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彷徨の彼等  作者: 七峰なぎさ
3/3

朝練

「あと2周!」高根の耳元で高野の中低音の声がする。

「はい!」

今朝も高野と高根が長距離のジョグを引っ張る。

息が荒くなり、頬が紅潮する。

2人の間にわずかな緊張が走る。


「あと1周!」高野が叫ぶ。

それを合図に2人はぐん、とスピードを上げる。

後ろの部員たちもスピードを上げるがあっという間に引き離されていく。

2人だけの空間で並走しながら走る。

耳を、鼻を、口を、指先を、冷たくて痛くて心地いい風が通り抜ける。

差はなかなかつかない。そのままゴールが近づいてくる。


菅野と小川はそんな2人をじっと見つめていた。

「すげぇよな」

「うん、すごい」

そのまま目を離さずにゴールを見守る。

と、その時

「大小コンビ!何ぼーっと突っ立ってんの!あと1本ダッシュ入れるから早く来て!」

怒鳴る声が背中のほうからする。

「三木先輩!大小コンビっていうのやめてくださいよ!俺、身長低くないですから!」

小川がすかさず叫ぶ。

「そんなことどうでもいいから早く来るの!ほら早く!」

「「はぁーい」」

「走る!!」

「「はあああい!」」

2人は観念したのか加速しながら走っていく。


大小コンビは2人をまとめて呼ぶときによく使われる。

菅野颯大の“大”と小川俊弥の”小”から来ているが、身長も由来になっているとかいないとか。


「そういえば菅野って身長何センチ?」

「んー、180くらいだった気がするけど…あれ、もうちょいあったかもな」

「…っ」

「なんだよーそういうおまえこそ何センチ?」

「別に何センチだっていいじゃん!」

「えー?うーん、俺の予想では158!どう?」

「!?!?…なっ、ばっ、なわけ…」

「大当たり?俺才能あるかもしんない…やば」

「うるさいって!」

「こら大小コンビ!しゃべってないで早く動いて!ダウン行くよ!」

三木の怒号が飛ぶ。

「「…はーい」」


「……ってか大小コンビやめてください…」

三木には聞こえない小さな声で小川がつぶやいた。



2人がダウンを終えてグラウンドから昇降口前に戻るともうだいぶ生徒は増えていた。

その中に運動着姿の人影を見つける。

「野根!今日どっちが勝ったのー?」

小川が小走りで近づく。

ちなみに“野根”は高野と高根をまとめて言う時によく使われている。

「あー、今日も俺が勝った」

「いや、僕だよ!僕の手が先に入った」

「陸上は胴体が入ったらゴールだろー?俺トルソーしたし」

「っ…でっでも…」

「はいはい!二人とも速かったんだな!お疲れさん!」

菅野が2人を引き離す。


野根は菅野にうだうだと愚痴を言いながらストレッチを始める。

小川がにんまりしながらお疲れ、と声をかける。

2人は少し首をかしげながらお疲れ、と言葉を返した。

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