↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気ままに生きたい異世界転生 ~元おっさんエルフ、チートは無いはずなのに目立ち過ぎて困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/159

出会い

 戦いが終わると、誰もその場を動かず、こちらを見ている。

 あ~、これは怒っていらっしゃいますか?

 そうですよね!

 こんな近くでグレートボアが宙を舞ったら。そりゃ気が散ってしまうことでしょう。

 無表情……。怖いです。

 静かな怒り……。超怖いです。

 一人は、意識不明。

 一人は、うずくまっています。

 命に関わる大惨事です!

 ここは逃げたいけど、それはもっとまずいことになりそうだし。

 仕方なく近づいていき土下座(どげざ)した。

「本当に、申し訳ありません!」

 誰も動きません。

 そして静かです。

 ひょっとして言葉が通じなかったとか!?

 異文化交流は最初から激しく躓いて、骨折までしてしまったかもしれません。


 いたたまれなくなって、そろりと顔を上げてみた。

「あんた、何やってんだ?」

 剣を持った男の子が言葉を発しました。

 やった。言葉の問題はクリアです!

 そして、これは怒りの言葉ではなく明らかに疑問形。ラッキー!

「ジョンがよそ見して、ゴブリンに殴られたことじゃないかな」

 そう言った女の子は、頭から血を流しているジョンの傍(かたわ)らで傷を看(み)ていた。

 その声にはお怒り要素がこもっていた。

 空気が凍る。

 これはまずいです。非常にまずいです!

 その時、ジョンがうめき声をあげた。

 みんなの意識がそこに向いたのを好機と捉える。

「と、とりあえず、治療しましょう」

 素早くジョンの傍らに移動したが、女の子は警戒感をあらわにする。

「あんたに何ができるの! 近寄らないで!」

 その女の子の目の前にポーションを差し出した。

「えっ? これは……」

「はい、ポーションです。どうぞ使ってください」

 明らかに態度が軟化した彼女にほっとする。

 しかし受け取ろうとしない。

 使い方が分からないのかな?

「では、失礼します」

 ポーションの栓を開け、まずは、こめかみの傷口にかけていく。

 かけた自分でも驚くくらいに、すぐに血は止まり、傷口も塞がっていく。

 知識として知ってはいても実際に目の前で見ると感慨深いものがある。

「おぉ……」

 みんなも驚いているようだ。見たことないのだろうか?

 傷は塞がったが、脳震盪(のうしんとう)を起こしているだろうし、首も痛めていると思われる。

「後は、飲ませてあげてください」

 彼女の手を引き、半分残ったポーションを包み込むように握らせた。

「こんな高いもの……」

「差し上げますので使ってください。向こうで倒れているかたにもう一つ。あ、容器は返してくださいね。それは高いので」


 ポーションの瓶(びん)は特殊で、魔力が抜けていかないように保存の魔法陣が刻まれている。これが無ければ一週間ほどで効果は半減してしまう。

 保存の魔法で、二ヶ月経っても八割ほど効果が残るようになる。これがポーションの消費期限とされている。


「仲間を助けてくれてありがとう。俺はジーク」

 剣を持った少年はジークというのか。いたって普通の青年。

「こっちは、アレン」

 槍を持った少年がアレンね。この中では一番整った顔で、髪の毛は長い。

「んで、ジョン。トム」

 木の枝……じゃなくて折れた木剣を持っているのがジョン。この中では、一番背が高い。

 ナイフを持っているのがトム。この子は、マリーより背が低い。

「そして彼女は、マリー」

 マリーはジョンに寄り添っている。さっきジョンが回復した時に飛びついて泣いていたし、これはそういう仲なのかな。

「私は、りゅうへ……じゃなくって、リュー、リューです!」

 思いっきり龍平って言いそうになったよ!

 女で龍平って、異世界でもアウトだろう。

「俺たちは冒険者でEランクの『アイアンイーグル』ってパーティなんだ。お姉さんは凄腕の冒険者?」

 冒険者ってファンタジーな小説によく出てきたよな。それなりに読んでいたから多少の知識はある。Eランクがどの程度なのか分からないが。あの戦闘を見た限りではあんまり強くなさそう。

「私は、狩人ですよ」

 自分の体の記憶を少し呼び起こした。

「へー、狩人ってこの辺じゃあまりいないみたいだけど、儲(もう)かるの?」

「あー、森の中で生活していたからよく分からないけど、どうなのかな」

「ポーション買えるほどは、稼げるんだよね」

「あれは、自分で作ったの」

「え! ポーション作れるの!?」

「そう……、最近魔物が増えちゃって危ないから、狩人やめて街で暮らそうかと思っていたところなの。ポーション作りって仕事もいいかもね。近くの街まで案内してほしいんだけど……」


