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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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休日のお買い物

 次の日は買い物に出かけた。

 まずはトロフィー。値段も安くないし時間もかかりそうだったので盾にした。木の板に力こぶを強調した腕を彫り込んでもらい、金箔で装飾。まあ、このくらいでほどほどの見た目になりそうだ。記念品としてなら十分だろう。1000Crで5日後までにという事でお願いし、材質、デザイン、仕上げの方法など全てお任せだ。

 次に靴下。エレーナが身に着けていた膝上まである長いヤツだ。これは新品をオーダーメイド。下着関係の古着は抵抗があるので・・・。

 そして湯たんぽ代わりに使用している石を入れる袋を購入。この石、暖かいのはいいいけれど間違えて触ってしまうととても熱い。夜中に飛び起きてしまう事もある。パッチワークがあたりまくった安いキルト生地の袋を選択。これを6枚。マリー達へのプレゼントに。火傷してしまってもポーションを使えばいいのだが、作るのに手間がかかるし、売る分の薬草を使ってしまうのも問題だ。

 後はリビングでくつろげるようにソファーが欲しい。今は暖炉の前には何もない。夕食を食べた後、自分が座っていた椅子を移動させていたりする。ところが、ソファーは中古でもそこそこの値段がするし、全員座れるようにするには複数買う必要がある。自分だけというのも気が引けるので、中古の家具をあきらめ、いつもの雑貨屋に移動した。

 そこで、フォレストウルフの毛皮を6枚購入。これがけっこうな傷物で、いたるところ補修されているのだが、その分お安い。使い道があまりなくて雑貨屋に流れてきたのではないかと思うような品。それと、人が入れるほどの大きな藁袋を購入し、寝藁をほどほどに詰めてもらう。持って帰れないので、これは自分の分だけ。その他に(ほうき)(ちり)取りも購入。塩も大量購入した。

 今日は一日買い物で終わった。大量に買い物したけれど少しストレス発散になったかもしれない。しかし、ここ数日でガッツリ稼いだので、まだまだ8000Cr以上財布に入っている。次は高額商品を買いに行こうかな。快適な生活のための魔道具か。安全性を取ってしっかりとした防具か。考えているだけで楽しい。ただ、この大金を持ち歩いていることが怖い。いくら安全な日本でも札束を普段から持ち歩いたりしない。確かギルドで預かってくれるはずなので、商業ギルドか冒険者ギルドにお願いしよう。

 それと、店員やすれ違う人、結構いろいろな人から声をかけられるようになった。昨日の今日で、ずいぶんと噂の広がるスピードは早いようで。あっという間に有名人だ。


 家に帰るとトムが一人でポスターを描いていた。今朝、追加でお願いしたのだ。アイアンイーグルの他のメンバーは薬草採りに行っている。トムだけ薬草採りに行かずにお小遣いを稼ぐのは不満が噴出したので、ポスターの収入のうち銀貨2枚をパーティの収入に入れるということで落ち着いた。銀貨2枚というと、一日の薬草採りで一番稼いだときの一人あたりの金額だ。みんな割り算なんてできないから計算してあげた。孤児院では多少の読み書きと、足し算、引き算くらいは教えているようなのだが、平民は読み書きすらできない人が多いらしい。

「ただいま」

 大きな藁袋を担いで帰ったら、トムが振り向いて固まっていた。

 目を大きく見開いているし、これは驚いているのだろう。

「みんなは、まだ帰っていないのかな?」

「うん」

 トムの手元には書きかけのポスターがあり、近くに書き上がったものが3枚置いてあった。

「あ、この前よりずいぶん上手にかけているじゃん」

「うん」

 トムの返事は少し嬉しそうに聞こえた。

「じゃ、ポスター1枚につき銀貨1枚と、銅貨5枚で。さて問題です。ポスター4枚で合計いくらになるでしょうか?」

「えっ、あっ、あうあう」

 慌てるトム。

「ゆっくり考えていいから。間違えても金額下げたりしないから安心して」

 すると、少し落ち着いたトムは指折り数えて答えを出した。

「んと・・・、銀貨4枚と、銅貨20枚?」

「ん~。間違ってはいない。はい、銀貨6枚です」

「あっ、・・・ありがと。でも、4枚目終わってないよ」

「みんながいるところで渡したら、みんながうらやましがるだろうから。先に渡しておくね」

「うん」

 めずらしくトムの笑顔を見たかも。このお金は何に使うのかな。しかし、休み無くフィールドに出ているアイアンイーグルは、そもそも買い物に出かける時間も無さそうな気がする。雨が降った時?コートもないのにずぶ濡れになりながら買い物はどうなんだろう。

