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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第二章 王都への旅路

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汗じゃ無かった

 親玉をやられた山賊は、一斉に逃げ始めた。

 それを見たアーサーは、たまたま近くを逃げていた山賊の1人に素早く駆け寄り、素手で昏倒させる。

「ルイス。ここは任せた。情報はコイツから聞き出してくれ。僕は逃げた族を始末してくる」

「気をつけろよ」

 ルイスが軽く手を上げて了承を伝えると、アーサーは数人の冒険者と共に山賊を追っていった。

 そのルイスの元へ行こうと、荷馬車を飛び降りると、声をかけられた。

「よっ。お疲れさん。山賊はなんとかなったようだな」

 声の方を振り向くと、スティーブが駆け寄ってくるところだった。

「遅いよ」

「まあ、そう言うな。これでも急いできたんだよ」

「それにしてもこりゃひどいな。『女神の微笑み』は、どうしたんだ?」

「何それ」

「俺達以外のBランクパーティだ。見かけないんだが、まさかやられちまったのか?」

「さあ? 私が見たときには、強そうなのはアーサーとルイスくらいしか居なかったけど」

 2人で辺りを見回すと、応援に駆けつけたはずの冒険者達の多くが、こちらを見て(たたず)んでいた。倒れている仲間に駆け寄って治療をしている冒険者もいるのだが。

「おい! 逃げた山賊を追ってくれ! お前らいいのか? 毒を使うような凶悪な山賊が生き残っていても」

 スティーブの言葉で、ざわつく冒険者達。

 そして、やっと10人くらいがアーサー達の後を追い始める。

「残った者は、まず負傷者の手当だ」

 スティーブは、また指示役になるらしい。

「そこっ! 剥ぎ取りなんて後にしろ!」

 親玉の死体に集る数人を見つけて叱咤(しった)する。

 親玉は金属鎧を着ていたし、装備も良さそうだったからその気持ちは分かるけどね。

「私も追った方がいい?」

 スティーブの指示が途切れたのを見計らって聞いてみる。行きたくないけど。

「アーサーが行ったし大丈夫だろ」

 返事が横から帰ってきた。ルイスだ。

「本当に大丈夫か?」

 スティーブは少し懐疑的だ。

「捉えたヤツから聞き出したんだが、そこに倒れているのが頭で、リューが倒した3人と、最後まで粘っていたアーチャーの1人が幹部だったらしい」

 通りで、矢は払われるし、足は速いし、しんどいと思った。

「実際に、その5人は手を焼いていたんだ。助かったよ」

 と、手を差し出してくるルイス。

「どういたしまして」

 そのとき、ルイスの手は少し震えていた。

「ああ、すまない。かすり傷なんだが、少し痺れて・・・」

「それ毒だろ。ちょっと待ってろ。なんとか毒消しを調達してくる」

 スティーブは商人たちの方へ駆けていった。


 毒消しポーションは錬金ギルドの輸送依頼の品だったため、交渉は困難だったらしいが、スティーブはなんとか必要量を確保してきたようだ。

 ポーションを使用してルイスを処置した後に、他の冒険者達も治療して回るスティーブ。自分は傷口を洗ったりしてその治療を手伝った。


「それにしてもまた派手に立ち回ったな」

 怪我人の治療もひととおり終わった頃、スティーブのトーンが下がって雑談モードとなった。

「別に目立ちたいわけじゃ無くて。あそこが射線も通ってちょうど良かっただけ」

「ああ、それもそうなんだが・・・、ナイフで戦ってたろ」

 荷馬車の上で戦っていた話じゃ無かったらしい。なんだか少し歯切れの悪いスティーブ。

「なに? ナイフ使えって言ってたから使ったのに」

「いや、また盛大に返り血を浴びたなと思ってな」

「え゛!?」

 右手の甲を確認する。見難いが巨人の革に擦れた血の跡があった。

 きっと敵の首にナイフを差して放り投げたときだ。あの後、汗を右手の甲で拭ったつもりでいたが、返り血だったとは・・・。