 野生動物は人間を見たら逃げていくけれど、魔物は逆に襲ってくる。実際この体の持ち主は魔物に襲われて死んでいる。そう、ただの狼の群れではなく、魔物の狼。

 そんな危ない生活を続けるつもりはない。ポーションが高く売れるなら、それを作ってのんびり暮らしていくのもいい。


「一応ゴブリンは倒したし、みんないいかな?」

 ジークの言葉に周りのみんなは頷(うなず)いていた。

 よかった。槍も木剣も折れているし、こんなこともあった直後だ。そりゃ帰るよね。

 こんな危ないところを一人でうろつくのはもう嫌だし。

「じゃよろしく」

「よろしく」

 そんな挨拶を交わしてジークと軽く握手をした。


 ……その直後。


 急に心臓の鼓動が大きくなった。それなのに全身の血の気が引いて冷や汗が噴き出す。

 視界が白黒になっていく……貧血状態だ。

 握手をする直前に何か嫌な感じがしたのだけど、突然手を引っこめるわけにもいかず。

 急いで数歩下がって後ろ向きになり、四つん這いに倒れ込んでそこで堪(こら)える。

 強烈な吐き気が襲ってきたが、……耐えた。

 いや、胃液しか出てこなかった。


 神様やってくれたなぁ。この体。男性恐怖症だよ。

 無意識でこの発作とか困るんですけど!

 男と恋に落ちる予定はさらさらないが、人類の半分は男なんだから、こんな状態じゃ街中で暮らしにくいったらありゃしない。


 だから、エレーナは森の中で自給自足の一人暮らしだったのか……。

 原因となる記憶は……思い出せない。ぽっかりと記憶の無い期間がある。

 これ思い出したとき自分は正気を保てるのだろうか。爆弾抱えて異世界とかハードモードすぎるって。

 エルフの寿命がどのくらいかは不明だが、長い人生このままじゃ暮らしにくいのでこれは何とかしよう。少しずつ慣らしていくということで。

 とりあえず、エレーナの記憶や感情は深くしまい込み、自分は自分だという意識を強く持ったら落ち着いてきた。



「おい、大丈夫か……」

 ジークが恐る恐る近づいてきた。

 やばい。

 身体に触れられる前に立ち上がらなくては。

「すみません。大丈夫です!大丈夫です!」

 さらに距離をとりながら、立ち上がり振り返る。

 皆、怪訝(けげん)そうな顔でこちらを見ている。

 ここは取り繕っても仕方ない。

「実は、男性恐怖症なんです。かっこいい男の人だと特にひどい症状が出てしまって……」

 アレンはとても残念そうな顔をしている。

 ジョンは哀れみ。

 トムは驚き。

 ジークはとまどいながらもちょっと嬉しそうな顔。器用だな。

 マリーはほっとしたような複雑な表情の中に、一瞬笑顔を見たような……。

 怖い!

 女の人怖いよ~。

 そして、そこまで表情を読み取れてしまう自分も怖い。

 これは個人の特技? 種族的なもの?

 もし、女の子だから……だとしたら、前世で何度も地雷を踏んでいた可能性を思い出して身震いする。


「だから、森の中で一人暮らししていたんです。もう、治ったかなと思ったんですけどね。ダメでした。でも、積極的に治していこうと思っているんですよ。なので普通に接してもらっていいですよ」

 そして、最後に笑顔で

「ただし、お触りは無しで」

 場を和らげるジョークのつもりだったのに、凍らせてしまった。

 さらにマリーがピクッと反応したのを見てしまったよ。怖っ。


「お姉さん、何歳なんですか?」

 はい。マリーから直球来ました。トーンが少し低いです。

「こう見えて、39歳なんですよ」

 6人しかいないのに、この場がざわついたと分かりました。

 君たちは、十代ですよね。私は、40歳です。下手をすると二回り以上違います。

 ジョークが通じないのは当たり前か。

 そして、何故か1歳サバを読んでしまいました。

 正確な歳なんて分かるはずもないと思ってしまったのです。ごめんなさい。

 マリーの驚きの表情の中に、一瞬笑顔を見たような……。

 だから、怖いって!

 これが女子の見ている世界なのか!

 やめてくれ~、女の子まで嫌いになってしまったら、オレはどうやって生きていけばいいんだよ。

 異文化交流は骨折どころじゃないよ、意識不明の重体だ。


 なんだか、いたたまれなくなって視線を逸(そ)らすと、ゴブリンの死体が目に入る。

 キモッ!!!

 それを見たみんなからジークが小突かれている。そして、仕方ないといった感じで口を開いた。

「ところで、お姉さんは冒険者じゃないから知らないかもしれないが、倒した獲物は倒した人に権利があるんだけど、戦っていた途中に割って入ってくるのはルール違反で……えっと……」

 報酬の分配についての話のようだ。

 初対面の人に助けてもらったような意識だと交渉しにくいよね。

「私はいりませんので、これは全てあなたたちの物ということでいいですよ」

「え、いいの?」

 口調が突然くだけた。あっさり解決して嬉しかったのか……、素が出たのかな。

「あと、向こうに転がっているグレートボアも差し上げます」

「え、さすがにそれは、ポーションも貰っているし……」

「どうせ私一人では、持っていけないので気にせずに。……では、私が捨てていく予定だった分を街までの案内料として貰ってください」


 ジークが後ろを振り返ると、パーティのみんなは頷いていた。

「ありがとう。じゃ、それで」

 笑顔のジークは手を出してきたが、同じ失敗は繰り返さない。こちらも笑顔で返すと、気が付いたジークは顔を赤らめ、出していた手で後頭部を掻いた。

 ベタな反応だな。微笑ましい。


男性恐怖症は、じきに回復しますのでご安心を。

精神面を深く掘り下げる予定はありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。