ライバル
「いやあ、これは気持ちがいい」
女性陣の次はアーサーが入った。
そして今上がってきたところだ。
「今ここで、昨日飲んだあのエールが飲みたい」
アーサーはジョッキをあおる動作をしてこっちにウインクした。
げっ、やめて。
「そんなことをしても、エールは出てきませんよ」
「それは残念」
エールは無理でも冷たい水くらいなら用意できる。魔法でね。
手に持っていたコップを手渡す。
「代わりにどうぞ」
「ありがとう」
アーサーは冷水を一気に飲み干した。
「いやー、うまかった。魔術師は魔力の温存のため、あまりこういうところに魔法を使ってはくれないんだ」
「ああ、そうなんですね。もう帰るだけなので、全く気にしていませんでした」
受け取った空のコップを見てマリーが赤い顔をしている。
思春期の子供じゃないんで関節キッスなんて気にしませんよ。
「あんちゃーん。アーサーあんちゃーん」
誰かが街道から走ってくるのが見える。
ええと、あれは確かギルドで会ったな。そうそうシルバーウルフとかいうジーク達のライバルチームだ。笑顔で走ってくるけど気が付いていないのか?
さすがに途中で気が付いたようで表情が険しくなった。
「なんでお前たちが、アーサーあんちゃんと一緒にいるんだよ!」
真っ先にジークに食ってかかる。
「ああ、肉くれるって言うから」
「寄生してんじゃねーよ!」
「寄生してんのはお前らだろ」
なんか少しジークの方が大人な対応?
こっそりアーサーに声をかける。
「これ舎弟?」
「舎弟!?いや、そんなんじゃないが。家が近くてな、子供のころ一緒に遊んだりしたんだ。だからまぁ、ちょっと面倒を見ている面もある」
「だったら、なんとかしてくれない?」
「そうだな。おい、エディ」
「んうぉ」
アーサーはエディの首を抱えて離れたところに連れていく。これは指導というやつだろうか。
「お前、何しに来たんだよ」
少し低いアーサーの声。
「あっ、えっと」
縮こまるエディ。
エルフは耳もいいらしい。良く聞こえる。
アーサーも少しジェントルマン風を装っていたけどやっぱり体育会系だな。
シルバーウルフの他のメンバーはおろおろしながらアーサーについていった。
ジークは突然のことにキョトンとしている。
「わかっていると思うけど、ジークも煽らないでね」
「俺らはもともとそんな相手になんかしてないし・・・」
自信なさげの返事だが、いいよ、戻ってきたエディと喧嘩しなければ。
しばらくするとアーサー達が戻ってきた。
「なんか少し勘違いしていただけのようだし。ジーク。さっきの態度は許してやってくれないだろうか」
エディはうつむいたまま何も話さない。
「あ、あぁ。俺たちは別に」
「よし、それじゃ、エディ達も少し食べてくか?残り物でよければ」
「うん」
エディは、やっと声を出した。
少ないがスープとマンガ肉の残りがある。マンガ肉は表面を削いだら味が無くなるので塩味を付けていたが、塩味だけだと少し臭みが気になったためか結局残っていた。
「リュー、こいつらの面倒を見てくれとは言わないが、見かけたら少しでいいから気にかけてやってくれないか」
「そのくらいならいいですよ。ただ、ゴブリン狩りとか行かないですからね」
「あはは、本当に見かけたらって感じでいいよ」
アーサーはエディの背中をバシッと叩く。
「よ、よろしくお願いします」
手を出してくる。握手ですよね~、困ったな。
「ごめんね。男性恐怖症で、握手できないの。ハイタッチでいい?」
チョンと手のひらを合わせる。少しずつ慣らしていくのだ。
そんな事をしているとルイスとスティーブが戻ってきた。
「おっ、お前ら久しぶりだな。元気にしていたか」
「うん、今はゴブリンを狩っているんだ」
スティーブは気さくで面倒見の良い感じだ。
「じゃ、次俺ら行ってくる」
次はジークとジョンが風呂に入りに行くようだ。結局みんな二人づつ入っている。
「水が少なくなっていたら足して、ぬるくなったら石を入れるんだよ」
忘れているといけないから声をかけておく。
「ああ、大丈夫。足してきたから」
と、スティーブ。気が利くね。
鍋を作る時も中心になってやっていたし、アーサーの妹と結婚できたのはそういうところがポイント高かったのかな。
「どこに行ってたの?」
「お風呂だよ、お風呂。お前ら知ってるか?そうだ、せっかくだから、最後に入っていけ」
エディの質問にスティーブが答える。
「お風呂?」
「ああ、気持ちいいぞ」
「ところで、毎日宿代を払っていると大変だろう」
アーサーが私とジークに話しかけてきた。
「確かに」
「うちらは、パーティで家を借りているんだが、どうだい?隣が空いているんだよ」
「いくらなんですか?」
「1600Crだ。うちと大きさは同じくらいだから、多分」
「そこそこしますね。そんなお金ないですよ。確かにみんなで割れば安くなりますが」
「リューは、今日の稼ぎがあるから大丈夫だ」
「今日の稼ぎ?オークですか?」
「そう、期待していてくれ」
「はあ」
「とにかく、長くこの街にいるつもりなら借りた方がいいと思う。ま、考えてみてくれ」
「隣っていうのがなぁ」
「そうだ、今日ちょっと寄っていくか?うちらのホーム。妹も紹介したいし」
「ちょっとならいいですよ」
「よし決まりだ」
あれ?結局ジークは何も口を挟まず決まってしまったが良かったのだろうか?
お金はマリーが管理しているようだし何も言えなかったのかもしれないが。
「お姉さんと一緒の家。いいですね」
「うぉっ」
びっくりした。すぐ後ろにマリーが居た。
え、これ、なし崩し的にアイアンイーグルに組み込まれてしまうとか、それはちょっとどうなんだろう。
そんなこんなで、今日は他の冒険者の知り合いも増えた。
アイアンイーグルとシルバーウルフは今日のところは休戦といった雰囲気だが、明日はどうなるのか分からない。しかし、そんな仲を取り持ったりするつもりはない。本人同士で解決してくれ。




