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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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シャワー

 ポピーナを出るとマリー達が待っていた。

 ジークが何か言おうとしていたところで、マリーがグイッと前に出る。

「お姉さん、流石です!」

「あっ、マリー。ありがとう。待っててくれたんだ」

「ちょうど帰ってきたところで、何やら盛り上がっているところが見えたので」

「店中に入ってきても良かったのに」

「応援は、中でさせてもらいましたよ。でもその後は・・・、値段も高いですし・・・」

「あー、それもそうか」

 そこにスティーブが割り込んできた。二人の肩をポンと叩く。

「よし、今日もうちのホームで打ち上げやるか!」

「やったー!」

 マリーの笑顔がはじける。きっと私ではなく、これを待っていたに違いない・・・。

 男性恐怖症は克服したと思うが、ビクッとしたよ。全くスティーブのヤツめ、遠慮がないな。

「今日は、打ち上げの前に汗を流しておきたいから、少し遅い時間でもいいかな?」

 前回は朝まで防具を付けたままで、失敗したのを思い出した。

「それならうちのシャワーを使ってみないかい?」

 会話にアーサーが入ってきた。

「え、いいんですか?」

「今日は特別」

「ありがとうございます」

 やった。シャワーもうれしいが、シャワーの魔道具がどんな具合なのか気になっていたところ。ぜひうちにもほしい。

「あのっ、あのっ、私も使ってみたいです!」

 マリーも興味津々のようだ。

「まだ未体験?」

「はい、話には聞いたことがありますが・・・」

「じゃ、リューさんと一緒にどうぞ」

「やったー!」


 急いで、家に戻り着替えを持ってお隣さんへ。ちょうどアーサーがシャワーを浴びた後だったらしく、濡れた髪の毛のまま出迎えてくれた。マリーはちょっと赤い顔に見える。アーサーはやたらと整った顔立ちだし、これが普通の反応なのかもね。私(俺)の心は凪だが。

「ここのつまみを左に動かすと、シャワーが出る。水量を調整できるけど、目いっぱい左でいいよ。そんなに勢いよく出てこないから。そして、その上のつまみは温度調節。ちょっと動かすだけで水になったりするから気を付けて。魔石は新しいのを入れておいたから大丈夫だと思うけれど、もし、シャワーが止まってしまったら呼んで。妹を行かせるよ」

「そんなにすぐに、魔石ってなくなるんですか?」

「6人で使うと、だいたいゴブリンの魔石が一つ無くなるくらいかな」

 ゴブリンの魔石の買取価格が、20Cr。という事は、シャワー1回で3Crちょい。しかし、魔石の販売価格はここマデリンで50Cr。都市部で60Crという話を聞いた事がある。すると、シャワー1回で10Cr。1000円だとしたら、なかなかにお高い。

「結構使いますね」

「そうだね。僕ら冒険者だからこその贅沢かもね」

 そう言って、アーサーは水場から出て行った。

 シャワーは、高い位置に取り付けてある。モーガンなんかは190cm超えているだろうし。でもマリーなんかは、140位しかなくて魔道具本体にギリギリ手が届くかどうか。だから、一緒にという事なのかな。

「みんなが帰ってくる前に、さっさと浴びちゃおうか」

 アーサー以外は、買い出ししているらしい。まだ帰ってきていない。

 さらっと脱ぎ始めたらマリーが扉に鍵を掛けた。

「お姉さん。いつもの事ですが、油断しすぎです」

「あはは。ゴメンゴメン」

 服を脱いだら早速、下のつまみを左に動かす。するとすぐに反応してお湯が出てきた。勢いはそれほどないが、最初から温かいお湯だ。部分的に現代のものより機能的に上回るというのは面白い。また、配管が不要なので、持ち運びも可能かもしれない。どんな粗末な家に引っ越しても、取り付けるだけですぐに使えるというのは便利だ。電気や水道の無いどんな僻地(へきち)でも魔道具さえあれば快適な暮らしができるというもの。

「あー、気持ちがいい・・・」

 確かにシャワーの勢いは物足りないが、十分及第点。シャワーですらぜいたく品の部類に入ってしまうこの世界で、柔らかな温もりを顔に受けながら目をつぶれば、シャワーを浴びる事さえ面倒くさいと思っていた過去の自分を思い出す。

「お姉さん、早く代わってください」

 隣では、もう待ちきれないといった表情のマリーがいた。

 桶にお湯を貯めてからマリーと交代する。

 そして、髪を洗う。水場は風呂場と洗面所を合わせたような広さで、スペース的には問題ない。しかし、長い髪は洗うのが面倒くさい。濡れるとずっしりとした重みを感じる。頭を横にして桶の中で髪を流していたらマリーと目が合った。

「マリーも洗う?」

「はい!」

 聞けば、これもまた孤児院を出てから頭を洗ったことは無いらしい。もともと頭は一月に一度くらいしか洗わないのが普通とか。冒険者の普通なのか、孤児院の普通なのか、庶民の普通なのか、それは分からない。

 マリーの髪を泥で洗ってあげてシャワーで流す。

 その後、また桶にお湯を貯めて部屋から持ってきたビーカーを取り出す。そして入っていた緑色っぽい茶色のペーストとよく混ぜ合わせた。

「なんですかそれは」

 マリーが顔をしかめている。

 しかし、そんなことは気にせずに髪を浸して馴染ませた。

「これは、薬草のペースト。ポーションを作った後の廃棄物だけど、こうして使うと髪がつやつやになるの」

 エレーナの知識なので自分でやるのは初めてだ。

「マリーもやる?」

「はい!」

「じゃ、これ。でも気を付けてね。目に入ると痛いから」

 マリーの表情は少し引きつって見えた。河原でお風呂に入った時の事を思い出したに違いない。

 最後にシャワーで洗い流す。


「あーさっぱりした」

「すごいですね。これ。髪がサラサラになりました」

 そりゃそうだろう。ここに来る前、部屋で薬草ペーストに魔素注入までしておいたものだし。

 マリーの髪は乾燥魔法で程よく乾いている。

 自分の髪も範囲を絞って魔法をかけた。しかし頭皮の近くは温風魔法。面倒くさいがこの長い髪全てにドライヤーをかけるより手間はかからない。

 着替えてリビングに行く途中、炊事場にレイラがいた。

「どうも。シャワーお借りしました。ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 マリーも同じように挨拶している。

「どういたしまして。あれ?」

 レイラはスープをかき混ぜながら挨拶を返したが、何かに気が付いた。

「リューさんの髪は前から手入れが行き届いていると思ったのだけれど、マリーちゃんの髪、どうしたの?」

 まあ、さっきまでは、かなり荒れ放題だったからね。

「えへへ、お姉さんの魔法です」

 何故か自慢げなマリーだった。しかし魔法では無いのに。

 レイラは目を丸くしている。いや、ギラギラしてきた。

「後で、三人でお話ししない?」

「はい、喜んで!」

 マリーは速攻で返事をする。

「ちょうどお話ししたいと思っていたので、ぜひ」

 そう、魔法の事とか、いろいろ聞きたい。できれば教えてもらいたい。


 その後、買い出し組が帰ってきてから宴会となった。

 当然のように泡エールを作らされる。まあそれは、どうという事も無いのだが。なぜか違和感なくトーマスが混ざっていた。

「なんであんたがここに?」

「いいじゃないか。アイアンイーグルも混ざっているんだ」

「それは、お隣さんだから」

「俺も、裏通りの二軒先」

「えっ」

 めっちゃご近所さんだった。


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