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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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新居での生活

 夜中にノックの音で目が覚める。

 誰かと思ったらマリーだった。

「あの・・・、すみません。寒くて眠れないんです」

 木漏れ日亭の前に泊まっていた安宿でも、大部屋に暖炉があったためそんなに寒くなかったのだそうだ。

 仕方なくマリーと一緒に布団に潜り込む。背中合わせだ。

 実はちょっとだけ興奮・・・じゃなくて緊張している。

「孤児院にいた時も寒いときはこうやってみんなと一緒に寝てたんです。仲の良かった友達は冒険者にならなかったんですけどね」

 ジョンともまだそんな関係ではないらしい。

 少し話をしていたら緊張も解けて睡魔が襲ってくる。

 背中にあるぬくもりは、とても暖かかった。

 もう、はるか昔に忘れていた家族と過ごした幸せな子供時代の記憶が呼び起こされる。

 自分とエレーナ、合わせて40年以上一人暮らし。

 こんな夜もいいかもしれないと思ってしまった自分がいた。


 朝、目が覚めると雨音が聞こえた。

 ああ・・・、昨日の夜は最悪だった。

 マリーの歯ぎしりと、いびきで・・・。

 雨戸を開けると雨粒が少し吹き込んでくるのですぐに閉める。

 部屋の中が真っ暗だ。

 こんな時でも便利な魔法で明かりをつける。

「おはようございます。ああ、よく寝れました。ありがとうございます」

 マリーはすっきりとした笑顔で起き上がる。

「おはよう。それは良かったね」

 眠い。今夜は絶対に拒否すると心に誓う。

 リビングに降りてくるとまだ誰も居なかった。コートも買っていないし、冒険者の依頼どころか買い物にも行けない。リビングの窓は寝室とは反対側なので開けても雨は吹き込んでこないが、開けると少し寒い。まずは暖炉を使うために薪を買いに行くかな。

 その前に朝飯をどうするんだこれ。


(しばら)くすると男共が起きてきたので朝食の買い出しに行かせる。

じゃんけんに負けたのはジークとアレン。2人は雨の中を走っていった。

それを見送り(しば)しゆっくりくつろぐ。

帰ってきた二人はびしょ濡れだったが乾燥魔法で一発。そして震えていたので部屋ごと加熱魔法で暖をとる。

朝食は串焼き1本だった。量は少なくても肉がいいらしい。

「お姉さーん。また部屋を暖めてください」

「ごめんね。部屋ごと暖めると結構魔力を使うから、暖房は暖炉をメインで。そろそろお店も開いていると思うから、薪を買いに行くよ」

「みんなで?」

「そうみんなで」

「えー」

マリーは明らかに行きたくない雰囲気だったが連れていく。

「ランタンとか、ロウソクとか、買うんじゃないの?」

「そうですけど」

「私は買わないよ。魔法があるし」

「ああ、そうですよね~」

がっかりしているマリー。心の中では舌打ちとかしていそうだ。

まず最初に行くのは裏通りの雑貨屋。この前買い物したところだ。薪も置いてあった記憶がある。

「みんな、お店まで競争しよう。よーい、どん」

勝手口から真っ先に雨の中へ飛び込み、人通りの少ない裏道を走る。レベルによりステータスアップがあるので、なかなか速く走れる。これがまた気持ちいい。

裏道は舗装なんてされていないので水たまりを飛び越えたり。ものの十数秒で目的の雑貨屋にたどり着く。

しかしみんなの事をすっかり忘れていた。置いてきてしまったかもと思い振り返るとジークの姿が見えた。それに続いて残りのみんなも続々到着。迷子にはならなかったようだ。

店では薪を4束購入。一束で10kgほどの重さがある。たぶん一日で3束くらい使用する。朝晩だけならそうでもないけど。そしてバケツも一つ。

そしてマリーはというと、ランタンもロウソクも高いので購入を断念。ランプ2つと動物油を購入。

ランプといっても単なる皿とひも。皿に油を入れて、ひもを浸して火を付けるというもの。

気を付けないと火事になりそうだけども一般的らしい。

そして油も動物油と植物油がある。動物油は獣臭がするが安い。


みんなで手分けして荷物を持って家に帰る。

そして、またしてもさっと乾燥魔法。

ああ、本当に魔法は便利だ。

とは言っても自分だけは部屋に戻って服を脱ぎ乾燥魔法をかける。

まあ、それくらいは仕方ない。


 暖炉に薪を入れようとして、ハタと気が付く。火を付けるための細い薪を買ってきていない。手元にはナイフはあれど、薪を割るような(おの)(なた)は無い。

 ナイフで薪を割るという力技も考えたが、ナイフが壊れたら痛すぎるのでそれはやめた。魔法でごり押ししよう。

 薪を太いままいくつか重ねて暖炉に置く。そして、そのまま薪に加熱魔法を全力でかけ続ける。するとそのうち煙が上がり始めた。そのタイミングで着火魔法。ポっという音を立てて火が付く。しかし、そのままさらに加熱魔法をかけ続ける。やがて炎はメラメラと強くなり、やっとの事で安定した炎になった。

「あー疲れた」

「お姉さん。ずいぶん無茶しますね」

 隣で見ていたマリーは、たぶん火種から火を起こしたことがあるのだろう。普通は細い薪から徐々に火を大きくしていくもので、いきなり太い薪に火を付けたりはしない。

「普通はやらないよ」

「いえ、やらないのではなく、できませんから。なんとなくお姉さんの非常識さ加減がわかってきました」

「あはははは」

 笑ってごまかす。


「それでは水汲み当番を決めます。当番になった人は、その日の夕方に水場にある水桶に水がいっぱいになるまで水を汲んでくること。井戸は裏道を少し歩いたところに共同のものがあります。今日は雨が降っているし、水桶も空で大変だから、一人二杯、このバケツに汲んでくること」

