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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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魔道具

 なんか布団が重い。

 と思ったらマリーでした。

 ここはチーム暁のホーム。そのリビングのソファーで寝てしまったようだ。

 マリーの上から毛布が掛かっていた。誰がが掛けてくれたのだろう。

 頭は痛くない。大丈夫。昨日は飲みすぎていない。ただ単に眠くて寝てしまっただけ。記憶もだいたいある。

 ジーク達は床で寝ていた。

「おっ、起きたか」

 そこにタイミングよくやってきたのはスティーブ。

「おはようございます」

 起き上がりながらマリーをどける。

「う~ん、むにゃむにゃ・・・」

 しかし身長のわりに軽いな。体が資本の冒険者なのにこれではいけないよ。

 足を床につけて気が付いた。

 ブーツを履いたまま寝てしまっていたとは。

「朝早くてすまないが、みんなを起こしてくれ。俺たちは護衛でフォレストワースまで行ってくる。帰りは5日後だ」

「あ、そうでしたね。すみません、泊まってしまって」

「気にすんな」

 スティーブは片手をあげて水場の方へ歩いて行った。

 暗がりだったが顔にはうっすら髭が生えていた。男たちはみんな朝に剃っているのだろうか。電気シェーバーも無く、鏡も無く。大変じゃないのかな。毎日やっていれば慣れるのかね。

「マリー、起きて。朝だよ」

「あ、お姉さん。おはようございます」

 マリーをソファーに残してリビングの窓を開けに行く。

 なんか尾てい骨の辺りが痛い。これ、革鎧のスカートをはいたまま寝たからだな。間違ってパンツいっちょで寝なかった分だけ良しとしよう。これは仕方ない。

 そこかしこで寝っ転がっている男共の上を踏まないように窓際へ、そして雨戸を開けると、まだ日は昇っていない時間帯。

 それでも通りを何人か歩いている人がいる。

 見ていたら通行人と目が合った。

 気まずいので微笑んで会釈してから奥に隠れた。

 あれ?この世界は会釈の文化はあるのかな?

 エレーナは森暮らしだったからな。そんな記憶は無いな。

 まあいい。

 ふと気になったので部屋の奥からもう一度窓の方を振り向く。

 通行人は頭だけが見えていた。

 リビングの窓は玄関わきの一つだけ。両サイドは隣の建物と壁を共有しているので窓は無い。玄関前は庭も生垣もなくすぐに通りだ。そういえば玄関前に数段の階段があったし、窓の位置も調整して通行人と目線が合わないように考えられているらしい。窓ガラスも無ければカーテンも無い。こんな何もないような世界だが、それでも人々はうまく工夫して生活しているんだな。

「さあ、起きろー、朝だぞー」

 マリーが声をかけている。

 すると、あくびをしながらみんな起き上がる。その中でトムの動きが演技臭かった。あ、こいつ絶対に起きて覗いていやがったな。男の考えは分かるんだよ。ま、過ぎてしまったことは仕方ない。減るもんじゃなし。気が付けなかった自分が悪い。

 さ、飲んだ次の日の朝といえば、まずトイレだね。みんなが起きてきて混みあう前に行ってしまおう。

 案の定、トイレから出てくると水場の付近は大渋滞していた。

 10人以上居るんだから当たり前だな。

 トイレの前が水場になっていて、壁から突き出している台に水の入った桶を置いて男たちが髭を剃っている。奥に大きい水桶があり、高い位置についている何かはシャワーの魔道具だろう。

 隣にキッチン。

 シンクがあり魔道具と思われる蛇口が付いている。

 そして鍋の前に女性が一人。

 あれがアーサーの妹、スティーブの嫁のレイラだろう。昨日は結局会っていない。

 相手もすぐに気が付いた。

「おはようございます。リューさんですよね。私はレイラです」

「おはようございます。リューです」

 挨拶もそこそこに鍋を凝視してしまった。

 何故かというと、鍋は木製の足の上に載っているのだがその下に火は見えない。

 その視線にレイラも気が付いたようだ。

「あ、これですか」

 鍋の下にある箱のようなものをお玉でたたく。

「はい」

「ふふっ、魔道具ですよ。今、スープを温めています」

 レイラは得意げにお玉を振るう。

「ちょっと見せてもらってもいいですか」

 やば、なんか興奮してきた!

