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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第二章 王都への旅路

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SS:親玉

Side story

 俺は、昔のことを思い出していた。


 それは本当に些細(ささい)な事だった。

 酒場で絡まれていた女性を助けた。

 酒も入っていたし、Bランクになったばかりで浮かれていた。

 絡んでいたヤツが、評判の悪い貴族の三男であることも知らずに。


 次の日から人生が変わってしまった。

 報復を恐れたパーティから追放され、宿屋からも追い出された。

 何年も泊まり続け、やっとのことで宿屋の娘ライラと婚約までしたというのに。

 おまけに無実の罪で衛兵に捕まった。

 そのとき、俺を笑いに来た貴族の三男を思わずぶん殴って逃走してしまった。

 それが始まりだ。


 北部で盗賊を繰り返していたが、貴族の三男は行方不明になったらしい。ライラも別の男と結婚してしまった。もうこの辺にとどまる理由は無い。ちょうど警戒が厳しくなってきたところだったので中央に移動した。

 三男はできれば俺が手を下してやりたかったが、いろいろな方面に恨みを買っていたらしいからな。貴族様のご威光が届かない闇にでも足を踏み入れてしまったのだろう。


 中央に行くと南部でのサイクロプス討伐のうわさが流れてきた。

 そのお宝をいただこうと網を張っていたが、騎士団の警戒が厳重でなかなか手が出せない。

 ところが、公都アップランドより南は冒険者の護衛しかいないという話を聞いた。


 そのまま南部へ移動していくと、同業者と出くわすことが多くなる。

 みんなサイクロプス狙いだった。

 下手(したて)に出るようなところは吸収し、敵対するようなら容赦なく叩き潰した。

 するといつしか大所帯となっていった。

 大所帯となると食料の問題も出てくる。必要最低限に村々を襲って食いつないでいく日々。

 元々無駄な殺しはしない主義だったが、これだけ集まれば統制も効かなくなってくる。それに討伐隊を組まれると厄介なので、目撃者は全員殺す事になってしまった。


 やっとのことで山岳地帯にたどり着いたが、この辺は村もなく、食料が尽きてしまった。

 アップランドからマデリンへの馬車には食料が多く積まれているという情報を得て一度だけ襲ったが、それが失敗だった。このルートも警戒が強くなり、単独での馬車の往来が極端に少なくなる。

 だが、手をこまねいているわけにはいかない。待っている間にも食料は乏しくなっていく。


 ある夜、マデリンに送り込んだ手下がこっそりと帰ってきた。

 輸送隊は近くまで来ているが、護衛の中にBランクパーティが2つもあるという。

 俺は悩んだ。護衛の総数は50人ほど、こちらは100人ほどいるので数では勝っている。しかし、こちらはDランクだった者が多い。普通に戦えば負ける可能性が高くなる。

 そこで、輸送隊を分断し、時間差で各個撃破する方針に決めた。後方の馬車には逃げられてしまうかもしれないが、サイクロプスの素材を運んでいるはずのギルドの馬車は先頭という話だ。それさえ確保できればいい。さらに毒に詳しい奴がいたので、それも使うことにした。

 4倍の人数での包囲殲滅。それを2回。それなりに被害も出るだろうが構わない。もともと、こんな人数の盗賊団は俺の手に余る。お宝を山分けしたらすぐに盗賊団を解散することにしよう。隣国に魔物素材を密輸すれば、かなり高額で売れると聞いた。どこかで人生をやり直すこともできるだろう。



 そして、決戦の時はやってくる。

 最初は順調だった。

 輸送隊に紛れ込ませていた仲間は、うまく分断に成功した。


 そのまま応援に来た味方の振りをしてBランクの1人を殺せたし、手を焼いていた女の魔法使いを人質にしたことで、残り2人のBランクのヤツらは動けなくなった。

 全員縛ってから止めを差したかったが、逸った仲間が武器を手放させたところで切りかかっちまった。それを見た魔法使いが崖下に身を投げ、それを追って残りの1人が崖にダイブした。結果的に、Bランクで戦えるヤツがいなくなったのだから、そこまでは良かった。


 戦況を確認すると、分断したはずのもう一つのBランクの連中が意外と早く応援に駆けつけてきていた。

 しかし、人数は2人だ。

 その2人は、仲間の中でも腕の立つ3人が中心となって抑えていた。

 俺が駆けつければ、それも崩せるだろう。勝ち筋が見えてきた。


 そんなとき山の上から、えも言われぬプレッシャーを感じた。

 見上げると金髪の悪魔がいた。

 そして、次々と仲間のアーチャーが射貫かれていく。

 速い!そして正確無比な射撃!

