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気ままに生きたい異世界転生 ~チートは無いはずなのに目立ち過ぎるのは困ります~  作者: アルバザーク
第二章 王都への旅路

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山賊(治療)

 モーガンの容態は悪かったのだが、倒された荷馬車が燃える勢いがいよいよ強くなってきたため、引きずって少し離れた場所に移動した。

 しかし、それ以上にポールさんが慌てていた。目の前で燃え盛る炎のため馬が暴れている。下手をすると馬車ごと谷に転落しかねない状況で、馬の手綱の根元、(くつわ)の辺りを必死に(つか)んで押さえていた。

「どうどう!」

 ここまで炎が大きくなると自分の使える生活魔法程度では消すのは無理だ。

 ポールさんが押さえていない方の馬の方を見様見真似(みようみまね)で押さえる。しかし、力が強くても体重の軽い自分では振り回されてしまう。

「何か手伝えますか!?」

 (らち)があかないと思ったのでポールさんに指示を仰ぐ。

「馬を馬車から切り離してくれ!」

 頼まれたのだが、どうやって馬が馬車に繋いであるのかよく分かっていない。とりあえず馬車と繋がっている革紐4本をナイフで切断した。

 それを見たポールさんは馬から手を離した。崖側にいた馬はそのまま反転しようとして足を踏み外し、崖から転落していった。山側にいた馬は、山道を駆け下っていく。

 馬から切り離された馬車は、今度は後退し始める。

 後ろの馬車の馬に当たらないよう、ポールさんと2人で馬車の向きを変え、山側の斜面に当てて止めた。

 やっとこれで荷馬車が崖下に転落してしまう危機は回避された。

 ポールさんは腰を付いたままゼェゼェと荒い呼吸を繰り返している。

「おい! モーガン! どうした! しっかりしろ!」

 傍らでは、スティーブがぐったりした(うつ)ろなモーガンを揺すっていた。

「どうしたんですか!?」

 素早く駆け寄り状態を診ると、傷口はすっかり塞がっていた。おそらくポーションを使ったのだろう。

「まずいことに、毒かもしれない」

「毒!?」

 あいつらなんて事をしてくれたんだ!

「毒消しは?」

「そんなものは準備していない」

「では、ちょっと任せてください」

 エレーナと自分の知識を総動員する。

「ちょっと痛いですよ」

 まずは、閉じた傷口にナイフを突き立てる。

「ぐっ」

 モーガンのうめき声。

「おい!」

 そしてスティーブが慌てて止めに入ろうとしてきたが、それを振り払う。再び開いた傷口に、口を付けて毒を吸い出す。

 スティーブはその行動を見て動きを止める。分かってくれたようでなにより。

 吸い出し、吐き捨てるのを数回繰り返した後で、毒消しポーションを使う。使い方はキズポと同じようなものだが、少々荒っぽい。傷口にポーション瓶を突き刺した。

「ぐぐっ!」

 スティーブはモーガンを押さえつけてくれていた。グッジョブ。

 そしてすぐに引き抜き、残りをスティーブに任せて飲ませてもらう。メラニアさんの毒消しが効きますように。

「キズポはまだありますか?」

「ああ、大丈夫だ」

「ではここはお任せします」

 索敵魔法によると、見える範囲の山肌にはもう山賊はいなさそうだが、柄の悪い冒険者が逃げていった曲がり角の先から喧騒が聞こえてくる。

 アーサーとルイスは強いので大丈夫だと思いたいが、相手が毒のナイフを使ってくるような相手である以上、少しの油断が命取りになりそうだ。

「行くのか?」

 立ち上がるとスティーブが問いかけてきた。

 改めて考えてみると、とても危険だ。でもアーサー達が心配でならない。

「遠くから状況を確認してきます」

「そうしとけ、血を見ても冷静にな。冷静に。口の周りに血が付いているぞ」

 変な事を言うと思ったら、そういう事かい!

 血を見て頭がおかしくなるわけじゃないっての!

 魔法で水を出し口をすすいでから、口の周りの血も拭き取る。

 アーサー達を追いかけようかと思っていたがやめた。山の尾根を登って上から状況を確認しよう。弓なら遠くからでも援護できるし。

 燃え盛る馬車を避けるように山肌を斜めに登っていく。


 後ろの車列の冒険者達は、まだ山賊の襲撃を警戒したまま動けないでいた。後ろの方の小さな馬車は小回りができるのか、既に転回して坂を逃げ下っているものもある。

 それを見かねたスティーブが大声で呼びかける。

「おい! ちょっと手を貸してくれ! それと半分加勢に行ってくれ!」

 それでも尻込みしている冒険者達。

「お前ら、前の連中がやられたら、俺達だってただじゃ済まないぞ!」

 ざわつく、冒険者達。

「俺達はBランクだし、ギルドの馬車を守るのもBランクだ! そう簡単には山賊なんかにゃやられねーよ! こんなところで、お前達の経歴に泥を付ける必要も無いだろう!」

 それでも煮え切らない冒険者に業を煮やしたスティーブは、最後の切り札を切った。

「ほら! あのジャイアントキラー様が加勢に行ったぞ! 血を得たブラッディオーガがどんなもんだか見物してこい!」

 そこまで言ってやっと、動き始めてくれたようだ。

 山肌を登る自分の姿を見て、指を差してくる失礼な冒険者も見かける。スティーブ、憶えてろ。全部聞こえているんだからな。

「あれが、ブラッディオーガ?」

「頭のいかれた金髪エルフだって噂だったから、あっていると思うぞ」

「槍でサイクロプスをぶち抜いたってさ」

「へー、あれが」

 王都方面の輸送を担当する商人とその護衛は、マデリンの事情に詳しくないものも多い。反応は様々だった。

「おい、お前、そこの山賊を縛ってくれ。それとむこうの方で道の途中に倒れているヤツも頼む。あと何人かで、その燃えている馬車を崖の下に落とせないか?山の上はあいつに任せておけば大丈夫だ。早く加勢に行ってやってくれ!」

 スティーブは矢継ぎ早に指示を出していた。

 この商隊にBランクパーティは2つ。先頭の冒険者ギルドの馬車を守るパーティと、もう一つは『暁』だ。今回、こういった場面での指揮権は暗黙のルールで上位ランクのものとなる。通常の輸送任務はCランクが大半で、Bランクが請け負う事はめったに無い。ギルドの馬車には高額な巨人の素材が満載されていたため、今回はBランクが使われていた。そして、『暁』は気まぐれにリューについてきただけだ。ある意味、この商隊にとって運が良かったと言える。


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