表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第二章 王都への旅路

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/115

山賊(決着)

 尾根に沿って街道の方へ坂を駆け下る。

 味方と合流するにも乱戦の中に突撃するのは嫌なので、一度街道に出てから味方の後ろから合流する事にする。

 しかしそのとき問題となるのは、後ろについてくる3人だ。味方が後ろから挟まれる形になってしまう。

 だが、後続の馬車から来た応援部隊が渋滞しているので、あらかじめ知らせておけば対応は可能なはず。

「アーサー! ルイス! 今から合流するからよろしく!」

 大声で叫んだ。

 こんな感じでいいんじゃ無いだろうか。危機感は感じないし、大声で他の冒険者にも聞こえたはずだ。後ろから付いてくる敵は見えるはずだが・・・、気が付くよね・・・、多分大丈夫。結構な人数がこちらを振り向いていた。特に応援に来たと思われる後方に(たむろ)する冒険者達が。

 疾風(しっぷう)のように坂を駆け下るが、後ろの3人の敵も負けていない。

 木々の中を走り抜けるのは自信があったのに、こいつら何気にレベルが高いのか!?

 街道は坂を切り崩して作ってあるので、道のすぐ上は結構急な崖となっている。

 10m弱くらいの高さがあったように見えたが、一気に飛び降りる。

 空中で防御魔法陣にしっかりと魔力を流し込んでおく。

 そして、身体強化魔法を発動して着地した。

 すぐに崖上を仰ぎ見る。

 分かっていたことだか、すぐ後ろを走っていた敵は自分の動きをトレースして同じように飛んでいた。

 自分に向かって飛び降りてくる敵。

 殺意のこもった矢が飛んでくるような感覚を覚えて防御魔法で防ぎたくなった。

 矢とは違う人間という質量を防御魔法で防げるのか?

 そう思ったとき、ひらめいた。

 防御魔法の範囲を絞ったら、かなり固くできるのでは無いだろうか?

 そして、形を尖らせたら・・・。

 相手が着地するであろう地点の1mほど上に防御魔法を展開した。

 それは目の前、手を伸ばし0距離で発動させたので初めての形だったが再現性も高く、それに強固になったと思う。

 相手は空中で頭上に剣を構えていた。おそらく着地と同時に振り下ろすつもりなのだろう。

 はっきり言って怖い。

 ギリギリで(かわ)すなんて余裕は無く、さっさと飛び退いたら、相手は振り下ろしを諦めて普通に着地を試みた。

 ズシャッ!

 足から着地したのは良かったが、そのままの両手を地面につき、頭まで地面に叩き付けて軽く跳ね上がった。

 そして、そのまま動かなくなる。

 口から流れ出る血。そして、こちらを見つめたままの目が怖くて目を逸らした。

 確実に戦闘不能になっただろう。

 その間にも次の山賊が着地する音が聞こえてきた。

 まずい、わずかな時間であるがロスした。急がなければ。

 仲間の冒険者の方へ駆けだしたが、山賊もそれを阻むように走り寄ってくる。

 頼りにしていた仲間の冒険者達はこちらを見ているのに、その場を動こうとしない。

 なんでなんだ!数で取り囲んで倒してほしいというのに!

 仲間の冒険者の隣には、荷馬車があった。山賊と接敵する直前に大きくジャンプし、荷馬車に飛び乗る。

 そこでふと気が付いた。

 相手もこの荷馬車に飛び乗ってくるとしたら、さっきと同じ事ができるのでは無いかと。

 後ろを向いて尖った防御魔法を設置した。

 そこに予測通りに飛び乗ってくる山賊。

 すると山賊の喉に音も無く穴が開いた。

 山賊は見えない何かを取ろうとしたが、空気の塊なので摩擦抵抗はほとんど無い。山賊は体を反らす事でそのトラップを脱出したが、握りしめられていた防御魔法は過負荷で砕けた。

 荷馬車の影に消えていく山賊と入れ違いに、三人目の山賊が剣を頭の上に構えながら飛び乗ってきたので、バックステップで距離を取ろうとした。

 荷物の上にはカバーが掛けられていたが、ちょうど運悪く柔らかい荷物の上を踏んでバランスを崩す。

 こんな時はもう一回、防御魔法トラップだ! お前もくらっとけ!

 しかし、その魔法は完成する前に切り払われた!

 そんなのありかよ!

 空気が見えるはずはない。魔力の集中を感じたのかもしれない。

 山賊は流れるような動作で、突きの体勢を取り、そのままの勢いで突進してくる。

 狙いは明らかに心臓だった。革鎧なんて容易く貫通すると思っているのだろう。

 巨人の革と、そして防御魔方陣様、信じています。

 引き延ばされる時間の中、左手を胸の前に構え、弓を放した右手を腰のナイフに伸ばす。

 タイミングを合わせ、突きの剣先を左手の手甲で払う。

 そして、払いきれず鎧に刺さりかかった剣先を、体を捻って受け流した。

 積み荷に刺さる山賊の剣。そして近づいてくる醜悪な顔。

 そこに、体を(ひね)った勢いのまま、右手のナイフを突き立てる。

 ナイフは首の付け根から頭に突き刺さった。

 なおも勢いが止まらない山賊の顔を突き放すように、右手一本で荷馬車の下に投げ落とした。

 そこでやっと一呼吸つこうと思ったが、喉に穴の開いた(はず)の山賊がまた荷物の上に上ってきた。

 しつこいやつは嫌われるんだぞ!

