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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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打ち上げ

「さて、じぁこの後は、うちで打ち上げでもやろうか」

「それなら、マリー達も呼んでいいかな?」

「ああ、それならもう先にやっていると思うぞ?」

「えっ?」

「そういうことだ。料理が無くなる前に急ごう」

 小走りに走ってくアーサー。

 宿に荷物を置いて行きたかったけれど、まあいいか。


 大通りから二本入った裏通り、そこにアーサー達のホームはあった。

 この街は外壁に囲まれていて土地が少ないため、ほとんどの建物は隣の建物と壁を共有している。そして二階建て以上だ。この家も屋根裏部屋を含めて三階建てだった。

 入り口のドアを開けるとすぐにリビング。そこにすっかり出来上がった面々がいた。

 ジーク達も昼間のようにおとなしくしているのかと思いきや、お酒が入っているためかすっかりなじんでいる。

「やっと、帰ってきたか。お疲れさん」

 スティーブが真っ先に声をかけてきた。

「荷物は適当にその辺に置いてもらって、早速飲もうか」

 弓やら矢筒やらを受け取り優しくエスコートするスティーブ。

 アーサーの妹の心を射止めたのはこういう事か。他の連中とは一線を画すものがある。

「あ、そうだ。乾杯の前にあれを頼むよ」

 そのままみんなの前を通り過ぎ奥の方へ連れていかれる。そこにはエールの酒樽があった。

「あれね。昨日のやつ。シュワシュワ」

「そうそう」

 酒樽を見ると上の蓋が開けられていた。これは破壊したの?そして、もう半分くらい無くなっているんだけど。そして、水滴がついていることに気が付いて樽を触ってみた。

「あれ?もう冷えている」

「ああ、レイラがやってくれたんだ」

「魔法が使えるという話でしたね」

「そう。今日はつわりがひどくてな。部屋で休んでいる。後で顔くらいは出せると思う」

「いいですよ。無理しなくても。さて、じゃ、早速やっちゃおうか」

 炭酸、炭酸、おいしい炭酸、むむーっ。なかなか手応えがない。やはり慣れるまでは時間がかかるらしい。そんなに簡単に新しい魔法が使えるほど甘い世界ではない。

 試行錯誤して10数秒・・・おっ来た来た。

 そして、程よく炭酸が集まるまで集中集中。

 集める範囲を少し広めに調整して、昨日より炭酸を強くしてみた。エールに溶けきれない二酸化炭素が小さな泡となり透明度が一気に下がる。

「こんなもんかな」

 魔法の集中を解くと、気泡が浮かび上がってよい感じの泡になった。

 柄杓でジョッキにそうっと注ぎ飲んでみる。いい感じだ。

「おっ、昨日のやつか」

 アーサーが早くも着替えて降りてきた。

 これで鎧を着ているのは自分だけになった。まあ、アイアンイーグルのみんなは鎧も着替えも無いからそのままの格好だけどね。

「では早速味見を・・・」

 そういって手に持っていたジョッキを奪おうとする。

「ちょっと、やめてよ。自分で注ぎなさい」

 少し嫌な顔をしてみたが、アーサーは笑っている。こいつは。

「まてまて、その前に乾杯しよう。おーい。泡エールだぞ。飲みたい奴はジョッキを空にして持ってこーい」

 スティーブは柄杓(ひしゃく)を手に、自分のジョッキをたたいている。

「泡エール?もしかして昨日騒いでいたアレか!?馬鹿みたいに高い酒」

 ああ、そういえばジーク達は飲んでないんだね。女将さんはかなりの値段で売っていたから買えなかったか。

 みんなに混じりアーサーもどこからかジョッキを持ってきていた。


 一通りエールが行きわたってから、アーサーが音頭をとる。

「では、改めて。新たな出会いと、今日も無事であることに。乾杯」

「「「「かんぱーい」」」」

 ひと仕事の後の一杯はうまいなあ。肉体労働の後は特に。

 焼き肉の時にも飲みたい。出前とかできたら最高なのに。

 冒険者ギルドの依頼で出せるかな?どんな料金になるのか分からないが。

「うぉっ、なんだこれ!口の中がしびれる!」

 ジーク達は大はしゃぎだ。

 大丈夫か?