 治療の手伝いに声をかけると二度見される事が多かった。普段からそういう事は多いのだが、今回は特に。原因はこれだよ。また変な噂が広まってしまう・・・。

 ハンカチを濡らして顔の血を拭き取る。

「気が付いていたなら、もっと早く教えてよ」

 スティーブに文句を言う。

「いや、ほら、やることいろいろあったし、忙しかったから」

 スティーブは言い訳をした。

「一言で良かったのに」

「俺達冒険者は、返り血なんて日常茶飯事だろ。あまり気にする人はいないよ」

「そうね。ブラッディオーガなんて呼ばれ方をしなければ」

 スティーブを睨み付けた。

「待て待て、言っておくけどあれは俺が付けたんじゃ無いぞ」

「じゃ誰?」

「そんなの知らないよ」

 スティーブは、両手を挙げて降参していた。

「はぁ・・・。ねぇ、なんでオーガなの? 見た目じゃないよね。鬼のように怖いから?」

「ああ、俺の予想だが・・・、腕相撲大会でマルルダに勝ったからじゃ無いかな」

「力が強いって事?」

「それもあるが、マチルダに大金を賭けていた奴らから恨みを買ったとかかな。マチルダは女オークって言われているし」

「はぁ・・・」

 オークより強いという意味か。ため息が止まらないよ。

 最後の大会で優勝していたら、またどんな呼ばれ方をしていた事か。

「ところで、崖下に倒れていた男は何をしたらあんな事になるんだ?」

「崖下?」

「カエルみたいに倒れていて、股間と口から大量の血が・・・」

「わー! 聞きたくない、聞きたくない!」

 思い出してしまった。あれは自分でもエグいと思ったから思い出したくなかったのに!

「な、なんだよ急に。子供みたいに(わめ)くなよ」

「気分が悪くなるから、聞かないで」

「ははっ。分かったよ」


 日が傾き始めた頃、アーサー達は戻ってきた。山賊のアジトは、ここから1時間以上歩いた場所にある洞窟だったそうだ。おそらく鉱山の試掘跡とのこと。

 捕まっていた女性達を5人救出し、山賊達が溜め込んでいた戦利品と、山賊の首を10個ほど持ち帰ってきた。

 今回の襲撃では冒険者側もかなりの被害が出た。Bランクパーティ『女神の微笑み』の1人を含む、12人ほどが帰らぬ人となった。

 山賊達で生き残ったのはいない。アーサーが昏倒させた山賊も情報を聞き出した後に怒りに燃える冒険者達に殺されてしまっていた。

 今回、犠牲者のほとんどは車列の前半にいた冒険者達で、後半の冒険者とはかなり温度差があり、溝ができてしまったような感じだ。

 その中でも真っ先に救援に駆けつけて形勢を逆転したアーサーとルイスそして自分に対しては感謝の気持ちが高いようで、ことあるごとにお礼を言われた。

 やはりBランクともなると、Cランクとは隔絶した実力差があるようだ。

『女神の微笑み』が倒した山賊は40人以上。そして『暁』が倒した山賊も40人以上。他のCランク冒険者達が倒した山賊は10人そこそこだ。

 自分は、その『暁』の中でも幹部4人を含む16人を倒して、親玉を倒すときにも良いアシストをした。目立たないわけが無い。やっちまった感がある。


 矢は全て回収した。使える矢は10本ほど、他の矢は折れていた。付着していた血は綺麗に洗い流した。というのも全ての矢を使ってしまったので、再利用しないとこれから先の道中で護衛ができない。山賊が使用していた矢も残されていたのだが、毒矢だし。何の毒か分からないし、水で洗い流せるのかも不明。そんなものに触りたくも無い。


 山賊の死体は首を切り取られ、持ち物・装備を全て剥ぎ取られた後に谷底へ落とされた。

 仲間の死体は持って帰ることになり、ここでも自分の冷却魔法が活躍した。朝昼晩と暫くの間は冷凍し続けなければならないが、物が物だけに精神力をゴリゴリと削られているような気がする。特に山賊の首、いくら袋に入っていて見えないとしても・・・。

 追撃で倒した10人を含めた山賊の総数は、100人超。こんなに大きい集団はめったにいないそうだ。

 ここまで不運が続くと、次は良い事があると信じたい。


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