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黒鵜姉妹の異世界キャンプ飯 ~腹ペコ転生姉妹~  作者: 迷井豆腐
第四章 煉獄フェニックス鍋
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第62話 条件

「おかしいと言えば、スキルの他にも気になる点があるわん。補助効果の記載欄に、『世界の呪い』なんて大層な名前のものがあったのよねぇ」


 ゴブ茶と一緒に出した茶菓子を頬張りながら、ブルジョンが別の話題を話し始める。但し、相変わらずエスタの顔は明後日の方向を向いている状態だ。


「ああ、そんなものもあったねぇ。残念ながら、私は世界の呪いなんてものは初耳だったが」

「私だってそうよぉ。それでも色々と調べてみたわん」

「ほう? で、何か分かったのかい?」

「それが全っ然! そんな種類の呪いなんて、ギルドの記録にも一切なかったのん。一体何なのかしらねん? 二人に問い質すにしても、ステータスや出自について聞くのは、冒険者にとっての御法度だし…… うふーん、何の情報もない今の状態だと、正直もう何もできないのよねぇ。ミミちゃん達から言ってくれれば、いくらでも手助けできるのだけれどぉ……」

「フン、逆に考えれば私らが手助けしなくとも、自分達で何とかしているって事じゃないかい? ミミは兎も角、カンロなら何も考えていないって事はないだろう。それよりも私としては、『隠蔽』のスキルも使わずにステータスを無防備に晒している方が心配だよ。あんな状態じゃ、F級の鑑定眼でも丸見えだ。作ってやる装備の一つに、何かしらの対策を講じてやらないと、ブツブツ……」

「エスタ~? 自分の世界に入らないで~?」

「む……」


 エスタ、ここで咳払いをひとつ。


「まあ兎も角だ、私達が余計に心配してやる必要はない。どうしてもと言うのなら、装備の時のように当たり前の事を教えてやる事だ。あの子達は実力があって信頼もできるが、どうもよく分からないところで常識を知らない時がある」

「そこは私も同意見――― なんだけどぉ、やっぱりエスタ、ミミちゃん達に甘々ねぇ? そんなに気に入ったのん?」

「あ?」


 その一言にカチンと来たのか、エスタは反射的にブルジョンの方を向いてしまう。この巧みな駆け引きにより、ブルジョンはエスタと顔を合わせる事に成功。直後にエスタもその事に気付くが、その頃には満面の笑みを浮かべるブルジョンが目の前に居た。


「うふん(はぁと)」

「ッチ!」


 とまあ、舌打ちも出るというものである。


「……この調子でA級・S級の依頼を達成していけば、ミミ達が進化するのは時間の問題だろう。人間だろうがエルフだろうが吸血鬼だろうが、生物である以上、レベル100を超えればひとつの区切りだ」

「そうなれば、いよいよS級への昇格も現実味が増すわねん。新たなS級冒険者が誕生するのぉ、一体何年振りだったかしらん? 三人に相応しい二つ名を考えないとだしぃ、冒険者名鑑に載せる内容を考えないとだしぃ、どうやって昇格式を彩るかも考えないとぉ! こいつは忙しくなるわん!」


