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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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前哨戦

 その日は、そのまま暁のメンバーも含め全員で、商業ギルドで最終確認。その後、ポピーナで会場視察。

 入り口正面奥が拡張されていて、そこに木製の重厚な感じの腕相撲台が設置されていた。思っていたのよりずっと立派な仕立てだった。高いとは思ったけれど、やはり金貨8枚というのはそれなりの価値があるのだろう。

 腕相撲台は少し高くなったステージの上に設置されている。これなら混雑した店内の遠くからでも観戦できそうだ。そして、少しスペースを開けてステージを囲うように小上がりと手すりが設置され、そこにまたテーブルが並んでいた。VIPテーブルらしい。

「よっと」

 軽いステップでステージに登って、店内を見回してみた。

「おーっ、これは目立ちそうだね」

 腕相撲台を触ってみる。

「そして、台もすべすべ」

 この木の感触、好きだなぁ。

 さて、ぶっつけ本番というわけにはいくまい。まずは強度面とか問題ないか確認しないと。

「じゃ、誰かに使ってみてもらおうっかなー」

 辺りを見回して、腕っぷしの強そうな客を探す。しかし、まだ混雑時より少し早い時間帯らしく客の入りは半分くらい。

「いや、ここは、腕相撲協会の会長がやるべきでしょう」

 と、スティーブ。

「いえいえ、がっつり強そうな人で試さないと、壊れたりしないか分からないから」

「いやいやいや、それは後でもいいでしょう。記念の初試合ということで」

「いえいえいえいえ、セレモニーなら有名どころを呼んで盛大に」

「いやいやいやいやいや、その有名どころがリューさんだから」

「あんたら何やってんだい」

 気が付いたら、あきれ顔の女将さんがいた。

「セレモニーか。宣伝のためにもいいかもしれないな」

 さっきまで、カウンターの方で打ち合わせをしていたレイモンドもいた。

 なんだか、これはやんなきゃいけない流れのような・・・。

「嬢ちゃんなら、あたしが相手をしようか」

 女将さんが力こぶを作っている

「えっ?」

「これでも若い頃は冒険者をやっていた時期もあるんだよ」

 女将さんはニヤリと笑った。


 明日の予行演習とかで、急遽(きゅうきょ)2マッチ行われることになった。

 カウンターでは、賭け事の準備が忙しく行われていた。

 その間に、中樽一つ(約60リットル)のエールをキンキンに冷やして、炭酸を追加する。

 この量を処理するのはかなり大変だったが、これだけで小金貨6枚貰えることになった。

 今回も前回と同じく一杯で銀貨2枚、ボロ儲けをもくろんでいる女将さんだった。

 準備が整うと、女将さんと、自分、そしてスティーブがステージ上に並ぶ。

 女将さんは、おもむろにジョッキを2つテーブルに置いた。

「これは?」

「おごりさね。どうせ飲むんだろう?」

 これは、さっき作った炭酸入りエールだ。

「はい、ありがとうございます」

「その代わりに、ちょっと宣伝に付き合っておくれよ」

 女将さんに耳打ちされてしまった。ま、そのくらいはお安い御用です。笑顔で頷く。

「えー皆さん注目!それでは、今から明日行われる腕相撲大会のプレマッチを行います!」

 スティーブがステージ上で声を張り上げている。

「こちらご存じ、当店の女将ローラ!このたくましい筋肉で黙らせられた酔っ払い諸君も多いはず!」

 バキィ!

