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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第三章 魔法学園

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試験

 ついに試験の日がやってきた。

 階段を数段上がり、学園の門をくぐる。

 石畳の道を他の受験生と共に歩いていく。

 左右の植え込みの奥は土がむき出しのグラウンドになっていた。

 キョロキョロと辺りを観察しながら歩く。

 近くにポッチャリはいなかった。

 いよいよ校舎が近づいてきたところで、また階段を上がる。

 左右には手入れの行き届いた庭園。

 そして校舎に入り受験票を見せると試験会場を指示された。

 会場は普通の教室。前面に教壇と黒板があり、それを机と椅子が階段状になって配置されている。

 これから三年間、学ぶ事になるかもしれない場所。

 雰囲気は大学っぽい。

 この学校も賢者様が作ったんじゃないだろうか。


 午前中の筆記試験はつつがなく終わり、場所を移動し食堂でお昼を食べる。ここは無料だった。

 味は可もなく不可もなく、なんて言ったら贅沢(ぜいたく)だろう。市中で食べれば銀貨が飛ぶようなものだろうし。


 そして午後の実技試験に臨む。

 グラウンドに集まり、試験官の前で順番に魔法を使っていく。

 少し離れた場所には的が置いてあり、ファイヤアローのような攻撃魔法をその的に放つ者もいる。攻撃魔法を使えるのは少数で、ほとんどは生活魔法程度のようだが。勿論(もちろん)その場合は的は関係ない。

「次、176番。リュー」

「はいっ!」

 印象が良くなるように元気に返事をして、試験官の近くに走って行った。

「では、得意な魔法を全力で使ってみなさい」

「あのー、弓ってありますか?」

「弓? 弓は無いな。剣と盾なら隣の剣技の会場から借りてこられるが」

 剣技の試験があるのは、魔法騎士科だけだ。

「では」

 生活魔法の着火を使う。

 手の平の上にロウソク程度の炎が揺らめく。

 試験官の顔色を(うかが)うと、どうも(かんば)しくない。

 おかしいな。前の人はこれで通っていたはずだが。

「他には?」

 仕方が無いので、次は水魔法。手の平から水が滴り落ちる。

「他には?」

 えっ、まだやるの?

 疑問に思ったが、試験官に逆らうわけにも行かない。

 光源魔法。普通の光源魔法より少し白い光が手の平の上で(またた)く。

 でも昼間だから目立たない。

 試験官の顔色を横目でうかがうと、眉毛(まゆげ)がピクリと動いたような気がした。

 ドオーン!!!

 爆音に驚き振り返ると、となりで試験を受けていた子がファイヤボールを放ったようだ。

 入学前でこんな魔法を使えてしまうのか。凄いな。

 (しばら)く見とれていると、ツインテールの髪を(ひるがえ)した女の子は、気の強そうな瞳でこちらを(にら)んできた。

 え!?

 そして、次にはそっぽを向いて歩いて行ってしまう。

 ええーっ!!!

 なにこれ。入学前からライバル視されたのだろうか。

 学園には勉強しに来たのであって、バトルなんてしないよ。

「ほら、あのくらい派手なのない? 君の全力が見たいんだ」

 いや、そんな事言われてもな。

 攻撃魔法なんて知らないし、弓は無いし。

 雷撃魔法も見た目は地味だから「他には」と言われてしまいそう。

 そう言えば、危ないかもしれないからと、やっていなかった事を思い出した。

 的の近くまで歩いて行く。

 すると試験官も付いてきた。

「危ないですよ」

「近くで見ないと分からないじゃないか」

 試験官は目をキラキラさせている。なにか変。

 仕方がないので無視して、空中に防御魔法をお(わん)型にして発現させる。手でなでるようにすると、ある程度の形は再現出来る。

 そして、その中に水魔法で水を溜める。

 そして、制御限界の2m離れる。

「ほうほう。ふむふむ」

「危ないですから、私の後ろに下がってください」

 空中の水を近くから観察していた試験官を下がらせる。

 岩みたいなものがあれば安心だったけど無いので、防御魔法を目の前に展開する。分厚く念入りに魔力を込めながら。

 さて、これはぶっつけ本番の魔法実験だ。水蒸気爆発の。

 派手なのってこれくらいしか思い浮かばなかった。

 魔力を限界まで滞留させていく。体がほんのりと発光する程度で止める。ふむ、この程度なら遠目では分るまい。

 試験官をチラリと見ると、ワクワクが止まらないといった表情でこちらを見ていた。

 あ、こいつはきっと魔法オタクだ。

「それじゃ行きます」

 放出した魔力を水に集中し、瞬間的に温度を上げる!