 もしかすると飲み会なんて初めてなのでは?

 マリーにこっそり聞いてみた。

「当り前じゃないですか。そんなことにお金なんか使えませんから。みんなで飲むのは初めてですね。でも木漏れ日亭の初日にこいつらだけで飲みやがったんですよ」

 やべ、そうだった。マリーのお怒り案件。

「あはははは。大丈夫かなぁ」

「大丈夫だと思いますか?昨日を思い出してください」

「・・・私、寝てたから分からないけど」

「そうです。私も記憶がありまひぇん」

「そ、そうなんだ」

「ふふふふっ」

 マリーが笑った。

 あ、これダメなやつだ。もう酔っぱらっている。

 今日は程よくセーブしないとね。

 この体の酒量もだいたい分かったし。そう。昨日は勉強したのだ。

 この体は酒豪とまではいかないが、かなり飲める!

 昨日はワインを飲んだから撃沈したのであってエールくらいなら何杯でも行けるはず。

 いや、これ今日確かめる必要は無いんだけどね。

 ほら、ただ酒だし。飲まないと損だ。

 もし部屋に連れ込まれたら盛大にゲロをぶちまけてやる。はっはっは。

 テーブルに並んでいる料理は見たことがある。

 露店で売っていたヤツだ。

 肉料理が多い。

 話を聞くと壁の内側には余った土地などなく、畑は全て街の外。

 川のこちら側はあまり魔物が出ないとはいえ角ウサギくらいはいるので、農業でさえ命がけとか。街の北側に畑があり、うちらが肉を焼いている南側はこれから畑を広げる予定の土地なのだそうだ。

 最前線のフォレストワースには畑があるはずもなく、この街マデリンの人口も含めて全く供給不足。峠を越えた先の公都アップランドからの輸送にかなり依存しているらしい。

 日持ちのしない葉物野菜や、重くて嵩張る根菜類などは特に高いので、この街では肉食傾向が強い。

 さすが長年ここで活動しているBランクパーティの面々だ。ガキンチョとは話の情報量が違うよ。

 楽しく飲んでいる中でふっと思いついた事があった。

「スティーブさーん」

「なんだ?」

「今度の腕相撲大会、当然手伝ってくれますよね」

「ああ、そのつもりだが」

「当日、司会やってもらえませんか」

 きっとできると思う。口がうまいし。

「いいけど、どんな事をやるんだ」

「選手の紹介とか、実況もできれば。盛り上げる感じで」

「うーん。いまいちイメージがわかないが」

 そうかこの世界では、そういうイベントってあまり無いのだろうか?

 それじゃ、うまくできるかどうかわからないがテレビでやってた格闘技の番組を思い出しながら。

「じゃ、ちょっとやってみますね」

 ジークの肩に手を乗せる。

「赤コーナーっ」

 と言ってから気が付いた。赤コーナーなんて無いじゃん。

「「「赤コーナー?」」」

「間違い。こちら、新進気鋭のチームアイアンイーグルを率いる若きリーダー、剣を持たせたらどんな強敵にでも立ち向かう」

 最初は、何が何だか分からなかったような顔をしていたジークが、少し恥ずかしそうな顔に変わってきた。

「無謀な特攻隊長ジーーーク!!!」

 手首をつかんで持ち上げる。

「えっ、何その『無謀な特攻隊長』って」

 ジークのテンションは一気に急降下した。

 しかし、会場は盛り上がる。

「そして、対戦相手は・・・」

 ちょうど隣に座っていたアレンの肩に手を乗せる。あまり話したこと無いけどいいや。

「同じく、チームアイアンイーグルの貴公子、その甘いマスクであなたの心を貫きます。今日は下克上なるか。女ったらしのアレーーン!!!」

 恥ずかしそうにジョッキに口を付けていたアレンが噴出した。

「お姉さん、俺、お姉さんに何かしました?」

「いえ、マリーから聞いた情報です」

「マリー・・・」

 アレンが半目でマリーを睨む。

「えっ、そんなこと言ったかなぁ。あれ?」

 マリーはとぼけている。

「まあ、こんな感じで、選手を紹介します」

 アイアンイーグルは何やら盛り上がっているが、まるっと無視してスティーブと会話する。

「オーケー、オーケー。なんとなく分かったよ」

「予め選手の情報を集めておく必要がありますね。で、盛り上がるなら多少盛ってしまってもいいと思います。今回みたいな茶化した感じではなく強そうなイメージの話なんかがいいです」