 首の穴は塞がっていた。首元が濡れているので、おそらくポーションで治したのだろう。

 山賊は突進してくる。

 しかし、自分も突進していた。

 自暴自棄になったのでは無い。確たる勝算があった。

 自分が突進してくるとは思っていなかった山賊の動きは一瞬遅れる。

 その山賊の剣先に、雷魔法を発動させた。

 パチッ。

 一瞬、動きが止まる山賊。

 短い準備時間だったのであまり威力は無い。

 だが、それだけで充分。

 動かない敵の剣の間合いをすり抜け、胸当ての下から心臓めがけてナイフを突き立てた。

 抱きつくようにもたれ掛かってくる山賊。ナイフを突き上げるようにして、それを荷馬車の下に投げ落とした。

「ハアハア」

 荷馬車の上で、盛大に肩で息をする。

 地面には動かなくなった山賊が二体、半ば折り重なるようにして倒れている。

 それを取り囲むように見ている、やる気の無い冒険者達。

 中には降ってくる山賊を避けるのに必死で、腰から地面につき呆然とこちらを眺めているヤツまでいた。

 せっかく味方のところまで逃げてきたのに、みんな何故助けてくれないんだ!

 珍しく自分は怒っていたようだ。

 若い頃は、列に割り込みされただけでカッと頭に血が昇ったものだったが。それも遠い昔。仏の龍平にクラスチェンジしたはずだったのに、何処行った?一緒に転生できなかった?そんな事ある?

 トトッ!

 そこに飛んできた2本の矢。

 巨人の胸当てと、ヒドラの革鎧にあたった。

 胸当ての方はどうという事は無いが、ヒドラ革は柔らかい。お腹に当たった矢は痛かった。

 矢を放ってきたヤツをにらみ返した。

 危なかったというヒヤリとした気持ちもあるし、いい仕事をしてくれた女親方への感謝の気持ちもあるのだが、それ以上に虫の居所が悪かった。

 さっき山の上からヤリ損ねたアーチャー2人だな。

 ここは、荷馬車の上。非常によく目立つ。

 その代わりに、こちらからも戦域全体をよく見通せた。

 おあつらえ向きにアーチャー2人との間に障害物は何も無い。

 ゆっくりとした動作で矢を番える。

 その間に魔力をたっぷりと絞り出しながら。

 ゴブリンなら死んでしまうような一撃。雷撃矢を食らうといい。

 あれから練習を重ねたので、じっくり電流を流すのでは無く、より瞬間的に大電流を発生させることができるようになっていた。

 パアン!!!

 乾いた音が、閃光を残して響き渡った。

 矢を弾いたはずのアーチャーは崩れ落ちる。

 お前も逃がさない。

 次のアーチャーに狙いを定める。

 狙われ慌てたアーチャーは矢を放ってきたが、それは顔の横を掠めていく。

「払うな! 躱せ!」

 アーサー達と戦っていた親玉のような男が叫ぶ。

 躱せないよ。

 パアン!!!

 ホーミング付きだから。

 戦場が静まり帰っていた。

 後はあんただ。山賊の親玉さん。

 残った最後の矢に手を伸ばし、たっぷりと魔力を絞り出す。

 時を止めたような戦場で、親玉に斬りかかる2人がいた。アーサーとルイスだ。

 激しい剣劇に、防戦一方の親玉。

 このままアーサーとルイスに倒してもらってもいい。

 しかし、逃げるようなら一撃を食らわそうと、待ち構えていた。

 親玉とアーサー達が戦っていたのは、アーチャー達と違い比較的街道に近い場所、少し開けていて逃げ場は無い。

 でもなぜか予感はしていた。思い出していたのは初めてのオーク討伐の時の事。

 オークの前に立ちはだかっていた2人が、タイミング良く射線を開けてくれるのを。

 もう十分魔力は溜まった。体が発光するほどに・・・。

 そのとき、絶妙なタイミングで射線を開ける2人。

 その瞬間を見逃さずに矢を放つ。

 親玉は、ちょうどバランスを崩した瞬間だったらしく、飛び退く事ができなかった。

 しかし、体を低くし、地面に剣を突き立てた親玉。

 パアン!!!

 矢は剣に弾かれ、雷撃も剣から地面に逃された。

 電気の特性を知っているのか!?

 そこに、間髪入れずに両サイドから横薙ぎに振るわれるアーサーとルイスの剣。

 首をすぼめて上半身をガードする親玉。

 ガツッ!

「ぐわっ!」

 アーサーの剣は親玉の剣を握る手を打ち砕き、ルイスの剣は鎧の無い太ももを切り裂いた。

 そのままの踏み込みの勢いで、親玉の退路を断つように後ろに回り込む2人。

 そして、それに対応して振り向き、2人の次の一撃を手甲でしっかりと受け止める親玉。

「まだまだーーー!!!」

 親玉は自分を鼓舞する。

「そうかな」

 そして、不敵に笑みを見せるアーサー。

「はっ? 後ろかぁ!!!」

 親玉は、振り向きざまに飛んできたナイフを手甲で弾いた。

 それは、私が身体強化魔法の全力で投げたナイフ。

 風のエンチャント、ホーミング。

 そして・・・。

 ナイフを弾いた親玉と視線が交差した。

 驚愕の表情は、それを最後に、目映(まばゆい)い、そして(はかな)い一筋の光で遮られる。

 パアン!!!

 山間にこだまする乾いた音。それが消え去る前に、アーサーの剣は親玉の首をとらえたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