 死角になって見えないはずの場所にいた仲間すらもやられた。

 化け物か!

「おいっ! 気をつけろ! 山の上から狙っているヤツがいるぞ!」

 警告を発したが、その後も次々と仲間が倒されていく。

 このままでまずい。士気が保てない。

「何人かで、山の上の奴を排除してこい!」

 誰も行きたがらない中でその意を汲んだのは、腕の立つ3人だった。

 俺は3人の代わりにBランク2人の抑えに回る。

 1人でなら無理だが、数の優位もあるし、その2人以外の冒険者は既に及び腰だ。防御に徹すればなんとかなる。

 金髪の悪魔は3人に弓が効かないと悟るとすぐさま逃走を始めた。

 仲間の方へ走り出したようだがそれは好都合。

 冒険者達の後ろに逃げるなら、挟撃できる。

 勝利を確信したとき、信じられない事が次々と起こった。

 金髪の悪魔が馬車の荷台に飛び乗ると、ナイフを片手に格闘戦を繰り広げる。

 ここまで近くで見ればよく分かる。耳の特徴的な部分は隠れて見えないが、華奢な体型、そして常人離れした美形からして女のエルフだ。

 それが実力のある仲間を一撃の下に(ほふ)っていく。

 あの細腕で、信じられない。

 ヤツはアーチャーでは無いのか!

 目の前の戦いに集中しなければならないのに、気が散る。

 何故おまえは俺の目の前で戦っている。それも目立つ荷馬車の上なんかで。

 そのため何度か剣撃を鎧で受ける事になった。

 やがて、ヤツはゆっくりと立ち上がった。

 おかしい、倒された仲間は2人。俺の次に実力のあった仲間はどうした。先頭で追っていたはずなのに姿が見えない。まさか、ここに辿り着く前に倒されていたのか?

 そんなヤツに仲間のアーチャーが放った矢が2本命中した。

 しかし、弾かれる。

 その革鎧はうっすらと発光しているのが分かった。防御魔法だな。

 これでは頭に当てない限り毒矢でも効果は無いだろう。

 その状況を肌で感じた冒険者達は息を吹き返し、俺達の仲間はじりじりと後退し始めた。

 もう勝ち筋は無い。

 どうやって逃走するか考え始めたとき、乾いた音が響き渡り、アーチャーの1人が倒れた。

 これは矢に雷撃を乗せているのか!

「払うな! 躱せ!」

 その忠告も空しく、また1人の仲間が地に伏した。

 次は俺か。

 矢を構えたままの姿勢で、全身が発光し始めたので嫌でも目に入る。

 そう言えば、エルフだったな。

 豊富な魔力量をこれでもかと見せつけやがって。

 少ない魔力をちまちまとやりくりしながら戦っている俺達が馬鹿らしく思えてくる。

 さっきの格闘戦も大量の魔力で身体強化にブーストをかけていたんだろう。

 ヤツの射線に入らないよう、Bランク2人の影に回り込みながら戦っていたが、一瞬仲間の死体に足を取られた。

 そう、もう俺の周りの仲間は全て倒されてしまっていた。

 その隙を見逃さずに、Bランク2人は射線を開ける。

 ああ、ヤツの雷撃が来る。

 雷の特性は知っていた。そういう魔法を使う者もいる。

 地面に剣を突き立て、矢を弾きながら雷撃をやり過ごしたのだが、Bランク2人は待ってくれなかった。足と指をやられる。

 後ろに回り込まれたが、まだなんとかなる。

 エルフの矢筒は空だった。さっきの矢が最後の筈だ。

 足の傷は浅い。

「まだまだーーー!!!」

 自分を奮い立たせ、体当たりでもして活路を開こうかと思ったときだった。

 Bランクの1人が変な事を言った。

 その言葉は頭に残っていない。

 しかし、嫌な予感がして振り向くと、ナイフが眼前に迫っていた。

 そのナイフを間一髪、手甲で弾き飛ばす。

 そのとき目にしたのは、金髪悪魔の微笑みだった。

 俺は死を悟る。


 気が付けば、その視界は光に満ちあふれていた。

 長い走馬灯だったな。


 ああ、ライラ・・・。

 もう一度会いたかった。


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