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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第一章 辺境の街

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金儲けの話

 ここはポピーナの別室。

 ちょっとした会議や、従業員の休憩、個室を希望するお客様などで使用される部屋らしい。

 移動してきたのは、飲み会の4人と、暁のメンバー、そして、なぜかマリーもついてきた。

「あたしは、ここのオーナーのローラだ。さっきのアレをやろうってんだろ。なかなか盛り上がっていたじゃないか。うちは儲かっちゃいるが、冒険者は少なくなっているし、どうするかと思ってねぇ。ちょうど両隣も店舗が空いているから店を大きくすることはできるんだが」

「そこで、さっきのようなイベントで集客しようという事ですね」

 女将さんからは、なぜか自分がまとめ役のように思われているらしい。

「そうさね。スポンサー料は出せないが専用の場所を用意しようじゃないか。その代わり他のところではやらずに、うちだけでやってほしい。それと、毎日。場所は使わないともったいないからね」

「さすがに毎日は面倒くさいなぁ」

「同じ顔ぶれや対戦だと、飽きてくるかもしれねぇしな」

 トーマスが補足してくれた。

「普段は、練習場として開放して、たまに大会とか」

 アーサーの意見。

「なんか物足りないねぇ。それに、荒くれ者が増えて他のお客さんの迷惑になると困るんだよ。警備の人員にもお金がかかるからね」

「では、普段はランキング戦にしてある程度自由に戦ってもらい、たまに大会。とか」

「ランキング戦ってなんだい?」

 と、女将さん。

「誰が一番強いかという順位を決める戦い。その上位になると大会に出場できるようにするとかにしたら、ランキング戦も気合が入るかと。あと、現在のランクと直近の大会結果は、いつでも見れるように張り出しておけばいいんじゃないかな」

「それはいいな。やっぱり冒険者だと、誰が強いとかそういう話はよくするし。しかし、俺たちのように、たまにしか帰ってこれないと、あまりランキング戦に出れないが」

 アーサーも出場する気かね。

「あと、金がからむと、八百長とかあるかもな」

 トーマスは意外といろいろ頭が回るらしい。

「力の強さって、あまり変わらないし。毎回同じような結果になるんじゃないかな?」

 チーム暁のハンマーぶんぶん丸、巨体のモーガンが口を開いた。こいつは絶対に出るだろうな。

 うーん。まじめに考えだしたら、やっぱり面倒くさくなってきた。

「ちょっと待って。もうそんな細かいところは、後で決めればいいんじゃないの?そういう事が好きなヤツとか、頭が回るヤツを連れてきて」

 ここで、周りを見回してみる。

 特に口を開く人はいなかった。

 これは同意とみていいかな。

「まずは、大会を一回開きましょう。その盛り上がりしだいで、またいろいろ決めていくということで。場所は、全面協力をしていただけるということで、ここポピーナ。冒険者ギルドは、トーマスさんにお任せ。後は、商業ギルドですが・・・」

 女将さんを見てみる。

「あたしが話しとくよ」

「ありがとうございます。では次回は、ギルド関連の話の報告会ということで、いつにしますかね」

「俺たちは、明後日にはまた商隊の護衛でフォレストワースに行くんだ」

「では、明日、場所はここポピーナで」

 ふふっ。また飲んでやる。

 今日はなんだかお開きになってしまいそうな雰囲気だし。

 た、ただ酒が・・・。

「さっきは、楽しく飲んでいたところを邪魔してしまって悪かったね。今日はあたしからの奢りだ。好きなだけ飲んでいっておくれ」

「「やったー!」」

 あれ、もう一つの声の方を見るとそこにはマリーが。

 したたかだね。


 しばらくして全員にジョッキが配られると、みんなからの視線を感じる。

 あれ、これは何か言わないといけないパターンでしょうか?

