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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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おだやかな朝と危険な仕事

 雨戸から漏れる薄明り、小鳥の(さえず)りで目を覚ます。

 こっちに来てから、ずいぶんと早起きできるようになったものだ。

 スマホ、ゲーム機、テレビ、マンガ本すら無いので、夜更かしする理由もない。

 十分に寝たので二度寝する気にもならない。少し寒いから布団から出たくないのだけれど。

「んー」

 起き上がって背伸びをする。すると布団がずり落ち、冷気が体を撫でる。

 肌触りのいい寝巻も欲しいな。衣類は高いので、いくらするのか分からないが。

 裸は寒いから、さっさと服を着る。

 最初に買ったこの安い服を洗って寝巻にしようか。普段着はこの前もらった服にして。服は一着しかなくても洗ってすぐに魔法で乾かせば問題無い。

 スリッパをはいて一階に降りる。居間にはまだ誰もいない。

 そして息を止めてトイレに入る。最近毎日息を止めていたら一分以上は息を止めていられるようになった。朝、商業ギルドに用事ができないものだろうか。トイレだけ使って帰ってくるのは気が引ける。

 今日は自分が水汲みの番なので、迷いなく水桶に魔法で水を溜める。井戸まで歩いて何往復もするとか面倒くさい。そんなに勢いよく水を出せないので10分ぐらい掛かるがそのくらいは問題が無い。魔力は他の人よりだいぶ多いようだし訓練にもなる。

 そんなことをしていると、みんなが起きだしてきたようだ。

「おはようございます」

「おはよう」

 マリーが眠たい目をこすりながらトイレに入っていった。

 この家は壁が薄いから誰かが起きて物音がすると、みんな一斉に目が覚めて起きてくるんじゃないかと思う。あっという間にトイレ前は渋滞し始めた。

 そんな中、トムがコップを差し出してくる。

 この子は口数が少ないけれど、まあ、なんとなく考えていることは分かるので、そのままコップに水を入れてあげる。

 トムは嬉しそうにコップの水を飲み干すと、また空のコップを差し出してきた。

 何杯飲む気だろうか?

「溜まった水がいっぱいあるよ」

「お姉さんの水がおいしいから」

 トムはそう言って待っている。

「あ、そう?」

 別に手間では無いから二杯目も入れてあげる。

 すると隣から次のコップが差し出された。

「オレも、お願いします」

 見るとジークだった。

 その後ろにアレンとジョンも待っている。

 何これ・・・。

 その後トイレから出てきたマリーまで混ざって水場は大混雑した。

「ちょっとこれ、いつまでたっても水汲み終わらないじゃん」

 みんな2杯目、3杯目を要求するため少しイラついてきたとき、

「口に直接お願いします」

 と調子に乗って、口を開けて待っていたアレンには・・・、たっぷりと鼻に注いであげた。


 今日はマリー達にせがまれてゴブリン狩りにした。

 討伐したゴブリンで魚を捕る。土鍋を持っていき野草と魚の鍋をお昼に食べる予定。

 午後は魚を日干しにて、暇な時間にゴブリン肉が食えないか実験する。食べられるという事になればゴブリンの買い取り額が上がるかもしれないし、屋台で売って儲けるという可能性もある。そう、これはマリー達の副収入として重要になるかもしれない事だが、そういう話はしていない。学校に行くためにこの街を離れるようなことになっても、マリー達の食生活や収入が安定するようにという願望もあるのだが、そういう話もしていない。

 日干し作りも実験も人手は不要なのでマリー達の午後は薬草採取かな。まだアイアンイーグルのみでゴブリン狩りは危ないので。

 ゴブリン狩りに決めてから、マリーとジークとトムは武器屋に走っていき、トムの槍を買ってきていた。短めの槍で穂先もかなり小さい。刺すのはいいが、薙ぎ払うのはできなそう。その代わりに安かったらしい。鉄は高いから。

 トムが使っていたナイフはジョンの木刀の先に括りつけられた。まあいろいろと工夫してお金を節約しているようだ。


 いつもの場所から川を渡ると藪の中に鍋などの荷物を隠す。そして索敵魔法を使う。近くには3匹くらいしかゴブリンはいなかった。

 今回、ジョンとトム、マリーとアレンが組み、そしてジークが一人でゴブリンに対峙した。

 ジョンが気を引いて後ろからトムが槍を突き立てれば、ジョンも剣先のナイフを突き立てて問題なくゴブリンを倒す。

 アレンは槍でけん制して距離を取る。アレンとゴブリンの距離があるからなのか、マリーは落ち着いて矢を当てることができていた。これも問題なくアレンが止めを刺す。

 そんな中、ジークの相対したゴブリンは、どうやら少し強い個体だったらしく、攻撃を(かわ)した後の反撃が相手にも躱されていたり、反撃前にまた攻撃を受けたりして、拮抗していた。しかし、ジークは何かに(つまず)いてバランスを崩してしまう。そこに斜め下からの振り上げの攻撃が撃ち込まれた。躱し切れないと判断したジークは受け流そうとして失敗し、剣を飛ばされてしまった事に加え地面に背中をついてしまう。

