戦いの口直し
プツッと糸が切れるように、眠りから覚める。
「これが、知らない天井ってやつか…」
「目覚めの第一声がそれ?」
重たい目を開けると、すぐ傍らにマリエの姿があった。
「俺、どのくらい寝てた?」
「丸1日位よ」
あぁ、俺はそんなに寝ていたのか、とんだ寝坊助だな…
ふと、右手にやさしい暖かさを感じた。
「手、握っててくれてたんだな」
「――なっ!あの…その、これは…」
マリエが頬を赤らめ、慌てふためく。
「最初、会ったとき、酷かったなって思って」
顔をうつむき、寂しそうに言う。
「でも、それでも話を聞いてくれて、一緒に邪神十傑、倒しに来てくれて…私一人じゃ絶対無理だったもん…」
「あんなんもう、気にしてねぇよ。それに、あの態度の意味、分かってたしな」
「――!ただの、八つ当たり…よ」
「長い八つ当たりだな、10年前だろ?ノヴァディアーノが攻めてきた時って」
「えぇ、私が7歳の時…」
「正直、10年たてばもう怒りは収まるだろ、いや矛先が自分の周りじゃなく、邪神、邪神十傑、にむくって感じか…」
だから…と言葉を続け
「この騎士団に入ると、邪神による被害者が増える、それが嫌だからあんな態度をとって、辞めさせたんだろ?」
「――そうね…その通りよ…」
また、彼女は顔をうつむき…
「でも、あなたを戦いに出向かせてしまった…私の復讐に手伝わしてしまった…それで、こんな怪我をあなたは負ったのよ!私の…せいで…」
マリエは、ポロポロと涙ながらに語る。
「だから、気にしてないって、それにこの騎士団に入ってんだ、仕事だ仕事、それに…」
手をマリエの頭にのせ、優しく叩く。
「英雄って憧れるだろ?」
そして、優しくほほえんで
「だから俺はこの騎士団に入ったんだ、移動しようと思えば移動できたしな」
「――バカな理由ね、でも…」
うつむいた顔を上げ、マリエは笑う
「カッコいいじゃない…」
「ストレートに言われると照れるな…」
「なっ、ちょっとこのままいい感じにしまってもいいじゃないの!!」
少し頬を膨らませマリエが怒る。
「ハハ」
「ふふ」
病室には2人のささやかな笑い声が響き…
「ありがとうね、リョウゴ…」
マリエは何よりも暖かい笑顔でそう言った。
この時、俺の体温は人生で一番熱かったと思う。




