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黒鵜姉妹の異世界キャンプ飯 ~腹ペコ転生姉妹~  作者: 迷井豆腐
第五章 ヘカトンアヒージョ
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第64話 セシルの休日

 やあやあやあ、皆さん、こんにちは。私の名前はセシル、パゲティ村が誇る期待の若手冒険者だよ。私ったら若干16歳にして、一人前とされるD級冒険者にまで昇格しちゃってね。まっ、キャリアウーマンとでも言うのかな? 自分で言うのも何だけど、事実だから仕方ないよね。そんなキャリアでウーマンな私は、各地の異変やトラブルをバリバリ解決する為、多忙な日々を送っているんだ。いやはや、パゲティ村のヒーローはホントに大変だよ。まっ、皆に頼りにされるってのは、そんなに嫌いじゃないけどね? な~んてね、えへへっ!


 ……いやぁ、ホントにな~んて、だよ。頭の中で空しい妄想をしていても、現実は変わらないんだよねぇ。私はどこにでもいる至って普通な冒険者、魔導士のセシル。普通とはいえ、私だって一般的な同年代と比べれば、それなりに早く出世はしている。けれど、そんな事は些細な違いでしかない。私はつい先日に、真に上に立つべき冒険者達と出会った。そして、根拠のない自信は全くの無意味であると、現実に叩きのめされてしまった。ミミさん、カンロさんとの出会いは、それくらいに衝撃的だったんだ。ショックでもあったけど…… まあ仕方ないと、その辺の心の整理は済ませている。こればっかりは才能の差、どうしようもないよ。


 あ、勘違いしてほしくないんだけど、別にミミさん達を恨んでいる訳ではないよ? むしろ、あの二人には感謝しているくらい。危険と隣り合わせの冒険者にとって、以前の私が持っていたような過剰な自信は、窮地に立たされる要因となり、命取りになってしまう。だからこそ、色々と諸々とショックを受けた事を除いては、私やジャック、エッジにとっては良い出来事だったんだ。信じられないくらいに美味しいお肉も食べられたしね。


 で、あれから身分相応に冒険者として貢献して来た私達なんだけど、今日は依頼の合間のお休みで、束の間の自由を満喫しようと目論んでいるんだ。今回のお休みは結構長めで、ジャックとエッジは少し遠出して山登り(?)に出掛けると言っていた。なぜに休日に山に登るのか、魔導士の私には全く理解できなかったけど、まあそれはさて置こう。休みを何に使おうが、それは二人の自由だからね。私は私で山登りとは関係なく、お休みを満喫しよっと。


 そんな気概で馬車に乗り込み、パゲティ村から外に出た私は、現在王都を目指して進んでいるところだ。生きているうちに、やりたい事を今やっておく。そんな教訓を前回の危機から学んだ私は、グラノラ王国の最先端を行く王都で休日を過ごす予定なの。フフッ、普通な冒険者の私も王都のキラキラに触れたら、多少はイケてる女の子になれるのでは!? ……と、そんな超場当たり的な計画なんだけど、まあミミさん達みたいに王都の食を楽しむだけでも価値はあるし、休日の過ごし方としては間違っていない筈。今はこの馬車の揺れに身を任せ、ただただ妄想を膨らませるばかりなのだ。


「セシル様、如何されましたか? 何やら上の空な様子ですか?」

「えっ?」


 王都でのキラキラ休日を妄想していたら、ふと声を掛けられた。凛とした、綺麗な声だ。正気に戻った私がその声の方を向くと、そこにはメイド服を着た超美人なエルフさんの姿が。


「あ、あっとえっと、ううん! 何でもないんだ! ちょっと、ほんのちょっと考え事をしちゃってて!」


 心配そうに私の顔を覗く彼女に、急いで大丈夫である事を伝える。綺麗かつ品の良さそうなエルフさんに対し、多分今の私は変な顔になっていたと思う。うう、何をテンパっているんだ、私!?


