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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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出会い

 戦いが終わると誰もその場を動かず、こちらを見ている。

 あ~、これは、怒っていらっしゃいますか?

 そうですよね!

 こんな近くでグレートボアが宙を舞ったら。そりゃ気が散ってしまう事でしょう。

 無表情・・・。

 怖いです。

 静かな怒り・・・。

 超怖いです。

 一人は、意識不明。

 一人は、うずくまっています。

 命に関わる大惨事です!

 ここは逃げたいけど、それはもっとまずい事になりそうだし。

 しかたなく、近づいていき、土下座した。

「本当に、申し訳ありません!」

 誰も、動きません。

 そして、静かです。

 ひょっとして言葉が通じなかったとか!?

 異文化交流は最初から激しく躓いて、骨折までしてしまったかもしれません。

 いたたまれなくなって、そろりと顔をあげてみた。

「あんた、何やってんだ?」

 剣を持った男の子が言葉を発しました。

 やった、言葉の問題はクリアです!

 そして、これは怒りの言葉ではなく、明らかに疑問形。ラッキー!

「ジョンがよそ見して、ゴブリンに殴られた事じゃないかな」

 そう言った女の子は、頭から血を流しているジョンの傍らで傷を看ていた。

 その声にはお怒り要素がこもっていた。

 空気が凍る。

 これはまずいです。非常にまずいです!

 そのとき、ジョンがうめき声をあげた。

 みんなの意識がそこに向いたのを好機と捉える。

「と、とりあえず、治療しましょう」

 すばやくジョンの傍らに移動したが、女の子は警戒感をあらわにする。

「あんたに何ができるの!近寄らないで!」

 その女の子の目の前にポーションを差し出した。

「えっ?これは・・・」

「はい、ポーションです。どうぞ使ってください」

 明らかに態度が軟化した彼女にほっとする。

 しかし、受け取ろうとしない。

 使い方が分からないのかな?

「では、失礼します」

 ポーションの栓を開け、まずは、こめかみの傷口にかけていく。

 かけた自分でも驚くくらいに、すぐに血は止まり、傷口もふさがっていく。

 知識として知ってはいても実際に目の前で見ると感慨深いものがある。

「おぉ・・・」

 みんなも驚いているようだ。見たことないのだろうか?

 しかし、脳震盪(のうしんとう)を起こしているだろうし、首も痛めていると思われる。

「後は、飲ませてあげてください」

 半分残ったポーションを、彼女の手を引き、包み込むように握らせた。

「こんな高いもの・・・」

「差し上げますので使って下さい。むこうで倒れているかたにもう一つ。あ、容器は返してくださいね。それは高いので」

 ポーションのビンは特殊で、魔力が抜けていかないように保存の魔法陣が刻まれている。

 これが無ければ1週間ほどで効果は半減してしまう。保存の魔法で、2ヶ月経っても8割ほど効果が残るようになる。これがポーションの消費期限とされている。


「仲間を助けてくれてありがとう。俺はジーク」

 剣を持った少年はジークというのか。いたって普通の青年。

「こっちは、アレン」

 槍を持った少年がアレンね。この中では一番整った顔で、髪の毛は長い。

「んで、ジョン。トム」

 木の枝・・・じゃなくて折れた木剣を持っているのがジョン。この中では、一番背が高い。

 ナイフを持っているのがトム。この子は、マリーより背が低い。

「そして彼女は、マリー」

 マリーはジョンに寄り添っている。さっきジョンが回復した時に飛びついて泣いていたし、これはそういう仲なのかな。

「私は、りゅうへ・・・じゃなくって、リュー、リューです!」

 思いっきり龍平って言いそうになったよ!

 女で龍平って、異世界でもアウトだろう。

「俺たちは冒険者でEランクのアイアンイーグルってパーティなんだ。お姉さんは凄腕の冒険者?」

 冒険者ってファンタジーな小説によく出てきたよな。それなりに読んでいたから多少の知識はある。Eランクがどの程度なのかわからんが。あの戦闘を見た限りではあんまり強くなさそう。

「私は、狩人ですよ」

 自分の体の記憶を少し呼び起こした。

「へー、狩人ってこの辺じゃあまりいないみたいだけど、儲かるの?」

「あー、森の中で生活していたからよくわからないけど、どうなのかな」

「ポーション買えるほどは、稼げるんだよね」

「あれは、自分で作ったの」

「え!ポーション作れるの!?」

「そう・・・、最近魔物が増えちゃって危ないから、狩人やめて街で暮らそうかと思っていたところなの。ポーション作りって仕事もいいかもね。近くの街まで案内してほしいんだけど・・・」

 野生動物は人間を見たら逃げていくけれど、魔物は逆に襲ってくる。実際この体の持ち主は魔物に襲われて死んでいる。そう、ただの狼の群れではなく、魔物の狼。そんな危ない生活を続けるつもりは無い。ポーションが高く売れるなら、それを作ってのんびり暮らしていくのもいい。

