのかよ」

「えっ!!いいんですか!?」

 ジークの言葉はマリーの声でかき消された。

「貸すだけだから、ちゃんと返してもらうからね」

「はーい」

 マリーの返事が思ったより普通だ。まさか踏み倒そうと考えていないだろうか。

「ここの家賃、私の分は毎月700Crだけど、それをみんなに払ってもらう事で返済に充てます」

「ということは、毎月1400Crですか!?それはちょっときついような・・・」

「何言っているの、前の宿に泊まっていたらそれ以上にかかるんだから」

「それはそうなんですけど・・・」

「どうしても払えないようなら相談に乗るから」

「そこをもう一声」

「じゃ、やめる?」

「いえ、防具買いに行きましょう」

 マリーは切り替えが早いなぁ。それにしてもジークではなくてマリーが決めているよね。これ。


 さて、新品の革鎧は確か小金貨8枚、800Crだった。胸の部分だけならもっと安いかもしれないが、お腹の部分は重要だ。という事で新品は諦め、狙いは最初から中古品。

 やってきたのは、いつもお世話になっている裏路地の雑貨屋だ。

 ここの奥の方に中古品が置いてあるのを見たことがあった。ただ、使い込まれた革鎧が臭っていたので買おうとは思わなかったが。

 マリー達と同じような年ごろから冒険者として働き始める子供たちは多い。すぐに大きくなって買い替えるのでサイズの小さい中古品はそれなりにある。そして、大きなものより使ってない分、程度もいい。

 マリーとトムはすぐにいいものが見つかった。

 ジークとアレンは体形が似ているから、ひとつの鎧を取り合っていた。マリーが仲裁している。

 ジョンはアイアンイーグルの中では背が一番高い。しかし男性冒険者の中では低い方。そしてやせ型だ。数が少なく、安くて程度の良いもの無かったので、他のみんなより小金貨2枚分くらい奮発した。壁役だし、そこはいい選択だったと思う。マリーの個人的理由ではないと思いたい。

 全部で1600Cr、貸したお金は700Cr。ちょうど一ヶ月分の家賃支払いで完済する金額だ。

 そしてすぐに鎧を着てから薬草採りに出かけていった。マリーの号令で。いつもならこのまま買い物についてきそうなものだが、所持金がギリギリになってしまったのかもしれないな。


 さて、次は自分の買い物だ。

 この街に来た時に革鎧を修理してもらった店に行く。

「いらっしゃい。あっ、どうも」

 中に入ると若い男が出迎えてくれた。どうやらこちらを覚えてくれていたようだ。

「革鎧をお願いしたいんですけど。オーダーメイドで」

「親方ー!オーダーだそうですよ」

 しばらくすると親方が出てきた。

「あぁ、この前のあんたか」

「どうも」

「こないだの大会見ていたよ。あんた強かったんだな」

「どうやらそのようで・・・」

「おかげで、大損しちまったよ」

「それは・・・、すみません」

「まぁ、そんなのはいいって事よ。今日はその分稼がせてくれるんだろ」

 そして肩をがっしりと(つか)まれた。

「ええ、まぁ、そうですね」

「それじゃ、なんの革にしようかね。予算は?」

 予算か。さてどうしよう。安く済まして定期的に買い替えるようにするか。それとも高い素材で長く大事に使うか。エレーナは自作していたからな。同じというわけにはいかない。それに防御力の高い魔物の素材があるならそれにしてみたい。命は大事にしないと。明後日にまた魔力草の採集があるのでお金は使ってしまっても問題ないはず。

