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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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女子会

 しばらく飲み食いした後に、レイラさんの私室にお呼ばれした。まあ、レイラさんとスティーブの愛の巣ということなんだけども。場所的には二階の東側、自分の部屋と同じ場所。ほぼ同じ間取りだから分かりやすい。夜という事もあり暗いが、落ち着いた雰囲気の部屋で、すっきりとまとまっている。

 部屋に入りさらっと見回した時、それが目に入った。北側の壁にかかっている光り輝くもの。手前には小さな机と、椅子が置いてある。おそらくお化粧用のスペース。

「あれって・・・もしかして」

「そうです。鏡です」

 レイラさんは、得意げに答えた。

「ちょっと見てもいいですか!」

 こっちの世界に来て初めて見る鏡に少し興奮してしまった。

「はいどうぞ」

 ほぼ、返事を待たずに鏡の前に駆け寄る。

 そこには見慣れない自分の顔が映っていた。水鏡でなんとなく見てはいたが、鏡で見るとまた印象が違う。

「ちょっと明かり付けてもいいですか」

「えっ?」

 聞いておいて返事を待つつもりは無かった。ランタンの明かりだけでは暗いので光源魔法で部屋を明るくする。そして浮かび上がる金髪金眼の顔。

 ああ、これはダメだ。目立ちすぎる。自分で言っちゃあなんだが、こんな美人は見たことが無い。それに40歳だというのにシミひとつない。ほくろもしわもそばかすも無い。興奮して少し赤くなった頬。長いまつ毛。しかし、まつ毛も金髪だから目元の印象は少し薄いかな。いや彫があるからそうでもない。そう、これは・・・人形みたい。

 耳の形は面白いね。とがっていて。だが長耳族って言われるほど長くは無い。この世界のエルフが長耳族と言われているかどうかは知らないが。人間の男なら40歳を超えると鼻毛も眉毛も伸びてくるものだが、大丈夫だ。この体は若い。

「ちょっとお姉さん。次、代わって。私も見たい。鏡」

 思わず自分の顔に見入ってしまっていたが、マリーの声で我に返る。

「あ、ゴメンゴメン。どうぞ」

 マリーは鏡にへばりつくようにして自分の顔をいろいろな角度から見ている。

「へぇー、私ってこんな顔なんだ」

 マリーの独り言は放っておいて、まずはお礼を言う。

「鏡なんて初めて見ました。ありがとうございます」

「いっ、いえ。そうこの鏡は、とても高いのだけど、結婚のお祝いにみんなから貰ったの」

 レイラは、何故か少し動揺しているように見えた。

「へえ、いくらくらいなんですか?」

「金貨100枚」

 たっか!

 高々30cm四方程度の鏡が100万円!?

 どおりで全く見かけないはずだ。

 自分でもかなり驚いたつもりだったが、レイラの目線を追って後ろを振り向くと、驚愕(きょうがく)の表情で椅子にしがみついているマリーがいた。金貨100枚という値段が聞こえたのか?


 マリーが落ち着くのを待ってから、窓際に置いてあったテーブルと椅子を移動し、そしてレイラはベッドに腰掛けながら話し始める。小さなテーブルには泡エールとつまみ、そしてマリーが食べ足りないと言って持ってきた肉料理。