 トーマスに肘で小突かれた。小突くの好きだよな。さっきアーサーにもやってた。

 自分の顔を指差してみるとトーマスはうなずく。

 なんだかトップに祭り上げられてしまったようだ。ま、人生経験で行けば確実にトップだろうね、その密度は薄っぺらいかもしれないが。いいけどね。仕事も決まっていないプータロウだし。

「では、ポピーナ協賛第一回マデリン腕相撲大会実行委員会の発足を記念して」

 みんな、「はぁ?」といった顔をしている。

 ふふふっ、つかみはオッケイ。

「かんぱい!」

「「「「乾杯」」」」

 ああ、やっと落ち着いて飲めそうだ。

 何でこんなことになったのか・・・。

 あ、そういえばサラに腕相撲をお願いしたからだった。自分のせいじゃないか。

「明日、予定がなければ、魔力草を採りに行く前にリューさんの腕前の確認と、連携の確認をしておきたい。こっちに戻ってきてからの一日目の休日に魔力草を採りに行って、一日休んでから護衛の仕事に戻りたいからな」

「ふーん。いいけど」

「ちょっとお姉さん。明日は、薬草採取に行くって約束しましたよね」

「え、行こうかなぁって言っただけじゃない?」

「約束しましたよね」

「えー・・・、それ、明後日じゃダメ?」

「明日のお昼は、どうしたらいいんですか?まだ、一匹も狩った事がないんですよ」

「ええと、必死になったら、狩れるかもよ」

 そこは自分たちで何とかしてほしいなぁ。

「何の話だい?」

 アーサーには何のことだか分からないのも当然だな。

「この子たちがあまりにも痩せていたんで、ウサギを狩って、それをお昼に食べていたんですよ。それがまあ、私が仕留めてばかりで、この子たちはまだ狩れていないので」

「ああ、明日のご飯の心配だったか。じゃ、こうしよう。午前中、君たちは薬草採取。僕たちはオークの討伐に出かける。お昼にその食材を提供しよう。もちろん腹いっぱい食べていい。その代わり、リューさんを午前中借りるよ」

 アーサーはマリーに言い聞かせる。

「あの、私たちもその討伐について行ってもいいですか?」

「ダメだ。まだ装備も整っていないだろう?危険すぎる。それに、僕たちのペースについてこれない可能性が高い」

「マリー、お願い」

 マリーはそれでもしばらく考えていたがあきらめたよう。

「分かりました。明日、午前中だけですよ」

「では、リューさん。明日はよろしく」

 そう言って手をさしだす。

 さて、困った。握手くらいはできるようにならないと、面倒くさい。

「あのですね。言いにくいのですが、私、男の人に触れられると倒れてしまうんですよ」

「え、なにそれ?」

「昔にですね。ひどいことされた経験があるらしく」

「そうなんだ。ゴメン」

「いえいえ、気にしないでください。その時のことは思い出せないので平気です」

 本当にすっぽりとエレーナの記憶が抜けている期間がある。

 思い出そうとも思わないが。

 思い出してそれを克服できたら、完治したことになるのかな。

 いや、握手ができればとりあえずそれでいい。

「というわけで、ちょっと手を出してもらってもいいですか?」

「こうかい?」

 アーサーは、握手するように手を出した。

 その指先を、人差し指、中指、親指で軽くつまんでみる。

 そのくらいなら大丈夫そうと気を緩めたら、アーサーはつまみ返してきた。

 それを素早く手を引いて間一髪でかわす。

「ちょっと!?」

 心臓がバクバクいっているんですけど。アーサーをにらみつける。

「あはは、ゴメン。大丈夫そうだったから、つい」

「次やったら、魔力草採集には絶対に行かないですよ!」

「分かったよ。ゴメン。ゴメン」

 アーサーは笑っている。こいつ絶対悪いとは思っていないな。トーマスと幼馴染って、こんなところは似なくていい。

 せっかくおいしくお酒を飲もうとしているのに、ここで吐きたくはない。

 エールをゴクゴクと飲んで少し落ち着いた。

 エールというものも慣れればどうということはないが、ビールが飲みたいなぁ。そう、炭酸だよ炭酸。あのシュワシュワっという爽快感がたまらなく懐かしい。これも少しはするんだが、1.5Lペットボトルの底に残った最後のコーラって程度のもの。まあ、冷えているだけでもかなりおいしいけどね。

