休息などない
「ん、傷もほぼほぼ回復してるわね。流石、温泉に入ってただけあるわ」
「後遺症もなさそうだしな」
「他に隠してる傷、ないわよね?」
「あぁ、無論だが?」
アレクサンドに来て早5日、傷ももうほとんど回復している。
「散歩でもするか」
「賛成、リハビリにもなるしね…そういえばハルトは?」
「行きたいところがあるんだとさ」
「――そ、そう…」
マリエが歯切れ悪く頷く。
「まぁ、散歩してるうちに合流するだろ」
「そうね…じゃあ行きましょうか…」
こうして俺とマリエは散歩に出かけた。
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「それにしてもいい天気ね」
「空は晴天、晴れやかな気持ちだな」
二人ならびながら歩き、雑談する。マリエの治癒魔法のお陰で肩を借りずに歩けている。
「ハルト、いないかな?三人で観光したいし…」
「…そうね、見つかるまではそこら辺をぶらぶら歩きましょ。あ、あそこに美味しそうな饅頭屋があるわ」
「お、ほんとだ、おっちゃん饅頭二つ、お願いします」
「あいよ、ちょっと待ちな」
といい紙切れに饅頭を挟み渡す。
「おらよ、50ペンな」
ちなみにペンとはお金の単位である、1ペン約2円ほどの価値である。
「ホイ、ちょうどな。おらよマリエ」
「ありがと」
マリエは饅頭を受け取り、口に運ぶ、小さい一口だ。俺も饅頭を口に入れた。
「ん、おいひいなこれ」
「そうね、すごくおいしい」
少し飲み込めてないまましゃべってしまい、滑舌が悪くなる。
「なんだかさ、デートみたいじゃない?」
「――っ、そういうこと言うのやめろよ」
意識しちゃうだろ…
今まで分かってはいたが意識していなかった、意識してしまうと途端に恥ずかしくなってくる。
「あれあれ?もしかして照れてる?」
「照れてないし…」
そう言って、俺は乱暴に饅頭を口に放り投げた。
「もう、素直じゃないんだ――っ!《氷塊の盾》」
マリエを中心に氷に囲る、後ろには無数のクナイが刃をこちらに向けられ、飛んでくる、マリエの《氷塊の盾》のお陰で攻撃は当たらなかった。
「敵襲か…」
空中からアマテラスを取り出し、構える。《空間倉庫》という魔法だ、魔力はほとんど使わず、ものをなにもないところから出し入れすることが出来る魔法である。
「油断も隙もないわね…一般市民は早く避難を!!」
「クソ!どこにいやがる…」
「そんな、騒がなくても、すぐ、出てくる」
敵が姿を現した、口元を布で隠し、目は吸い込まれるように紅く、右目には眼帯を着け、ピチピチの服を着た、女性である。イメージはくのいちにちかい。
「お前、邪神十傑か?」
「ええ、そう」
「なら、殺す…!そうじゃなくても、殺す…!」
大地を蹴り、剣を振るう…相手は両手でクナイを持ち、逆手で握る。
ちっ、全部ふせがれちまう…
一旦攻撃をやめ、距離を取る。
「邪神十傑…飛んで火に入る夏の虫ね…」
めらめらと殺意を露にし、剣を取り出す、マリエは強く剣を握り、壁を伝って背後に回る。
「はぁ!!」
剣とクナイが交差し、鋼のぶつかる音がする。そのまま斬撃をいれる…相手の防御よりマリエの斬撃が上回り、相手の体に傷が付く…
「ちっ、回復してる…体に弱点はないわ」
「それがわかっただけでも、十分、だ!!」
そして、俺は背後から剣を突き刺した。相手の胴体を貫通し血が吹き出る…