「いつ頃出産予定なんですか?」

「秋頃です」

 レイラは、下を向いてお腹をなでる。

 今はまだ春だから、半年も先だ。

「出産したら冒険者はやめるんですか?」

「続けるつもり。結婚とか、出産で辞めちゃう人も多いけどね」

 現代日本と似たような感じなのか。しかし、保育園は無いはずだ。

「赤ちゃんはどうするんですか?」

「ベビーシッターを雇うつもり。メイドさんもそうだけど、冒険者の稼ぎと比べたら微々たる出費なの。でもリューさんが暁に入ってくれるなら、もう辞めてもいいかな」

「いえ、私は危ない仕事はやるつもりありませんから」

「え、そうなんですか?勿体(もったい)ない。リューさんの実力なら簡単に稼げるし、どこのパーティからも引く手あまたですよ」

 レイラは少し思案して答えを出す。

「あっ、さっさと男を見つけて引退ですか?」

「いえ、男性恐怖症なので男はノーサンキューです」

「まあ、勿体ない」

 そこで、マリーも口を開く。

「ですよねー、お姉さんなら男なんて選り取り見取りなのに」

「でも、なかなかいいお仕事は無いですよ」

「今、考えているのはポーションを作るとか、魔道具を作るとかどうかなと」

「あ、でしたら魔法学園がお勧めです」

「魔法学園?」

「はい、私の母校です。ポーションを作るなら錬金科。魔道具なら魔道具科ですね」

「いや、いまさらこの歳で学校なんて」

「大丈夫ですよ。見た目は全く問題ありませんし」

「いや、見た目というより年齢が。みんな何歳で入学するの?」

「15歳が多いですけど、入学試験に落ちたりして、もっと上の人とかいたりしますよ」

「15かぁ。その子の親より年上なんだろうなぁ。話しも合わないよきっと」

「大丈夫です。都会の子と田舎の子も話は合わないですし、貴族と平民はもっと話が合わないですよ。同じ空気を吸っていても生きている世界が違うので」

 あれ、なんかちょっと(とげ)があるような・・・、学校で何かあったのだろうか。貴族怖いな。

 そういえば、錬金ギルドに入るのも錬金科の卒業資格が必要だとか薬屋のメラニアさんが言っていたな。

「貴族が通うような学校だと、学費も高いのでは?」

「それがそうでもないんですよ。費用は人によって違っていて、貴族、それも高位貴族が一番高く、平民はかなり安くなります。それに、成績優秀者は学費免除です」

「仮に学費免除だとしても、生活費とかはかかるでしょ。それも都会なら物価も高そうだし」

「校内に寮があります。そこは結構安いので大丈夫ですよ。地方の子はだいたいみんな寮に入りますから。そして、夏休みと冬休みが一ヶ月以上あるので、そこでお金を稼げばいいんです。お金が無い子はみんなそうしていましたよ」

 ふむふむ。年齢的には高校くらいだけれども、休みの長さは大学のような感じか。

「ふーん。ちなみに、一年間でいくらくらいあればいいのかな?」

「そうですね。平民なら学費が小金貨20枚、寮が12、後は生活用品とか筆記用具とかで、10くらいはかかるかな。一年で、小金貨40枚くらいですね。それと制服があるのですが、それは入学時に一着貰えます。これだけ安くても庶民には厳しいので、生徒は貴族とか、次に商人の子供が多いのですけど。本当にお金がなくて学費免除を狙って毎年試験を受けている人もいますよ」

「そのくらいなら、なんとかなりそうか」

 小金貨40枚なら、今日一日の稼ぎでほぼ稼いでいるような。いや、待てよ。今の家の家賃だけで一ヶ月小金貨14枚なのだから、めっちゃ安くないか?森の木漏れ日亭だって一ヶ月連泊で小金貨6枚くらいかかるし。ま、それは置いといて、気になる点がある。

「でも、学費免除を狙って毎年受けている人は、毎年合格はしているんだよね、きっと。そして毎回入学辞退っていいのかな。試験の年齢制限とかあるんじゃないの?」

「そういう話は分からないのですが、年齢制限は大丈夫です。上のクラスに他国から来たお爺ちゃんのような人もいましたし、そこそこ名の売れた年配冒険者が入ってくることもあります」

「へぇー、外国人でも入れるんだ」

「そうです。門戸は広いですよ。そして、卒業すれば、まず職に困ることはありません。そして、高額収入も期待できますよ」

「あ、なんか、ちょっと興味出てきたかも」

 その言葉を聞いてマリーが慌てだした。

「お、お姉さん、まさか私達を見捨てるんですか!?」

「いや、見捨てるとかそういう事ではなく・・・。ほら、冒険者をやるにしてもいろいろな魔法を覚えて強くならないと」

 もし学校に行くとしたら、一番の問題はマリーを説得できるかどうかかも。

「そうです。いろいろな魔法を覚えられますよ。高価な魔術書も読み放題です」

 あれ、マリー、レイラさんを睨みつけてないかい?

