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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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危険な料理と危険な仕事(1)

 ゴブリンを(かつ)いで河原に戻ってきた。

 今日のゴブリンは巨大魚の餌にはしない。

 まずワラで編んだ網を水中に沈める。沈めようとしたが沈まなかったので、小石をいくつか上に置いたら沈んでいった。

 次にゴブリンの内臓を網の上にばらまく。しばらくすると糞魚が集まってきたのでみんなで一斉に網を引き揚げた。一瞬で大漁だ。この魚は今日のお昼と保存食にする。

 鱗を取って、内臓を取り出し、ぶつ切りにして鍋にぶち込んだ。他には人数分の焼き魚。これが昼食となる。

 残った魚は開いてから天日干しにする。河原に敷いた網の上にきれいに並べて置いた。魚なんて捌いた経験は無かったが、うろ覚えの知識を頼りになんとかした。

 この間、マリー達には薪集めをお願いした。この辺は街から遠いので薪はすぐに集まる。

 魚が焼けるまでの間にゴブリンを解体した。しかし、これがまた臭い。体臭だけかと思ったら肉も臭う。小さな切れ端を焼いたら更に強烈な悪臭を放つ。鼻をつまんで食してみたが吐きそうになった。よかった昼食前で。

「ほら。だから言ったでしょ。ゴブリンは食べられないって」

 水で何回も口をすすいでいる隣で、マリーは呆れている。

「これほどとは・・・」

「じゃ、残りは捨てちゃいますね」

 マリーはさっさとゴミを片付けようとしている。

「待って、まだやってみたいことがあるから、置いといて」

「えー、絶対無駄だと思うけどなぁ」

「まぁまぁまぁ、そう言わずに。あっ、そろそろ魚焼けたんじゃない?スープもいい感じだから、少し早いけどお昼にしよう」

 魚出汁のスープは久しぶりだ。こっちのスープは塩味しかついていないし。

 このスープは好評だった。しかし、育ち盛りの面々にはこれだけでは足りないようで、カッチカチの黒パンをちぎってスープに浸して食べていた。少しずつ食費も増やせているようでなりより。


 午後になるとマリー達は川を渡り安全な東側の山林で薬草採取。

 自分は空になった鍋に水とゴブリン肉をぶち込んで煮ている。出てくる灰汁をスプーンで丁寧にすくい取りながら。しかしすごい悪臭がする。例えるなら何年も風呂も入らず着続けた服の臭いと、どぶさらいしているときの臭いと、人の髪の毛が焼けたときの臭いが混ざったような・・・。これは街中でやったら苦情が来るだろう。トラブルに発展し殺人事件が起きてもおかしくないレベルだ。食べ物だとは到底思えない。

 沸騰したら水を入れ替えてまた煮る。これを繰り返すこと5回。やっと臭いが落ち着いてきたので肉のかけらを食べてみた。

 味はほとんどしなかった。が、臭いは何とかなりそうなレベル。塊肉はまだ臭いがきつかったので、大きい塊を全て細かく切って更に2回煮る。

 最後に塩で味付け、ハーブで香り付けして味が染みこむように冷めるまで待つ。


 しばらく暇になった。

 手を見ると爪が伸びていた。現代の爪切りのようなものは無い。となれば時間はかかるかもしれないが削るのだ。手頃な平べったい石を探す。それも荒削り用と仕上げ用。

 その後は爪を手入れしながらのんびりと過ごす。爪は歯で噛み千切る人もいるらしい。子供のころにやった記憶がある。たまに変な風に割れて深爪してしまう事もあるのでもうやらない。

 昼間は少し暑いくらいだったが、日が傾きだし日陰になると途端に肌寒く感じる。まだ2時~3時くらいだと思うが、崖の上に生えている高い木が大きな日陰を河原に作っていた。

 40歳のはずなのにエルフの体は若々しい。おかげで日焼けもさほど気にならない。日焼けしないというわけでもないが、黒くなりにくい体質らしい。また、赤くなったりもするのだが、化粧水代わりにポーションを使うとすぐに治る。贅沢(ぜいたく)なポーションの使い方だ。普通の人はそうはいかない。ポーションは高いし少量使う場合でも封を切らないといけない。封を切ってしまえば魔力が抜けるので少しずつ使うということはできないのだ。とても便利なこの魔方陣付きのポーション瓶は何処で売っているのだろうか?