(ちょっとこれはまずそうだ。)

 ゴブリンが大上段に棍棒を構え、今にも振り下ろそうかとしていた時に援護射撃を行った。放った矢はゴブリンの肩口に刺さり、その勢いでゴブリンは転倒した。

「こんちくしょう!」

 ジークはゴブリンが取り落とした棍棒を素早く拾い、相手が起き上がるより早く一撃を頭に叩き込んだ。その直後、助けに来たアレンの槍も突き込まれた。


 ジークはしばらく荒い息をしながら動かなくなったゴブリンを眺めていた。

「大丈夫か?」

 心配したアレンが声をかける。

 その声で少しアレンの方を見たジークは棍棒を手放し、震える両手のひらを眺めながら数回ほど握ったり開いたりを繰り返した。

「危なかった」

 ジークはぽつりとこぼす。

「怪我は無さそうだな」

 安心したアレンはゴブリンの胸を数回突くと、その傷に手を突っ込んで魔石を取り出す。

 ジークはこっちを見る。

「助けてくれてありがとうございました」

「でも、援護射撃しなくても大丈夫だったんじゃない?」

 あのときゴブリンをしっかりと見据えて、左右どちらに身をひねって避けるか、タイミングを計っているように見えた。

「いや・・・」

 ジークは、またしばらく手を見ていた。

「あ、そうだ。剣」

 そして飛ばされた剣を拾いに行った。

 そういえば初めて会ったとき、ジークだけは淡々とゴブリンと戦っていて、みんなのピンチにも気が付いていない感じたった。今回、初めて命の危険を感じたのかもしれない。


 ゴブリンの死体を引きずり河原に戻ってきた一行は休憩を取る。

「あー、やっちまったなぁ」

 小さな岩の上に腰を下ろしたジークは顔を覆うように額に手を当てて俯いている。その表情は見えない。

「バランスを崩したのはまずかったけれど、その後の対応は悪くなかったんじゃないかな。剣も折れていないし。怪我もしていない」

 咄嗟の事ながら、しっかり刃を立てて棍棒に当てていた。剣の腹に当てていたら折れていたかもしれない。両刃だから刃の部分を持つこともできない中で、しっかりと力の入る根本付近で弾き飛ばそうとしていた。まあ、木の棍棒だから刃が刺さり、勢いで持って行かれてしまったようだけど。しっかり食べて握力もついてきたら、今後、こんな事にはならないだろう。根元とか剣先に当ててしまうと手に来る衝撃がひどいからね。

「初めて会ったときのあの時と比べたら、同じゴブリン3匹相手に連携もとれるようになってパーティとしてかなり良くなったと思うけど」

「そうだよ。ジーク。俺たち強くなっている」

 アレンはジークの背中をたたいた。

「でも、まだ危ないから、ゴブリン狩りは防具もそろえてからね」

「はぁ。防具かぁ」

 金庫番のマリーは遠い目をした。

「それじゃ、今日はゴブリンの血抜きをお願いね」

「え、何でですか?お姉さん、まさか・・・」

「そのまさかです。ゴブリン料理に挑戦しようかなと」

 マリー達全員が青い顔をした。

 そんなに不味いのか?


 マリー達のような駆け出し冒険者は、街中の依頼や薬草採取で稼いで武器防具をそろえると、次にゴブリン討伐を主に行う。ただ、これが儲からない。索敵魔法でもあればそうでもないが、一日中野山を探し回っても見つからない時もあることに加えて、魔石くらいしか売れる素材が取れないから。そのため薬草の採取も同時に行うが、薬草だけなら魔物がほとんど出ない東の山の方がたくさん生えている。それでもゴブリン討伐を選択するのは、薬草採取ではいつまで経ってもレベルが上がらないから。実戦の経験もできない。

 更にステップアップするとオーク狩りとなるが、あの太い腕で振り回される棍棒をまともに食らったらポーションを使うまでもなく一撃死もありうる。しかし、リターンも大きいので実力不足で挑戦してしまう人も多いらしい。パーティの人数はこのオーク一匹を持って帰れる人数が目安となっていると言ってもいい。この街、マデリン冒険者の花形仕事だ。

 なので、ゴブリン討伐がもう少し儲かる仕事にならないかと考えている。そう、肉が売れれば無理してオーク狩りをしなくてもほどほどの生活が送れるようになりそうだから。


 ゴブリンの首を切って逆さにつるすと腰みのが逆立ってお股のものが露になる。3体とも男だった。体のサイズは子供なのに、力もブツも人間の大人並み。シュールな光景だ。しかしマリーも含めて誰も特に思うところは無いらしい。現代人と違って裸というものは見慣れているものなのかも。


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