「そうでしたか。申し訳ありません、要らぬ心配をしてしまったようで……」

「ううん、心配してくれてありがとう、エボンさん」


 こちらのメイドさんはエボンさん。私と同じく王都を目指す、一時の旅の仲間とでも言うのかな? まあ、そんな感じ。エボンさんは昨日の朝方にパゲティ村に到着したみたいなんだけど、その時の村の男共の盛況振りったら凄いのなんの。ただでさえ綺麗なエルフさんが、メイドさんの格好をしていたから? なのかは知らないけど、結構な人だかりができるくらいだったんだ。全く、馬鹿ばかりだよ。


 そんな人だかりの中心に居るエボンさんはと言うと、何やら困ったような様子だった。そりゃそうだよ、こんな状況に立たされたら、誰だって困るってもんだよ。村の男共は集まるばかりで、緊張してなのか声も掛けられない様子だったし。馬鹿な上に不甲斐もないよ、ホント! 仕方ないから、私は王都に向かう馬車に乗る前に、エボンさんを助け出す事にしたんだ。具体的には、男共を魔法的に追っ払った。魔法とは便利なものである。


『ありがとうございます。道をお尋ねしたかったのですが、何やら雰囲気が異様で聞き辛くて。私の顔に何か付いていたのでしょうか?』

『いやいや、そういう訳じゃないと思うけど……』


 綺麗な上に、エボンさんは若干天然だった。それから私達は簡単に自己紹介をする事に。ついでに、エボンさんがパゲティ村に来た経緯も聞く事ができた。


『―――ご主人様を追う為に、生まれて初めて故郷を出て来た?』


 何だ、その恋愛物語の中でしか見ないような設定は? と、そんな言葉が喉元まで出かけていたが、私はこれを何とか飲み込んだ。こんな失礼な事を言ってはいけないと、私の理性は頑張ってくれた。エボンさんの表情は真剣そのものだったし、とても嘘を言っているようには思えなかったんだ。


 話を詳しく聞くに、エボンさんはとある人物を捜しているようだった。その人物と言うのがエボンさんのご主人様で、エルフ族の中でも相当な権力者であるらしい。しかも二人は歳が近く、子供の頃から一緒に育ったとか何とか。言ってしまえば幼馴染ポジションである。幼馴染でご主人様のお付きのメイドって…… エボンさん、貴女マジですか? そのご主人様もエルフだから、すんごく美形なんですよね? 何て羨ま――― ゲホンゴホン! ……声には出さなかったけど、私は心の中でツッコミを入れまくっていた。


 で、そんなご主人様が先日、エルフ族の長として相応しい人物となる為に見聞を広めようと、故郷の外へと旅に出てしまったのだという。将来が約束されているって言うのに、随分とアグレッシブなご主人様だ。もちろんエボンさんは、ご主人様を応援し後押しもした。納得だってしていた…… みたいなんだけど、ご主人様のいない生活は空虚でしかなく、いつ帰って来るかも分からないその状況は、耐え難いものであったらしい。


 そして、つい先日。旅に出たご主人様を追う為、エボンさんは周囲の反対を押し切り、故郷を発ってしまった。ご主人様が目指す先は、確かこの国の王都だった筈。エボンさんも王都へ向かおうと、これまでに学んだ知識を頼りに道を歩み始めたんだ。けど、そう上手く事が運ぶ筈もなく、なぜかパゲティ村に辿り着いてしまったという訳だ。 ……ん? 何かデジャブを感じるような? ううん、きっと気のせいだろう。まあ、そんな訳で私達は共に王都行の馬車に乗り込み、現在その馬車に揺られているって訳。説明おしまい。


「うーん、何と言うか…… エボンさんに慕われて、エボンさんのご主人様は幸せ者だね」

「ど、どうしたのですか、突然?」


 顔を真っ赤にするエボンさん。何だ、この可愛い生き物は? エボンさんのご主人様、本当にどんだけ幸せ者なんだよ? どんだけ地でラブストーリー引っ提げているんだよ?


 全く、こんなに可愛いところを見せつけられたら、私が無事に王都にまで送り届けるしかないじゃないか。エボンさんはこんなにも美人で心が真っ直ぐで、それでいて外の世界に無知でいる。悪人に見つかったら、一体何をされるか分かったものじゃない。よし、意地でもエボンさんとご主人様とやらを、無事に会わせてやろう。腐っても一人前、D級冒険者の力を発揮させる時が来たってね。


「おわあっ!? モ、モンスターだ! モンスターが出たぞぉ!」

「っと、早速だね! 御者さん、ここは私が―――」

「―――失礼」


 そんな決意をしたのも束の間、気が付けば隣に居たエボンさんが、ごっつい弓を取り出していた。 ……はい?

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― 新着の感想 ―
[一言] パゲティ村‥‥何回読んでもスパゲッティになってしまうw このエルフのメイドさん、雰囲気からしてイーターさんと同レベルの力量を持っている感じが‥‥もしかして食欲もw
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