 やる気の表れなのか、ブルジョンは勢いよくソファから立ち上がり、力一杯にポージングを決め始める。


「ったく、気の早い奴だ。というか、二つ名と冒険者名鑑の管轄は、本部のギルド総長のところじゃなかったかい? 何でブルジョンがやる事になっているんだ?」

「そりゃまあ、私ったら総長ちゃんに信頼されているしぃ? うふふん」

「何だ、あいつの目も遂に腐り始めたのか?」

「な訳ないでしょん! プンプン!」

「止めろ、私の目まで腐り始める」


 大急ぎでガスマスクを装着するエスタ。その姿を見て、ブルジョンは尚更にプンプンするのであった。


「じゃ、私からの一応の報告も済んだし、そろそろ行くとするよ。あの子らの装備を鍛えないといけないしねぇ」

「はいはい、お疲れ様ん。個人的な頼みを聞いてくれて、ありがとねん。ホントに助かったわん」

「別にアンタの為じゃないよ。私自身があの子に興味を持っただけだ」

「そ? なら、次は三人の昇格式で会える事を願っているわん」

「私としては願い下げだがな。 ……ああ、そうそう」


 ドアノブに手を掛け、ギルド長室から出ようとしていたエスタが立ち止まる。


「どうしたのん?」

「実はね、ミミ達の他にも面白い子が居たんだよ。その子も今はA級冒険者でねぇ、ひょっとしたらだが、良いタイミングで昇格式が被る事になるかもしれない」

「あらあらあらららん…… その話、詳しく教えてぇ(はぁと)」

「やなこった。知りたければ自分で調べるんだね」


 ―――バタン。無常にも扉は閉められ、エスタはさっさと部屋を出て行ってしまった。


「……あの偏屈なエスタが興味を持っちゃう、四人目のA級冒険者、ねぇ。やだん、前代未聞の昇格式になりそぉ~~~」



    ◇    ◇    ◇    



 夜の王都に飛び出した美味達は、広く浅く出禁にならないレベルで蹂躙――― ではなく、屋台や飲食店、酒場を回っていた。訪れた店の数は、そろそろ大台に乗るといったところ。それでも三人の胃袋は、まだまだ前菜を食した段階である。


「ふぁんふぅふぅーんはぁはぁんふぃ?」

「……すまん、何だって?」


 とある店にて、厚切りのステーキを頬張りながら、言葉らしきものを発する美味。しかし、それはとてもではないが、聞き取れるものではなかった。食べ物を口に入れながら、言葉を発してはいけない。その典型である。ただ、この難解な言語を翻訳できる者も、どうやら同席しているようで。


「S級冒険者になる為の条件ですよ、イータさん。美味ねえはその条件を知っているかと、イータさんに聞いています」

「よ、よく聞き取れるな、カンロ……」

「まあ、ずっと一緒に過ごして来ましたので、このくらいは。それはそうと美味ねえ、食べながら喋らないでください。マナーが悪いですよ?」

「モグモグふぁい!」


 ゴクリ! と、ステーキを飲み込む美味。次いで、イータの方へと向き直る。何かを期待するような、キラキラと輝く視線を向ける。どうやら返答を待っている様子だ。


「あー…… ええっと、S級冒険者になる為の条件、だったか? すまない、不勉強故に知らないのだ。ご教授願えるか?」

「よっしゃ! それでは私が教えてあげますね!」

「美味ねえ、生き生きしていますね」


 たまには教える側に立ってみたかったのだろう。美味の事なので、この行動にそこまでの深い理由はないと思われる。ちなみにであるが、S級冒険者となる為にはいくつかの条件が存在している。その条件とは以下の通りだ。


①A級以上の依頼を10回連続で成功。

②S級相当の依頼を達成した経験がある。

③冒険者ギルドを置く中規模国家以上の2国の国王から許可を得る。

④S級冒険者立会いの下、昇格試験に合格する。


「―――といった感じで、S級冒険者になる為の条件は、沢山存在しているのです! えへん! 沢山あり過ぎて、とっても大変!」

「ふむ、なるほどな。これまで依頼の連続達成、そして昇格の際に行う試験に合格すれば良かったところに、更に条件が付け加えられたという訳か……」

「ですね。その中でも私達にとって壁になりそうなのは、③の条件になります。依頼の連続達成や昇格試験はいつも通りですし、S級相当の依頼の達成も今回でクリアしました。ですが、中規模国家以上の国王との繋がり…… この点だけは、未だ何の繋がりも持っていない状況です」

「そう言えばだけど、まだグラノラ王国の王様にも会った事がなかったよね? ハッ、もしや王様、とっても人見知り!?」

「いや、単に私達と接点がないだけだと思うのだが……」

「まあ、王様が何かの用事で街に顔を出す事があったとしても、私達は依頼を受けて各地を飛び回って、王都を不在にしている事が殆どでしたし、そもそも会える機会がありませんでしたから。かと言って、許可してほしいと王城に直談判しに行く訳にもいきません」

「つまり、手詰まり!? どどど、どうしよう!?」


 微妙に韻を踏みながら動揺する美味。いや、ある意味で余裕があるのだろうか。


「まあ、素直にブルジョンさんやエスタさんに相談した方が良いでしょう。後でそれとなく、私の方から聞いてみますね」

「よし、甘露ちゃんに任せた! 適所適材とも言うし、お姉ちゃんはこのご飯を食べるのに専念します!」

「おお、それなら私も自信があるぞ! 任せてもらおうか! 適所適材として!」

「待ってください。この場は私にとっても適所適材ですから。あ、店員さん、おかわり追加で」


 S級昇格への道のりを特に重く考える事もなく、広く浅く出禁にならないレベルで(?)、三人は王都の食を楽しむのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] S級冒険者の変人具合といいS級昇格条件も併せてその内にセルシウス家の方々が出そうな気配が。
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