「金貨70枚ほど」

「ヒュー!ずいぶん景気がいいな。先週、金貨数枚でひいこら言っていたのがウソのようじゃねぇか」

 そして肩をバンバン(たた)かれた。

「それじゃ、んーそうだな。あ、そういえばいいものがあった。少し待ってな」

 そう言うと、奥に引っ込んでいく。

 暇になり、まだ隣にいた弟子を見ると、弟子と目が合った。

「多分、倉庫に行ったと思います。すぐに戻ってくるかと」


 しばらくすると親方がなにやら青い革を持って戻ってきた。

 一つ一つの小さな(うろこ)がスパンコールのように輝いている。

「なんですか、この派手なのは?」

「これはな、ヒドラの革だ」

「ヒドラ?」

「柔らかくて伸縮性があるので、動きやすい」

 親方が革をゆすって見せている。普通の革と変わらないような柔らかさに見えた。

「へぇ」

「防刃性も高くて、チェインメイルのような性能だが、矢も通りにくい。角ウサギの突進くらいなら問題なく弾く。そして、圧倒的に軽い」

 親方は革を手渡してきたので受け取る。鱗は小指の(つめ)より小さくてすべすべしている。

「ふむふむ」

 角ウサギに刺されないのはポイント高い。

「それだけじゃなくて、魔物由来の素材の中でも魔力を通しやすい。そして、ヒドラは再生能力が高い。この革も多少の傷なら再生するという優れモノだ」

「革の状態から再生するんですか?」

「革が再生するというよりは、鱗が再生する。傷ついても、割れても。剥がれても根元の部分が健在なら再生する」

「面白いですね」

「だろ」

「デメリットは?」

「ああ、そうだな。熱に弱い。さすがに燃えると再生しなくなる」

「ふーん」

 まぁ、炎の攻撃なんて受けること無いよな。魔物が魔法を使ってくるなら別だけど。ギルドの本には載っていなかった。ヒドラも載っていなかったから、いるのかもしれない。

「あとは、まぁ革だから。夏になると暑い・・・」

「まぁ、それは仕方ないですね」

「そして、安くない」

 まぁ、そうだろうね。

「で、いくらなんですか?」

「金貨75枚」

「・・・」

 予算オーバーじゃないか。でもギリギリ買える。こっちの(ふところ)具合を知っているんじゃないかという疑惑で、半目でにらんでしまった。

「と、言いたいところだが、これ幼体のヒドラの革なんだ。成体になると鱗が赤くなる。そして、性能も上がるので、幼体の革は人気が無い。なんで、金貨50枚でどうだ」

 どうだと言われてもな。素材の相場もわからないし。

「それにしても派手な色ですね」

「冒険者は、目立ちたがりが結構多いからな・・・。でも、そうだな」

 親方はあごに手をあてて考え込む。

「この前の革鎧にこれだと合わないかな・・・」

 全身茶色だからね。

「余った部分を使って、お前さんの革鎧に装飾してやろうか。デザインはこっちに任せてもらう事になるが」

「それって、無料なんですか?」

「んー、そうだな。金貨3枚くらいでどうだ」

「そのくらいなら問題ないけど・・・」

 店内を見回す。ちらほらとデザインに凝った品も飾ってあった。その辺の腕前は大丈夫そうだ。

 その視線を見て親方がたたみかけてくる。

「銀の飾りプレートなんかも付けるともっといい感じになるんだよなー。いやでも、そこまでするなら、いっそのこと魔物素材で新調しないか?全身」

 親方が見ていた革鎧の金額は金貨100枚と書いてある。

「しません」

 どこまでお金を使わせる気だ。また半目でにらんでしまった。

「そうか、でもまぁ、気が変わったらいつでも来てくれ。金貨50枚くらいあれば、結構上等な素材で作れるから」

「それなら、ヒドラ革はやめて上等な素材とやらで全身作ってもらおうかな。そっちの方がいいかも」

「いや、ヒドラ革とは比べ物にならないから。ヒドラ革お勧め!」

 なんか親方が焦っている。どうしてもヒドラ革を売りたいようだ。また半目でにらんでしまった。

「あーははは、実を言うと、この革は売れ残っていたんだ。お金を持っている冒険者の子供らがデビューするときに親が買ってくれるのを期待していたんだが、数年で着れなくなる鎧にそこまでお金をかける親がいないようでな」

「ふーん」

「成人用のを作ろうとすると、革が少し足りないんだよね。その点お前さんは、細いからな。問題ない。そして、この革の凄いところは、ほら、チューブ状になっていて丸いだろう」

「本当だ。どうやって剥いだんだろう」

「そして、こうすると」

 親方はヒドラ革を広げて頭から被せてきた。意図を察して両手を上げると、すっぽりとお腹周りにフィットした。

「うん、やっぱり。ぴったりだ。これなら継ぎ目無しで作れる」

 これは要するにヒドラの首の太さと自分のお腹周りがちょうど同じくらいだったという事かな。

「首から胸の辺りまでスリットを入れようか。ボタンで留められるようにして。そうすれば多少は暑さにも対応できる。首周りから股下までとはいかないが骨盤くらいまでならカバーできる。しかし(そで)は無理だな。革が足りない。それにしても、お前さんお尻が小さいね。これで子供産めるのかい?」

 ほっといてくれ。産む予定は無い!