 よし、ここは魔法を使うしかないでしょう。

 ジョッキを両手で包み込むように持ち目をつぶる。

 炭酸集まれ、炭酸集まれ。

 何も手ごたえが無い。

 より具体的にかな。二酸化炭素を思い浮かべる。見たこと無いが。炭素原子1つと周りに酸素原子2つ。むむむ、もっとかな。

 炭素原子は陽子が6個、酸素原子は陽子が8個、それぞれ電子2つの共有結合。

 目を開くと、ジョッキの中央に気泡ができていた。

 これは一発成功か!

 すぐさま、飲んでみる。

 そして、上がったテンションは急降下。失敗だ。

 炭酸は完全に抜けきっていた。

 あれだな、エールの中の炭酸が中央に集まって気泡となり抜けてしまったんだろう。

 もう少し柔軟に使えないものだろうか。

 もう一度、空気中の二酸化炭素を集める。

 エールの中に1つの気泡が育つ。

 溶けろ、溶けろ、溶けろ。

 すると、気泡の表面がきめ細かく泡立った。

 あ、これ嫌な予感がする。

 すぐさま、飲んでみる。

 炭酸は完全に抜けきっていた。

 手ごたえはあったから、溶けた炭酸がすぐさま中央に引き寄せられて気泡に逆戻りしたのかも。

 めんどくさい。

 椅子の背にもたれて上を見上げた。

 細かく制御しないとだめなのか?もっと簡単に使えないものか。

 いや、贅沢だな。魔法が使えるだけでもファンタジーだ。

 面白いじゃないか。

 立ち直って、ジョッキを両手で包み込むように持ち、目をつぶる。

「さっきから何をやっているんだ」

 と、トーマス。

「さぁ」

 と、肩をすくめるマリー。

 もう一度、空気中の二酸化炭素を集める。

 今度は中央の点ではなくエール全体の範囲にまんべんなく集まるように。

 しばらくするとエールの中央付近から球状に白くなった。

 よし。

 魔法を止めると白いものが浮き上がり泡になる。

 見た目はまさしくビール。

 一口飲む。

 爽快な炭酸が口内を、喉を、脳内を刺激した。

 ゴクゴクとすべて飲み干しジョッキをテーブルにたたきつける。

「カーーーー!」

 鼻の下には泡のひげ。

 成功だ!

 最高だ!

 その光景はその場のみんなが凝視していた。

「お姉さん、何したんですか?また魔法ですよね」

 マリーのその目は輝いている。

 そういえばエールを冷やしてあげたことあったよね。

 これは期待の目?

 ジョッキを差し出してくる。

 どうしようかなあ。

 ちょっと勿体つけてみたが、まあ、マリーだからね。しかたない。

 炭酸追加。

 細かい気泡が現れたらすぐに魔法を止める。

 いい感じに泡が水面に浮いてきた。

 マリーは慎重に口を付ける。

「んっ、なんですかこれ!」

 刺激に驚いて眉をしかめている。

「おこちゃまには、分からないかぁ。残念。いらないなら飲むから頂戴」

 手を出すとジョッキを引っ込めた。

「いえ、これは私が飲みます」

 ひっこめたジョッキをアーサーがのぞき込む。

 マリーはジョッキを抱えた。

「一口」

「ダメです。あげませんよ」

 そんなマリーも泡のひげがついている。

 そういえばと、手の甲で自分の口を拭ったら脇から声がした。

「はいよっ。お替りだろう?」

 テーブルに新しいジョッキが置かれる。それは女将さんだった。

 プロだねぇ。仕事が早いよ。

 さて、炭酸追加。

 ついでにもう少し冷やす。

 そして一口。

「カーーーー!」

 いいねぇ!