「「「はーい」」」

 ふう。素直で何より。水場に置いてある水桶の大きさは確認しておいたので、6人全員で2杯ずつ。バケツ合計12杯でだいたい満タンになりそうなことは確認済みである。

「じゃ、バケツは一つしかないので水汲みは順番に一人ずつ行くとして、その前に革靴と刃物類の手入れ方法を教えておこうかな」

 そう言って雑貨屋で買っておいたボロキレを引き裂いてみんなに配る。

 この前までは誰が買うんだと思っていたぼろきれ。これは明らかに森の中で行き倒れた冒険者の服っぽい。こんな物でも売っているってことは、こんな物でも拾ってくればお金になるってことだ。

「革靴は、このようにクリームを塗って布で磨きます」

「「「はーい」」」

 偉ぶって教えているけど、当然、やったことは無いですよ。エレーナの知識です。

「刃物類は切れ味が悪くなってきたら砥石で研いで、さびないように油を塗っておきます。研がなくても使ったら必ず汚れを拭いて置くように。命を預ける道具だから手入れは毎日やること。あまりにもひどく刃こぼれしたら鍛冶屋で」

「「「はーい」」」

「砥石は水場に置いておくから勝手に使ってよし。それとクリームと油は、今日はこれを使っていいけど、後で買っておくように」

「「「はーい」」」

 これで少しは冒険者らしくなるかな。

 午後からは、そのぼろきれを雑巾として家の掃除。

 そして高価な石鹸を使って服と体を洗わせた。

 これでリビングはくつろげる空間になるかもしれない。

 きれい好きな日本人にとって、この世界は臭いに(あふ)れていてきつい。大通りだって馬糞がゴロゴロ落ちているし。


 午後も遅い時間になると雨が上がる。

「よし、じゃ、今から河原に行って石を取ってきます」

「何に使うんですか?」

 (いぶか)しげなマリー。

「湯たんぽって言っても分からないか。ええと、夜に寒くならないようにするために、石を温めておいて、ベッドの中に入れます」

 またマリーが来ると睡眠不足になりそうだから、安眠のための措置です。

「おー!お姉さん!天才です!」

 男共も歓喜の表情をしている。昨日みんな寒かったんだね。

 石だから湯たんぽよりも保温効果は高そう。暖炉の前に並べておいて温める。温め足りないときは、仕方が無いから加熱魔法でなんとかする予定。アイデア的には悪くないと思うけどね。


 夕方、また木漏れ日亭に行き夕食を食べてきた。今日はエール無しで。明日はお金が手に入る予定だからいいけれど、今手元には銀貨が1枚と銅貨が数枚しかない。オークの儲けもあっという間に消えてなくなるなんて、計画的に使わないとほんとにまずいことになりそうだ。

 帰ってくると隣の家からにぎやかな声が聞こえてくる。

 暁のメンバーが帰ってきているようだ。

 とりあえず挨拶していこう。

 ノックをして出てきたのはアーサー。

「明日は、よろしくお願いいたします」

「ああよろしく」

「昨日はゴブリンを16匹も倒したんだって?トーマスに聞いたよ」

 トーマスは相変わらずのおしゃべり野郎だな。別に秘密にしているわけじゃないけど。

「流石の索敵能力だね。普通はそんなに見つけられないからさ。明日も期待しているよ」

「えっ?索敵担当ですか?」

「できれば、お願いしたい」

「あまり自信は無いのですが」

「君はスティーブより優秀だよ。そこは僕が保証する」

「そうですか。初めての森なので・・・じゃ、帰りだけというのは」

「では、そうしようか」

「よろしくお願いいたします」

「そういえば、隣に引っ越してきたんだって?」

「あっ、そうでした。昨日からお隣になりました」

 そういえば、昨日は飲んで帰ってきて挨拶をすっかり忘れていた。暗くなってからドアをたたかれてもレイラさん一人だと迷惑だったかもしれないので、まあ良しとしよう。

「じゃ、明日は引っ越し祝いという事で、またうちで飲もうか」

 後ろに控えているアイアンイーグルの面々に視線を送るアーサー。

「いいんですか!?」

 マリーを筆頭に瞳を輝かせるみんな。

 これは断ったら殺されそう。

「ではお言葉に甘えて、よろしくお願いいたします」

「ああ、かしこまらなくていいよ。よろしく。明日の予定だけど、夜明け前、明るくなってきたら出発」

「えっ!?そんなに早く?起きられるかなぁ」

 目覚まし時計も無いというのに。

「窓を開けておけば、目覚めるさ」

「そんな程度で?それに朝晩は冷えるし」

「では、モーニングコールしてあげるよ。どこの部屋?」

 部屋を聞いてくる?なぜ?

「あ、なんか嫌な予感がするので、遠慮しておきます」

「はははっ。冗談はさておき、出発後、朝早くからやっている屋台で適当に朝食を買ってから北門を出て渡し船の上で食べる。目的地までの移動時間は6時間。そして、1時間採集して帰ってくる。日没までの猶予は2時間位しかないので、魔物との戦闘は極力避ける。日没と同時に門が閉まるから、渡し船も無くなる。そうなると、川向うの魔物の領域で一晩明かさなくてはならないからね」

「はぁ。頑張って早く起きます」

 明日は特に早いので、玄関での挨拶だけで帰ってきた。


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