「一応ゴブリンは倒したし、みんないいかな?」

 ジークの言葉に周りのみんなは頷いていた。

 よかった。槍も木剣も折れているし、こんなこともあった直後だ。そりゃ帰るよね。こんな危ないところを一人でうろつくのはもう嫌だし。

「じゃよろしく」

「よろしく」

 そんな挨拶を交わしてジークと軽く握手をした。

 ・・・その直後。

 急に心臓の鼓動が大きくなった。

 それなのに全身の血の気が引いて冷や汗が噴き出す。

 視界が白黒になっていく・・・貧血状態だ。

 握手をする直前になんか嫌な感じがしたんだが、突然手を引っこめるわけにもいかず。

 急いで数歩下がって後ろ向きになり、四つん這いに倒れこんでそこでこらえる。

 強烈な吐き気が襲ってきたが、・・・耐えた。

 いや、胃液しか出てこなかった。

 神様やってくれたなぁ。この体。男性恐怖症だよ。

 無意識でこの発作とか困るんですけど!

 男と恋に落ちる予定はさらさら無いが、人類の半分は男なんだから、こんな状態じゃ街中で暮らしにくいったらありゃしない。

 だから、森の中で自給自足の一人暮らしだったのか・・・。

 原因となる記憶は・・・思い出せない。ぽっかりと記憶の無い期間がある。これ思い出したとき自分は正気を保てるのだろうか。爆弾抱えて異世界とかハードモードだなおい。

 エルフの寿命がどのくらいかは不明だが、長い人生このままじゃ暮らしにくいのでこれは何とかしよう。少しずつ慣らしていくという事で。


「おい、大丈夫か・・・」

 ジークが恐る恐る近づいてきた。

 やばい。

 身体に触れられる前に立ち上がらなくては。

「すみません。大丈夫です!大丈夫です!」

 さらに距離をとりながら、立ち上がり振り返る。

 みんな怪訝そうな顔でこちらを見ている。

 ここは取り繕っても仕方ない。

「実は、男性恐怖症なんです。かっこいい男の人だと特にひどい症状がでてしまって・・・」

 アレンはとても残念そうな顔をしている。

 ジョンは哀れみ。

 トムは驚き。

 ジークはとまどいながらもちょっと嬉しそうな顔。器用だな。

 マリーはほっとしたような複雑な表情の中に、一瞬笑顔を見たような・・・。

 怖い!

 女の人怖いよ~。

 そして、そこまで表情を読み取れてしまう自分も怖い。

 これは個人の特技?種族的なもの?

 もし、女の子だから・・・だとしたら、前世で何度も地雷を踏んでいた可能性を思い出して身震いする。

「だから、森の中で一人暮らししていたんです。もう、治ったかなと思ったんですけどね。ダメでした。でも、積極的に治していこうと思っているんですよ。なので普通に接してもらっていいですよ」

 そして、最後に笑顔で

「ただし、お触りは無しで」

 場を和らげるジョークのつもりだったのに、凍らせてしまった。

 さらにマリーがピクッと反応したのを見てしまったよ。怖っ。

「おねえさん、何歳なんですか?」

 はい。マリーから直球来ました。トーンが少し低いです。

「こう見えて、39歳なんですよ」

 6人しかいないのに、この場がざわついたと分かりました。

 君たちは、10代ですよね。私は、40歳です。へたをすると二回り以上違います。

 ジョークが通じないのは当たり前か。

 そして、何故か1歳サバを読んでしまいました。

 正確な歳なんてわかるはずもないと思ってしまったのです。ごめんなさい。

 マリーの驚きの表情の中に、一瞬笑顔を見たような・・・。

 だから、怖いって!

 これが女子の見ている世界なのか!

 やめてくれ~、女の子まで嫌いになってしまったら、オレはどうやって生きていけばいいんだよ。

 異文化交流は骨折どころじゃないよ、意識不明の重体だ。

 なんだかいたたまれなくなって視線を逸らすと、ゴブリンの死体が目に入る。

 キモッ!!!

 それを見たみんなからジークが小突かれている。そして、仕方ないといった感じで口を開いた。

「ところで、おねえさんは冒険者じゃないから知らないかもしれないが、倒した獲物は倒した人に権利があるんだけど、戦っていた途中に割って入ってくるのはルール違反で・・・えっと・・・」

 報酬の分配についての話のようだ。

 初対面の人に助けてもらったような意識だと交渉しにくいよね。

「私はいりませんので、これは全てあなたたちの物という事でいいですよ」

「え、いいの?」

 口調が突然くだけた。あっさり解決して嬉しかったのか・・・、地が出たのかな。

「あと、むこうに転がっているグレートボアも差し上げます」

「え、さすがにそれは、ポーションも(もら)っているし・・・」

「どうせ私一人では、持っていけないので気にせずに。・・・では、私が捨てていく予定だった分を街までの案内料として貰ってください」

 ジークが後ろを振り返ると、パーティのみんなは(うなず)いていた。

「ありがとう。じゃ、それで」

 笑顔のジークは手を出してきたが、同じ失敗は繰り返さない。こちらも笑顔で返すと、気が付いたジークは顔を赤らめ、出していた手で後頭部を()いた。

 ベタな反応だな。微笑(ほほえ)ましい。


男性恐怖症は、恋愛フラグを強力にへし折るための設定です。

精神面を深く掘り下げる予定はありません。

じきに回復しますのでご安心を。

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