SS:ナタリー
Side story
私は地方の都市で商いをしている家に生まれた。
運良く魔力が少しあったので、魔法学園に通う事にした。
選択は錬金科。これで卒業できれば職に困ることは無い。実家でポーションを売ることもできるようになる。
魔法学園に通う人たちは、貴族や商人等、この国の上流階級が多い。
その人たちと交流を持つことができる魔法学園は、商人にとって非常に魅力的な場所なのだ。そのため私の両親も背中を押してくれている。
でも、最大の目標は伴侶を探すこと・・・。
頑張らなくちゃ。
試験の前日に王都に入り、ホテル暮らしが始まった。
試験はあっという間に終わり、合格発表までの三日間が暇になる。
初めての一人暮らし。そして試験が終わった開放感で、思わず散財してしまった。
商人の娘としてあるまじき失態。仕送りが届くまでは超緊縮財政だ。
そのため合格した当日、すぐ寮に入った。
寮に入れば食事が出るので飢えることは無い。
授業が始まるまで一ヶ月以上あるので、入学手続き後、いったん家に帰る人も多い。
でも私は帰りの旅費まで使い込んでしまった。
学費を別にしておいてホントよかった。
寮の部屋で荷物を整理していると、私と同じく当日に寮に入る人が来た。
寮には個室もあるが高いし、空きができても上級生が優先されるため、新入生は相部屋になる。
どんな人かな。
ワクワクしながら扉を開けると、案内役の上級生の後ろにいたのは、長い髪の金髪美女だった。
負けたと思った・・・。でも、胸では勝っているもん。
騎士風の服を着ていて背も意外と高く、剣を持っていたら見た目は完全に騎士なのに、持っているのは部屋の入口につかえそうなほど大きな弓。
そして、魔法適正の高いエルフなのに、選択は何故か魔道具科。
不思議な人だった。
話してみると気さくな人で良かった。
無口な人だったら、寮生活がどうなっていた事か。
でも、私のお母さんより年齢が上なのに呼び捨てにするのは、かなり抵抗がある。
見た目はそんな歳には見えないのだけど。エルフって得だなぁ。
その後、合格祝いと称してスイーツを食べに行く事になった。
甘いものは安くない。お金がピンチだというのに大丈夫だろうか。でも断れないし。
連れて行ってもらったお店は、大きな通りに面した高級店だった。
見たこともないようなスイーツが並んでいて、客が着ている服も仕立ての良いものばかり。
値段を聞いたら案の定、私の手持ちでは足りなかった。
困っていると特別に奢ってくれるというリュー。
とても気前のいい人だった。
冒険者はとても儲かるお仕事なのかしら。
それを聞いてみたら、リューの笑顔は一瞬にして曇ってしまった。
触れてはいけない事だったのかしら?
今後は気を付けましょう。
リューはその他にも服や魔道具をポンポンと買っていく。
よく見てみると商業ギルドのシルバーカードを使っていた。
確か冒険者だという話だったのに、なぜ商業ギルドのカードを?
それもシルバーカードは、かなり信用が無くては発行してもらえないカードだ。例えギルドの口座にお金が無くても買い物できてしまうのだから。
私の実家も、やっとシルバーカードになったからと、盛大にお祝いしたのを覚えている。
最後に冒険者御用達のお店に立ち寄った。
私の住んでいた街は魔物も少なく冒険者もあまりいない。
そのため、こんなお店には初めて入ったので、リューが店員と話している間にいろいろと店内を見て回っていた。
そこに聞こえてきたとんでもない会話。
金属鎧より丈夫な鎧を修理中って、いったいどんな攻撃を受けて壊れてしまったのか。
それも毒付きだったとか。
想像もできない程、恐ろしい話だった。
・・・生きてきた世界が違うよう。
そして一部分を修理するだけなのに4000Crだって。
では買った時はいくらだったのだろうか。
前から冒険者は雰囲気が怖いなと思っていたけど、そんな生活を送っていたら、心が擦り切れてしまっても不思議では無い。
冒険者は儲かるのかと聞いた時に、『命を張れば』と言っていた意味が少し分かったかも。
もしかしたら、恋人とか親しい人が死んでしまったとか・・・、それで新しい生活を求めて学園に来たのかも。
でも一番怖かったのは、店の奥から聞こえてきた女将さんと思われる女性の怒鳴り声でした。
あの声を聴いても平然と交渉しているのは、年の功なのでしょうか。
おっと、これは失言になるのかも。
言葉には気を付けないと。
ポッチャリさんの事もありましたし。
*****
夜寝るとき、シャワーから帰ってきたリューは、つやっつやのパジャマを着ていた。
この光沢は知っている。絹だ。輸入品で超高額。
きっと上下で5000Cr以上するに違いない。
私もこんなのを着て寝てみたい。
よし、狙うぞ、玉の輿。