 なんかもう買うことに決まってしまったような雰囲気だが、まあいい。

 腰をひねってみたりして動いてみたが、動きが制限されるようなことは全くなかった。鱗は少し丸みを帯びていて、多少の動きでは隙間が空くことは無いが、腰をひねることによってしわが寄ると鱗が逆立つ。引っ張ってみると、ある程度までは良く伸びた。ウエットスーツを着ているような感じ。それより薄いし伸縮性もいい。

「端っこの方で、鱗の固さを確認してみてもいいですか?」

「ああいいよ。どうせ再生するし。でも端っこの方でな」

 革を脱いでからテーブルに置いてナイフを突き立ててみた。硬い。そして刃が滑る。鱗はある程度重なっているので、隙間から貫通するようなことは無い。斜め下から差すと鱗の隙間を刃が通るようだが、その下の革もゴムのようでなかなか切れそうになかった。そして最後に少し勢いをつけて鱗の真ん中を突いてみた。

 パキッ。

 乾いた音を立てて鱗にひびが入った。ひびは入ったがガラスのように割れるようなことは無い。プラスチックのように少し柔軟性がある。これなら矢も貫通しないだろう。角ウサギならなおさらだ。角ウサギの角は針のようにとがっているというわけではないから鱗の隙間にも入らないと思う。

「なかなかいい素材ですね」

「だろう」

 鱗のひびは変化が無いように見える。

「すぐには再生しないんですね」

「ああ、数日から一週間くらいかけてゆっくりと再生するんだよ」

「へぇ」

「で、どうするんだい」

 ファンタジー素材だ。とても面白い。ここは即答した。

「買います」

「まいどあり」

「これ、メンテナンスとかは?」

「普段使いするなら基本的には不要。ただ、保管するなら定期的に魔力補充しないと硬くなる。水洗いも可能だがあまりお勧めしない。薬草の葉を一枚すりつぶして混ぜた水を使うといいって言っていたやつもいたな。まぁ、長年使ってどうなるのかは分からないが」

 親方はそこで一呼吸置く。追加で質問が無いことを確かめてからまた口を開いた。

「で、肩とか腕はどうする?予算内で作れるけど」

「それは、次にお金が入ってからまた考えます」

「是非、全部魔物素材での新調をお勧めするよ。いい素材を仕入れておくから」

 なんか吹っ掛けられそうで半目でにらんでしまった。

「そんなに(にら)まないでくれよ。いい仕事するからさ」

 そういってバンバン肩を叩かれた。

 とりあえずヒドラ革のシャツのみを購入することにした。シャツ一枚に50万円なんて前世では考えたこともなかった。冒険者は実入りもいいけど、こうやってお金を使っていくのだろうね。

 次は誰かについてきてもらうのもいいかもしれない。


 そういえば忘れていた。コートが欲しいんだった。店を出てから思い出した。

 近くの古着屋に行ってみたが汚れが気になって買う気になれなかった。折角お金があるんだからここは新品にしたい。

 そして、また戻ってきた。

 店内ではヒドラ革を前に親方と弟子が話をしていたようだ。

「おっ、いらっしゃい。気が変わったか?キャンセルはやめてくれよ」

 親方は満面の笑みで接客してくる。どうやら上客認定されたようだ。

「フード付きのコートってあります?」

「あるよ。魔物素材で作るかい?」

「いえ、明後日使いたいのですけど何かありますか?」

「そうか、冒険者に人気なのは、この辺だな」

 親方は2つのコートを持ってきた。

「厚くて丈夫な牛革。そして、少し高いが、軽くて丈夫で温かい羊革。今あるのはこのくらいだな。色は選べないぞ。牛革が金貨3枚、羊革が4枚」

 持ってみると牛革はかなりずっしりとした重みがあった。うん、重いのは嫌だ。雨が降らなければ使う予定もない。

「では羊革で」

 明後日は一応持っていく予定。丸めて矢筒に括りつければ邪魔にもならないだろう。

「まいどあり!」

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