「そういえば、この街に図書館とかってある?」

「無いですね。私が知っているのは、王都にある王立図書館と、学園内にある図書館だけです」

「本は読みたいなぁ。でも試験勉強とか、そういうのはもうやりたくないんだよね」

「あれ、リューさんはどこかの学校に通った経験が?」

 しまった。どう言い訳しよう。

「孤児院で勉強させられた時の先生が厳しい人で・・・。マリーはそんなこと無かった?」

「無かったですね。サボるの上手だったので」

 いや、そんな事でどや顔すんな、マリー・・・。

「孤児院出身でしたか。でも、そしたらどうやってこんな魔法をおぼえたのですか?」

「え?」

 レイラの指が指している方向には、光の球があった。うん、眩しい。さっき鏡を見るために自重を忘れて使ってしまった光源魔法が蛍光灯のような白い明りで部屋中をくまなく照らしている。さっきレイラさんが動揺しているように見えたのは、これかな。木漏れ日亭の近所でも目立っていたようだったし。

「あ、ちょっと明るすぎたかなー、調整しようか。ハハハ・・・。えーと、孤児院を抜け出した後、元冒険者のおじいさんとおばあさんに拾われてね。そのときにいろいろと教わったの」

「そうだったのですね。さぞ高名な魔法師だったのでしょう」

「いや、普通だったけど。たぶん暁のメンバーの方がランクは上だと思う」

「いえ、この魔法は普通じゃありません。普通はこんなに白くないですし、明るさもランタンより少し明るい程度。こんな光源魔法は見たことがありません。それを無詠唱で、そして、話に夢中になって魔法を使っているのを忘れるほど普通に維持していますよね」

 急に何?何故か突然問い詰められているんですが!

「ええと、長年使っていたら自然に改良されてこんなになったとしか・・・」

 そりゃエレーナは普通の光源魔法を使っていたよ。でも無詠唱だったし。この魔法は現代科学の知識を使ったから生まれたものかもしれないけれど。

 などと考えておどおどしていたら、レイラが立ち上がった。

「すばらしいです!!」

「は!?」

「自分で魔法を改良できてしまう天性のセンス。そして、こんな魔法を苦も無く維持し続ける膨大な魔力量。リューさんには是非、魔法科をお勧めします!」

 え、ただ単に魔法科を勧めたかっただけ!?

「エルフはやっぱり魔法適性が高いんですね。素晴らしいです。魔法学校開校以来の魔法の申し子として、歴史に名前が残るかもしれませんよ。そして卒業後は魔法師団にスカウトされエリートコース。あっという間に出世して師団長までもありえます。それも最年少の。いえ、最年少は無いでしょうが最短での。あ、エルフは寿命が長いのですから、時間がかかっても師団長確定ではないですか。そして、もしかするとこの国の初代国王だけが持つ『賢者』の称号をいただけたりして・・・。うふふっ」

「あの、ちょっとレイラさん?」

 レイラは、一人妄想に入ってしまった。枕を抱いて右に左に上半身をひねっている。

 そして、どうも顔が少し赤いような。レイラの持つジョッキを凝視する。ふむ、泡があるね・・・。妊婦が酔っぱらっているー!!

「ちょっと、レイラさん。妊婦はお酒飲んじゃダメですよ」

「え?エールくらいなら、みんな普通に飲んでいますよ。子供も」

「こっ、子供も!?」

「はい。この街では水はきれいな方なので、特に問題視されませんが、水の良くない都市部などでは、生水を飲んでお腹を壊して死んでしまう事って結構あるので。エールは安全だし、栄養もあるそうですよ」

 これが、異世界の常識なのか!?

 確かに、エールは現代のビールと比べてもアルコール度数が低いようだけど。

「でも、お酒はおなかの赤ちゃんに良くないので、余裕があるなら飲まない方がいいですよ。流産の危険性とかも上がりますし。健康な赤ちゃんを産みたいなら」

「へぇー、そうなんですね。じゃ、この一杯でやめておきます」

 そう言って、レイラはジョッキを飲み干した。

 いや、飲み干すなよ。もう、酔っ払いは知らん!

 そう言えばポーション類や魔法の類も妊婦への影響ってどうなのだろう。こういう事を調べた人っているのだろうか。

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