 ちょうどいい。

 これなら何杯でもいけそう。

 ゴクリ。

 生つばを飲み込む音がどこからか聞こえてきた。

「ちょっと味見させてもらってもいいかい?」

 そう声をかけてきたのは女将さん。

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 ジョッキを受け取り一口飲む女将さん。

 その時、カッと目を見開くとさらにゴクゴクゴク。

 半分くらいを飲み干した。

「カーーーー!ははははっ、言いたくなるねぇ。この味は」

 満面の笑みだった。

 テーブルに戻されたジョッキ、それを奪い去るトーマス。

 ゴクゴクゴク。

 躊躇なく口を付け、そのまま飲み干す勢いだ。

「あっ、ちょっ。コラ!」

 ジョッキと手をつかんで無理やり引きはがす。

 もうエールは少ししか残っていなかった。

 くそっ、この野郎。

 油断も隙もない。

 トーマスは飲んでいた時の態勢のまま斜め上を見つめていた。

 ゲフッ。

 はしたなくゲップをしてから一言。

「うまい」

 とつぶやいた。

「僕も味見させてもらってもいいかな?」

 アーサーに続いて暁の面々も興味津々のようだ。

「あ、あの、私も」

 遠慮気味のサラも立候補。

 もう少ししか残っていないし、ここはレディファースト。

「どうぞ。最初はサラさんで」

 と、サラにジョッキを渡した。

「ありがとうございます」

 サラはジョッキを持ち変えると、トーマスが口を付けた場所ではないところから一口飲む。飲み終わったら自分の口を付けた部分を親指で拭いた。力自慢だけかと思ったのに以外にも女子力高い?

「おしいしいですね。まるで違う飲み物みたいです」

 そのジョッキはアーサーに渡り、そして、飲み干された。

「おい、アーサー!てめえ何やってんだよ」

 あれは・・・そうだ、ルイスという剣士にヘッドロックにされていた。

 まあ、仲がよろしいようで。

 暁の面々は放っておこう。

 そこに、いつの間にか席を離れていた女将さんが戻ってきた。

 ドン。

 テーブルにはバケツが。いやピッチャーか?

 エールがなみなみと入っている。

「ちょっとお小遣い稼がないかい?」

 女将さんの悪い笑顔を見た。

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「お小遣い、ほしいです」

 手を出すとがっちりと握手。

 早速バケツをキンキンに冷やす。

 ここのエールは冷えているがジョッキに移すと少しぬるくなる。このくらい冷やせばいいだろう。

 そして炭酸追加。量が多いので、少し時間が掛かる。

 ニヤリ。女将さんの目が輝いた。

「このエールが欲しい奴はいるか?一杯銀貨二枚だよ」

 高っ!えっ、銀貨1枚1000円くらいの感覚だったから一杯2000円で売るの?

 すると暁の4人は躊躇なく金を出した。

「た、高いけど、俺も」

 と、トーマス。

 早くも5杯売れたよ。

 Bランクというのは相当儲かるらしい。

 バケツから、ひしゃくで汲んでジョッキに注いでいた。サーバーって無いのか。当たり前だな。

「ほい、あんたの取り分。あたしゃ、むこうでもうちょっと稼いで来るさね」

 目の前には、銀貨が5枚置かれていた。


 しばらくすると女将さんが戻ってきた。

 そして目の前には、さらに銀貨が25枚積みあがる。

「え、こんなに?」

「こっちもしっかり儲けさせてもらったからね」

 もう仕事はこれでいいんじゃないかな。

「まだ作ります?」

「いやいや、これはあんたが来てくれた時に限定で出そうかと思ってね。どうだい。一回で銀貨30枚。ただし、他の店ではやらないでもらいたいね。もしくは、大会の時だけの特別という手もある。評判は上々さ」

 女将さんとはがっちり握手した。

 こんな儲け方があると知っていたら魔石売るんじゃなかった。

 マリーはつぶやいた。

「魔法ってすごい」

 サラはつぶやいた。

「転職しようかしら」

 トーマスはつぶやいた。

「結婚してほしい」

 きもいのでグーパンチしようかと思ったが、ギリギリで思いとどまった。


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