 ドーーーン!!!

 爆風で髪の毛が乱れる。

 実験は大成功した。防御魔法も爆発に耐えきった。よしよし。

 魔法の発動直前、「待ちなさーい」という声が聞こえたような気もしたので、声のしたほうを確認する。

 すると、すぐ近くに女の人が倒れていた。

「え!?」

 この人は、隣で試験を担当していた試験官の人。

「いたたた・・・」

 ゆっくり立ち上がる女の試験官。その髪の毛は乱れに乱れ、服は土にまみれていた。

 なぜこんなところにいるのか、さっぱり意味が分からない。

「ケイン教授、何やっているんですか!」

 女の試験官は、男の試験官に食ってかかる。

「何って試験だけど」

「彼女、さっき魔法使っていましたよね」

「そうだけど、それじゃ実力がわからないじゃないか」

「彼女は魔道具科なので、実力は関係ないんですよ!」

「エルフの魔法を見てみたいと思わないかい?」

「思いません」

「そう? それにしては、ずいぶん気にしていたようだけど」

「教授が何かしそうだったので監視していたんです!」

「そんなことより聞いてくれよ。彼女、無詠唱にトリプルキャスト、そしてオーバーブーストだよ!」

「ですから、オーバーブーストなんて危ない事をしそうになったら止めてください!」

 ケイン教授と呼ばれていた私の試験官は、興奮冷めやらぬ様子で女の試験官と話している。

 もしかしなくても、やらかした感じだろうか。

 順番を待つ受験生たちは、全員がこちらを見ている。試験が中断しているようなものだし当然だな・・・。あぁ、恥ずかしくて頭がクラクラしてきた。

 こちらを無視して言い争う試験官。仕方がないので、こちらから声をかける。

「あの。もう試験は終わりでいいでしょうか?」

「はい。OKです。最後に魔力量の測定がありますので、また校舎のほうに戻ってください」

 女の試験官が対応してくれた。


 その場を歩いて立ち去っても、まだ二人の声は聞こえてきた。

「注意事項に『(あお)らないように』と書いてあるのに何しているんですか!」

 振り向くと、手に持ったバインダーを指でつついている女の試験官が見えた。

「煽ってなんかいないよ。それに流血もしていないから大丈夫」

 ちょっと待て。なんだその会話は。『流血』だと?

 どうしてその単語が会話に出てくるんだ。

 まさか冒険者ギルドの推薦状か!?

 ヘクターさんにお願いしたのに、書いたのギルバートじゃないだろうな!

 生徒の間に変な噂が流れないことを祈るのみだ。


 *****


 魔力量測定の会場に行き、受験票を見せる。

「176番。リューさんですね」

「はい」

 どうせ実技は試験結果に関係無いはずだから、今度こそ手を抜こうと考えていた。

「では、リラックスしてください」

「はい」

「魔法は使わないでくださいね。常時発動しているものはありますか?」

「あ、防御の魔法陣があります」

「そのくらいなら大丈夫です。魔力の操作もしないでくださいね」

「はい」

魔力隠蔽(まりょくいんぺい)とかしていますか?」

「なんですかそれ?」

「知らないなら大丈夫です」

 何をするのか。次の言葉を待っていると・・・。

「リューさんは凄いですね。宮廷魔導師レベルの魔力保有量です。Aと書いてもいいんですけど、桁が違うから・・・そうだ! AAって書いておきましょうか」

 魔力量測定は、いつの間にやら終わっていたらしい。うそでしょ。

「普通でお願いし・・・」

「今日は試験お疲れさまでした。合否の結果は三日後に門の近くに貼り出されます。発表は番号になりますので、それまで受験票はなくさないようにしてください」

 声が小さすぎて、流されたような気がする・・・。


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