 そのとき魔力感知で何かを捉えた。魔物の領域の方から反応が4つ近づいてくる。あまり強くない反応はゴブリンと似ているがサイズは少し大きい。駆け出し冒険者かな。マリー達以外の若手で4人パーティと言えばシルバーウルフしか知らないが。

 その予想は的中しエディ達が河原に現れた。しかし一人背負われている子がいる。エディ達はそのまま川を渡ろうとしたが、一人がこちらに気が付いて足を止める。そして何やらこちらを指差しながら話し合っていた。

 ここは浅瀬から少し下流に位置し、川も曲がっているので、渡っていく人たちからは気付かれにくい。南風が吹いているから煙の匂いで気が付いたのかな。決して悪臭のせいではないはずだ。なんてお気楽な事を考えている場合ではない。足をくじいた程度ならいいが、急いでいる理由はなんだろうか。毒か?ギルドの資料には毒持ちの魔物がいるとは書いてなかったが。そんなことを考えていたら背負われている子の脇腹が赤く染まっている事に気が付いた。これはまずい事態のようだ。そういえば少し気にかけて置いてくれってアーサー頼まれていたな。

「どうしたのー!」

 手を振りながら聞こえるように声を張ってみた。

 するとエディが走ってきた。

「リューさん。キズポ持っていないですか?」

「あるけど。どうしたの?」

「お願いします。譲って下さい。仲間が怪我をしてしまって」

 エディの後ろを見ると、もう仲間が駆け寄ってきていて怪我人を寝かせる。その脇腹は真っ赤に染まっていた。

「ちょっと傷、見せてみて」

 当ててある真っ赤な布をめくると右脇腹に穴があいていた。

「何にやられたの?」

「角ウサギ」

 ちょうど革鎧の下端から斜め上に向かって角が刺さったと思われる。

「内臓が傷付いていたら、ポーションだけでは治らないよ」

 腸の内容物が漏れていると腹膜炎になってしまうんじゃなかったかな。ポーションは基本的に外傷しか治さない。

「はい。後で、教会に連れて行きます」

 教会には回復魔法を使える人がいて、病気や毒、部位欠損に至るまで、なんでも対応可能だ。お金さえあれば。

「そう、わかった。これ、ポーション一つで足りるかな。ハイポーションもあるからそっちにしようか」

「いや!そんなにお金無いなら、普通ので。街に帰ったら、ポージョン追加で買う」

 エディは慌てて断った。よく考えたらハイポーションは普通のポーションの20倍の値段だ。自分は作るから気にしていなかったけれど。

「そう。別にお金なんていらないんだけど」

「街の外で物を(ゆず)って貰う時には、それを買ったときより高い金額を払うというのが冒険者のルールなんだ」

 そんな話をしている間にも魔法で水を出して傷口を洗う。

 後ろの方から、「おっ、魔法だ」という声が聞こえてきた。

 医者なら開腹して腹腔内洗浄とかするのかもしれないが、勝手に手術するわけにも行かない。まあ、いつも動物とか魔物を解体しているから、できそうな気もするけどね。

 腰のポーチからポーションを取り出し傷口にかける。

「えっ、それポーション?」

 見慣れたものと違うものを使われてエディは驚いている。

「そう、自作だけどね」

 その間にも傷はみるみるうちに塞がっていく。

「あ、本当だ。治ってく」

 半分程度かけたところで傷は無くなった。この分なら傷に関しては大丈夫かと思う。

「後は、飲んで」

 痛みが消えたのか、落ち着いた表情になった子の口元にポーション瓶をあてがった。

「大丈夫、自分で飲める」

 男の子は瓶を受け取り残りの半分を飲み干した。

「ビリー、立てるか?」

 エディが声をかける。

「ああ、大丈夫そうだ」

 ビリーの返事にエディの緊張感は溶け、おもむろにこっちを向いた。

「ありがとうございました」

 エディに続いて、ほかの子も口々にお礼を言う。

 そういえば人生でこんなに感謝されることってあっただろうか。なんて言葉を返したらいいのか分からなくなってしまう。

「どういたしまして」

 なんだか恥ずかしい。

「お金は、街に帰ったら必ず」

「その事なんだけど、作ったポーションを売ったら、捕まっちゃうらしいんだよね」

「えっ!」

「だから、この件は内緒と言うことに」

「それはいいんだけど、それじゃ、俺たちの気が済まない」

「じゃ、薬草との物々交換と言うことでどうかな」

「そんなことでいいなら、俺たちは全然構わないけど」

「じゃ、決まり」

 手を出してエディと握手する。握手をするとジークと初めて会った時のことを思い出してしまう。うん。日常生活には問題なしだ。屈強な男達と腕相撲できるんだから当然か。

「ところで、ポーションは常に持ち歩いていた方がいいよ。命には代えられないからね」

「それが、使ってしまった後だったんだ」

「だからすぐに引き上げてきたんだけど」

 エディに続いて他の子も話しに入ってくる。

「しょんべんしてたら後ろから、ぐさっと」

 恥ずかしそうにビリーは言う。

 どうやら不運が重なってしまったようだ。


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