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焼きそばパン大戦争  作者: 清泪(せいな)
最終章 焼きそばパン大戦争

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第八十二話 展示会に行こう

 D組で笠原の手伝いをしながら、和美は文化祭前日までの日々を過ごしていた。

 結局、自分のクラスであるB組の喫茶店には、本格的に関わることはなかった。

 そのせいで、和美にとって喫茶店運営はすっかり他人事となり、むしろD組の「鎮魂祭資料展示」のほうが身近に感じられるほどだった。


 前日の放課後。準備作業はもう片づき、やることは残っていない。けれど和美は、当日どうやって来客を集められるかをまだ考え続けていた。


「――例えばさ、B組(うち)の喫茶店と何か協力して、D組に流してもらうみたいなこと出来ないかなぁ」


「何か協力って?」


 机に頬杖をつきながら、ふと思いついたことを口にする和美。

 横で聞いていた矢附がすかさず突っ込む。


「んー……何かしら?」


「喫茶店とコラボはいいと思うけど、D組(うち)は飲食禁止なんだよ。展示物が汚れたら困るし」


 和美の漠然とした提案に、机を挟んで向かいに座る笠原が冷静に注意を加える。


「じゃあ無理かぁ。チラシでも置いてもらうとか?」


「それ、B組には利点なさすぎない?」


 D組寄りの発想をする和美に苦笑しつつ、笠原は「コラボ」の意味を成していないと思った。


「素直に呼び込みがいいんじゃない?」


 矢附が代案を出す。

 彼女は文化祭準備に割く時間が減った分、バレー部に顔を出していたので、他クラスの出し物はあまり把握していなかった。D組の展示内容も笠原から聞いた程度で、詳しくは今日まで知らなかった。

 文化祭前日で部活動は休みとなり、手持ち無沙汰になった矢附は、こうして会議と称した雑談に参加している。

 実際には、和美の思いつきを二人がやいやいと突っつくだけで、建設的な結論に至るわけではなかった。


「呼び込みねぇ……正直、鎮魂祭の資料展示で人が来る気はしないんだよね」


「わかる。結構しっかり準備した自信はあるけど、生徒とか父兄が興味持つかっていうと弱いよね。うちの学校、研究好きな人も少なそうだし」


 二人は腕を組み、うーんと唸る。矢附も頷いた。

 だが内心では、正直「興味ないな」と思っている。

 笠原や和美は準備に関わったから思い入れがあるが、自分はそうではない。もともと祭りそのものに苦手意識があり、その起源や由来など考えたこともなかった。


「でも確かに舞彩が言うように、呼び込みは必要だよね。知ってもらうだけでも大事だし」


 笠原はそう言って、矢附の案を前向きに扱った。

 強烈で即効性のあるアイデアばかりを追い求めれば、難癖ばかりつけて終わってしまう。せっかく築いた友人関係を険悪にしたくもなかった。


「そう考えると、逆にB組がメイド喫茶で良かったんじゃないかって思えてきたよ」


 呼び込み効果だけを考えれば、メイド服は強力だ。和美自身は進んで着たいわけではないが、《お手伝い》なら出来そうな気がした。


「それ、コラボっていうか詐欺じゃない?」


 矢附は、二人がメイド服で展示会に呼び込みをする姿を想像し、吹き出した。

 メイド服に釣られて来た客に、いきなり鎮魂祭の資料を読ませる……その構図はどうにも真っ当には見えない。


「確かにそうだね。……んー、何か他にないかなぁ」


 矢附の反応を聞いて、和美は自分の案を却下する。

 いろんな《お手伝い》を経験してきたのに、こういうときに生かせないのはまずい――そう心の中で反省した。


 三人の、建設的とも言えない会議はそのまま続いた。

 どうせ今さら、二クラスを動かすほどの大案が採用されることはないだろう。

 それでも、こうして頭を突き合わせて過ごす時間も悪くないなと、和美は思っていた。

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