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一緒にいたい

「……狭いね」


 ログハウスの消失と共に、露天風呂も無くなっていたため、俺たちは咲楽の家のお風呂に入っていた。なんだか背徳感がすごい。

 あまりに距離が近いから、常に肌と肌が触れ合っている。


「……あのさ」


 「うん?」と向かい合わせに湯船に浸かっている彼女がこちらを向く。顔が赤いのは温度のせいか、恥じらいか。


「何で一緒に入ろうと思ったの。子どもの頃だってこんなことしなかったよね」


 俺はついに今までずっと気になっていた問いの一つを彼女に投げかけた。

 すると、彼女は恥ずかしそうに耳まで朱色に染めながらお湯の中に半分顔を沈めた。

 言いづらいことなのだろうか。


「いや、別に。言いたくないなら別に言いけど……」


 俺も少し恥ずかしくなって身を屈めた。

 すると、


「……から」


「……え」


 咲楽が明後日の方向を見ながら、小さく呟いた。



「……ずっと一緒にいたいから」



 え。何だそれは。

 俺は予想だにしていなかった回答に面食らって、しばらく彼女を見つめながらぼんやりとしていた。


「……あ、あんまり見ないで」


「あ、ああ、ごめん」


 滅多に自分の気持ちを話さない咲楽が口を開いたと思ったら、「ずっと一緒にいたいから」?

 訳が分からない。それじゃ道理に合わない。

 じゃあ、何で——


 ……何で俺から離れようとしたんだ。

 何で俺を置いて一人で死のうとしたんだ。

 何で俺と過ごした大切なログハウスを消してしまったんだ。

 何で、何で、何で。


「……」


 俺は気まずそうに顔を伏せる咲楽を他所に、無言で浴槽から上がって浴室を出て行った。



 一緒にいたい。その言葉が頭から離れない。

 咲楽のことが信じられないから? いや、違う。信じられないけど、咲楽は嘘を言っているようには見えなかった。第一、そんな大事なことを咲楽が口に出して伝えたのだから、真実に決まっている。


 じゃあ、何で、こんなにも胸騒ぎがするのだろう。

 その理由を、俺は多分知っている。だけど、俺は今も、これからも、自分の気持ちに知らないふりをして、生きていくのだ。

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