 ま、いっか。そんなことよりクッションもどきだ。

 藁袋を暖炉の前に置き、その上に毛皮をかぶせる。そして座ってみた。

「んー、少し硬いな」

 でも手触りは悪くない。藁袋を開けて藁を全て出し、少しづつ丸めながら詰めなおしていく。そして、もう一度座る。するとずいぶん柔らかくなっていた。

「んー、これはいい」

 丸まって寝転がると程よく包み込まれるような感じになる。ガサガサ音がするし、現代のクッションとは比べるべくも無いが。

「それ、なに?」

 さっきからチラチラとこちらを気にしていたトムだったが、ついに口を開く。

「ソファーの代わり。これならゆったりと(くつろ)げるかなと思ってね。そこにある毛皮はお土産。一人1枚ね。状態のいいのは早い者勝ちだから。これはお姉さんの」

 トムが使っていたペンを借りて自分の毛皮の裏に名前を書いた。もちろん一番状態の良さそうなものだ。寝転がっても獣臭はしなかった。

 トムは毛皮を必死になって見比べ始めた。

 それを横目に二階に上がり、湯たんぽ代わりの石を取ってくる。そして、キルト生地の袋に入れてみる。ちょうどぴったりだ。

「これにする。あ、ありがと」

 トムが一枚の毛皮を抱えていた。

「あと、これは石を入れる袋。こんな風にね。これで触っても熱くないようになるから。これもみんなに」

 トムが選んでいる間にリビングの掃除をする。さっき藁をぶちまけたから藁くずがリビングに散らかってしまっているのだ。早速、買ってきた箒と塵取りを使う。使い勝手は、まぁ・・・、それなり。

「これにする。ありがと」

 トムは貰ったものを大事に抱えて階段を上がっていった。

 商業ギルドでの打ち合わせにはまだ少し時間がある。こんな時にお茶でも一杯飲みながら休憩したいところなのだがポットが無い。先ほどのクッションに身を沈め天井を見てから目をつぶる。

「ふぅ」

 少しずつ生活の基盤が整ってきた。生きていくのは問題が無さそうだ。まあ、人生何があるかは分からないけどね。日本に住んでいても事故や事件に巻き込まれて死ぬことはあるのだから。

 しばらく目をつぶっているとトムが階段を下りて来る足音が聞こえてきた。そして、聞き覚えのある声も外から聞こえてくる。窓にガラスなんてはまっていないから静かにしていれば外の音はよく聞こえるのだ。

「ただいまー!」

 玄関のドアを開ける音に続いて元気のいいマリー声が室内に響く。

「あれ、お姉さんそれなんですか!」

 ゆっくりできたのは、ほんのひとときだったなぁ。まあいいや。目を開けると頭の近くにマリーがいた。

「ソファーの代わり。いい感じでしょ」

「そうですね。とても良さそうですけど、それ一つですか?」

「そこにみんなの分の毛皮があるから、どうぞ。藁袋は、この前の雑貨屋に売っているから。そんなに高く無かったよ。マリー達でも買えるくらい。袋と中に詰める藁で17Crだったかな」

「うぐっ。そうですか。今から、一緒に買いに行くとか、どうですか?」

「ごめんね。もう時間だからまた商業ギルドに行かなくちゃ。あと、暖めた石を入れる袋もプレゼント。こんな風に使うの」

 体を起こして足下に転がしておいた石を入れた袋を軽く持ち上げる。

「ありがとうございます。あっ、ちょっとこら!私が話している間に、もう選んでいるんじゃない!だめ!その袋!私もその袋がいい!」

「うわっ!マリー引っ張るなよ!破ける!」

 みんなギャーギャー騒ぎながら選んでいるけれど、トムは椅子に座って涼しい顔で眺めている。この後が少し心配だけど大丈夫かな。

「じゃ、このできあがったポスター3枚、先に貰っていくね。今日外で食べてくるから」

 トムしかこっちを見ていないけれどいいか。

 トムに軽く手を振ると、トムも手を振り返してきたので、カオスな状態を放って家を出た。


 今日の会議もサクサク進んだ。

 レイモンドさんがやたら張り切っていたように見えたのは、多分予想以上にいい儲けが出てやる気がアップしたのだろう。

 優勝賞金と記念品の盾もそのまま決まった。腕相撲協会の会員についても年会費、入会金、共に銀貨一枚となった。大会のない日は会員のみ腕相撲台の使用が許可され、その後の会員同士のランキングに反映させるべく、まずは勝敗の記録のみを行うことになった。大会は当日の午後から予選を行い、前回大会で初戦突破した人は予選免除ということになった。

 まあ、みんな目の色が変わったようだ。これはもう何もしなくても勝手にアイデアを出し合って良い方向に行きそうな気がする。毎日の会議が面倒だから誰かに会長を任せて、自分は名誉会長としてお金だけ貰うというわけにはいかないだろうか。あ、いや、でも会議のたびに快適なトイレを使用させて貰っているから、会議がなくなるとトイレだけ借りに商業ギルドiに来るというのは外聞が悪いな・・・。


 会議が終わったら冒険者ギルドに行ってサラを夕食に誘う。いろいろ手伝って貰ったし、今日はご馳走するのだ。少し待ったけど、その後は前にも行ったことがある商業ギルドの隣にある少々お高めのレストランへ。これは頑張った自分へのご褒美のつもりだけど、一人で外食というのはまだ慣れない。マリー達を誘うとお金がかかりすぎるし、マナーもドレスコードもかなり心配だから。

 こんな世界でもお金さえあれば、ほどほどにおいしい食事にありつける。日本で食べていたあれこれと比べるべくもないが満足な夕食だった。


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