 女将のパンチでスティーブがステージ上から消える。

「おおっと手が滑っちまった」

 笑いが起こる。

 派手に殴られたようだが、スティーブは大したダメージも無さそうにステージにカムバックした。これ一応手加減入っているのかな。ステータス分を見込んでのパフォーマンスだろうか。異世界の常識が分からん。

「はい、そしてこちらも話題の新人。リュー!この見てくれに反してトーマスを軽くひねる怪力の持ち主だ。その人生経験も女将さんよりもヴ!」

 何か余計なことを言いそうになっていたので、アイアンクローで締め上げる。

「いででででで!」

 このくらいで勘弁してやろう。

「そ、そのギャップが見どころだ!」

 とりあえず笑顔で手を振っておいた。

「おい!オレはこいつにゃ負けてないぞ!」

 すぐ近くに文句を言うトーマスがいた。

「あ、そうだったか?じゃ、今やる?」

 涼しい顔のスティーブ。

「え、いや、あの、それは無理・・・」

 あっさり引き下がるトーマスだった。

「さあ、張った張った!そろそろ締め切るよー!」

 カウンターの方からも威勢のいい声が聞こえる。

 どれどれ、女将さんが1.3倍、こっちは2.0倍か。人気無いなぁ。まあ、そりゃそうか。女将さんと比べてこの腕、太さが半分くらいしかないし。自分で賭けることができないのが残念だが、いっちょやったるか。

 カウンターから締め切ったときの合図を受けて、スティーブが動く。

「よし、両者組み合おうか」

 そのタイミングで女将さんがジョッキをかかげた。

「みんな飲んでるかー!」

「「「おーっ!」」」

 そして、ジョッキを一気に飲み干す。口の周りに盛大な泡を付けて。

「くうーーーーっ!今日は特別にこの泡エールを販売するよ!ちょっと値は張るが、数に限りがあるからね、飲みたい奴は早めに注文しておくれ!」

 しっかりと宣伝している。目的はこれかぁ。ぼったくり価格でファイトマネーを稼ぐつもりだな。

 とりあえず、こっちも負けていられないのでジョッキを掲げてから、一気に飲み干す。

「カーーーー!うまいっ!!!!!」

 泡はすぐに手の甲で拭きとった。

 コン!

 女将さんの前なので、ジョッキを置くときは控えめに・・・と。パフォーマンスはこのくらいでいいだろう。

 そして、おもむろに互いの手を組む。

 さて、冒険者とやるのは初めてだ。どうなる事やら。腕の太さには差があるが、おそらく素の力は同じくらい。エルフは細くても普通に力はあるらしい。後は、レベルと身体強化がどのくらいなのかが勝敗を分ける。女性で力に自信があるなら、きっと前衛だったはず。となると身体強化を持っていても不思議ではない。

「レディー!」

 スティーブが二人の拳を包み込む。もうこの程度で動揺はしない。そこに握っている手から魔力の残滓(ざんし)が感じられた。女将さんも身体強化持ちだ!遠慮はいらない、身体強化フルパワー発動!

「ゴー!」

 勝負はすぐについた。

 勝った。

「勝者、リュー!」

 スティーブが打ち合わせ通りに、勝者の手首をつかんで持ち上げる。

 わーっという歓声と、悲鳴が同時に上がる。

 ああっ、なんかちょっと、これ、緊張を通り越して気持ちよくなってきたかも。

 こんなに注目されることなんて前の人生では無かったからね。

 なるべく目立たないように生きてきたつもりだけど、目立つって意外に病みつきになりそうだ。

「ああー、負けちまったか。おまえさんなかなか強いね」

 といってバシバシ背中をたたいてくる女将さん。

 あまりにも勢いがいいから、よろけてステージから落ちそうになった。


 その後のもう一試合は、暁のモーガンとガタイのいいお客、知り合いらしい。まあ、狭い街なので、公都の方から山脈を越えてやってきた新顔以外は大体知り合いということだ。

 試合はモーガンの勝利。そこそこ盛り上がっていた。

 テーブルはミシッという音がしたが安定感もあり問題なさそう。後は選手がわかりやすくなるようにゼッケンを付けたり、赤コーナー青コーナー色分けもすることになった。

 賭け事の処理に関しては、もたついたり、客とのトラブルも多少あったようだが、明日には優秀なレイモンドさんが何とかするのだろう。

 泡エールも無事に売り切れたようで、初回の興行としては充分に盛り上がったと思う。


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