「その辺も何とかなりそうだ」

「で、報酬は、相撲協会の取り分から何割か。ちょっとどうなるのか分かりませんが」

「その辺は、気にしなくていいよ」

「やった。ありがとうございます。収入がどうなるのか全然わからないんですよ」

 後は、ポスターと、競技台と、なんだっけ?

 まあいいや。

 しかし熱いな。

 鎧を着たままだった。

 脱ごう。

 鎧を脱いで部屋の隅に置く。

「ふうっ」

 ああ、すっきりする。

「ゴクリッ」

 振り向くと、そこには横目でこちらをじっと見ているトムがいた。赤い顔してジョッキを口につけている。ちょっとキモイ。

 え、今。生唾のみ込んだ?いやいやいや、エールを飲んだのだよね。

 今のシーン、エロ要素無いでしょ。

 マリーがむっつりなんて言うから気にしちゃうじゃないか。


 これだけ水分を取れば排出したくなってくる。

「あの。トイレ借りたいんだけど」

 近くにいたスティーブに声をかける。

「奥に行って、左側の扉だよ」

「どうも」

「あ、そうそう。入ったら右側の壁の金属板に魔力流してみ」

 スティーブはいたずらっぽい笑顔。

 トイレの最中に罠にかかったら最悪なんだけど。

「何?」

「行ってのお楽しみ」

 それ以上何も教えてくれないのであきらめてトイレに向かう。

 言われた扉を開けると普通のトイレだ。穴に蓋があっても臭い。

 罠は無いようだ。当たり前か。

 で、右側の壁に金属板が取り付けてあった。すぐ隣に小さな棚があり魔石が置いてある。これは魔力をうまく扱えない人用の魔石かな。

 さっそく金属板に軽く触れて魔力を流してみた。

 何も変化はない。

 と思ったが劇的な変化があった!

 トイレのにおいが消えているだと!

 臭いでごまかしているのではなく完全に消えたようだ。

 これはすごい。

 こんな窓ガラスもないような文明レベルで、現代の科学技術を軽く凌駕する民生品があるとは。

 これは、この世界でも快適に暮らしていく希望の光が見えてきた。

 試しに蓋を開けてみる。

 激臭が鼻を突いた。

 もう一度、金属板に魔力を流してみる。

 すると瞬間的に臭いが消えた。

 いいねこれ。


「どうだった」

 戻ると早速スティーブが近づいてきた。

「最高です」

「そうだろう。そうだろう。あれ高かったんだよ」

 自慢げな顔だな。

「やっぱりお高いのかぁ」

「他にも、水が出る魔道具や、温水シャワーが出る魔道具もある」

「いいですね」

「だろ。暁に入ってくれれば、ここに住めるぞ」

 そう来たか。

「そ、それは・・・でも断る」

 ちょっと揺らいだが、危険なお仕事はやりたくない。

「はははっ、残念」

 スティーブはちっとも残念そうな顔じゃない。

「で、こことほぼ同じ間取りの家が隣にある。2階に部屋が3つ。3階には5つ。十分だろう」

 1フロアに部屋が5つもあるのか。1階の広さから見て一部屋6畳くらいかな。宿の部屋よりは広いかも。

「悪くは無いですね」

「借りたくなったら、商業ギルドで契約できる。そうそう、商業ギルドに行ったらトイレを使わせてもらうといい。ここよりすごいぞ」

 何!トイレがここよりすごい?

 それはぜひとも確認してみなければ、明日早速行ってみよう。大会の打ち合わせの時にでも。


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