「どうぞー」

 ご機嫌な返事だった。

 箱にはレバーが二つ付いていた。

「こっちが火力で、こっちが範囲の調節用です」

 話をしている間にもスープが温まったらしく、レイラはレバーを端まで動かした。

 すごい。さっきトイレに入る前には居なかったはずだから、それまでの短時間であっという間に温め終わったということ。何という火力!

「これ本当に便利なんですよ。火を付ける必要もないし、あっという間に温まるし、スープも焦げ付かないし。まあ、でも作用点の付近は温まり安いから、火力は気を付けないといけないのですけど。あ、これ持っていくの手伝ってもらえますか?」

「もちろん」

 スープの入った鍋を運ぶなど、お手伝いをしながらいろいろ話を聞いた。

 この魔道具は、なんと鍋ではなく食品の中央から温めることができるらしい。

 鍋に入れたまま使える電子レンジ、いや電子レンジより高機能だ!魔道具すげえ。

 作用範囲に手を入れてしまっても自身の魔力で守られているので熱くなったりしないらしい。しかし空気は温められているので熱さは感じるのだとか。

 今度一緒に魔道具屋に行くことを約束してもらった。

 レイラはとてもいい子だったので、これはぜひともお友達になりたいものだ。


 朝食は黒パンとスープ。

 これはどこも同じなのかね。

 さっさと食べたら、暁は護衛する商隊との待ち合わせ場所に、アイアンイーグルは森の木漏れ日亭に帰っていく。お見送りはレイラだ。

 いつも一人だからたまに顔を出してやってくれと、アーサーとスティーブに頼まれてしまった。いいけどね。ちょうど南門から宿への帰り道の途中にあるし。


 宿に帰るとマリーがその足で部屋に入ってきた。

「お姉さん、お願いがあるのですが」

 着替えくらいしたかったが仕方ない。

「なぁに」

 大分かしこまっていたので優しく声をかけた。

「あの・・・、あそこの借家。一緒に借りてくれませんか?」

「あー、あそこね。んー」

「私達だけだと、信用が足りないらしく、借りられないそうです」

「えっ、いつの間に聞いて来たの」

「いえ、スティーブさんから聞きました。最低でも一年くらい冒険者やっていないと無理だそうです」

「でもそれじゃ、私もダメだけど」

「それが、お姉さんが契約者なら貸してもらえるそうです」

「なんで!?」

「スティーブさんが商業ギルドで交渉してくれたそうです」

 スティーブ!先回りしすぎだろ!え、いつ?アーサーと一緒に腕相撲大会の打ち合わせをしていたときかな。それしかない。

「あと、家賃は前払いなので、私達だけだとお金が無いんです」

「それは貯めてからということで」

「今の宿だと、薬草採取だけではかなりきついんです」

「じゃ、宿を変えるしかないんじゃ・・・」

 そこまで言ったら、マリーの目に涙が溢れた。ええーっ。

「見捨てないでください・・・」

「見捨てたりなんかしないって」

「最初だけでもいいんです。コブリンと戦えるようになるまででも」

「そのくらいならいいけど」

「あと、2階は全部お姉さんが使っていいですから。私たちは、3階で」

「それは、ちょっと私が条件良すぎじゃない?」

「その代わりに、家賃は、半々にしてもらいたいです」

「そういうことか」

「はい、家賃は一ヶ月1400Crでいいそうなんです。その半分なら今、用意できます」

 この宿は7日で一人100Crだから、アイアンイーグルは5人一ヶ月で約2000Crかかるのか。確かに、最初に借りることができれば払い続けることは可能なレベルなのかもしれない。今の宿よりも負担は減る。

 それに自分にとっても都合がいい。もちろん半額で済むというのもあるが、近くに知っている人がいるというのは、一人で部屋を借りるより安全だ。アイアンイーグルが信頼できるメンバーなら、という条件付きだが。今のところ信頼できそう。

 あと、お隣にレイラさんが居るし、お友達になって魔法を教えてもらいたい。

 そして、さらに魔石を持参したらシャワーとか貸してくれるかも。

 いや、これは今日作った河原のお風呂があればいらないか。

 いやいや、安全で人目を気にしなくていい屋内は捨てがたい。

「でも家賃以外にもかかるんじゃないの、敷金とか礼金とか」

「なんですかそれ。スティーブさんからは家賃以外何も聞いていないです」

「無いのかな。まあそれなら、借りてもいいかな。調剤用の部屋も欲しかったことだし」

「ほんとうですか!?」

「でもちょっと待って、それはギルドで契約内容をよく確認してからね」

「やった!ありがとうございます!」

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