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見えるスマホ

作者: みぶ真也

 それに気づいたのは、機種変更してから最初の彼岸の日だった。

 家族で墓参りをし、並んで写真を撮った。

 画像を開いてみると、五人家族の後ろに何十人もの人が並んで写っている。

 後の方には紋付羽織袴の男性や日本髪を結った女性が立っており、手前に来るほど服装や髪形が現代に近づいてくる。

 父の後ろに立っているのは、間違いなく7年前に亡くなった祖父だ。

 あまりのことに、家族には打ち明けず帰りに寄った寺の住職にそれを見せた。

「おお、俊之助さんに、太兵衛どん、おまつさんもおるな。懐かしい」

 住職はむしろ嬉しそうだった。

「これは皆さん、壬生家の代々のご先祖ですな」

「どうして、写真に写り込んだんでしょう」

「お彼岸なんで、墓参りに来た皆さんをお迎えしてるんでしょう。それが写ったのは写真機に霊の姿を捕らえる能力があるからでしょうな。

 もし、気になるようなら、これを差し上げます」

と、紙に包んだ金属を仏壇から取り出した。

「これはなんですか?」

「これはこの寺で修行した僧の剃髪に使用したかみそりです。執着を断つ力を秘めておるので、これを持ってその紙に書いてある文言を唱えると大抵の悪霊は消えてしまいますな」

「ありがとうございます」

 かみそりをポケットに入れて、帰り道で携帯ショップに立ち寄る。

 休日ということで混んでおり、やっと順番が来たので事情を説明すると、担当者は本部と電話でずいぶん長いやりとりをした末

「お客さん、申し訳ありません。

 このスマホの内蔵カメラは感度が良すぎて心霊にまで反応してしまうようなんです。

 写るはずのものがちゃんと写らないのであれば不良品ということで交換できるのですが、写らないはずのものが写るというのは、むしろカメラ感度が高いということになり、交換や修理の対象にはならないんです」

と、(てい)よく返された。

 店を出てから携帯ショップを写してみると、ここにも何体かの霊が飛び交っているのが目に入る。

「これは、もしかしたら…」

 名案を思いついて、帰りを急ぐ。            


 それ以来、スマホで撮った写真や動画を心霊写真、心霊動画としてyou tubeにアップしてみた。

 たちまち視聴回数が10万回を超え、さらに増えていく。

 広告が入り、それが結構な副収入になった。

 何しろ、スマホで写せば、ほとんどの場合、霊の姿が現れる。

 毎日のように心霊写真をアップしているうちに、テレビでも取り上げられ、有名な霊能者が「これはホンモノです」とお墨付きをくれた。

 役者をやめてユーチューバーで食べて行こうかと考えていた矢先、一人の女性からラジオ関西に連絡が来た。

「みぶ真也様 はじめてお便りを出します。毎週、ラジオで怖いお話を楽しみにして聴いております。実は、私は最近、新しいアパートに引っ越したのですが、どうも不思議なことが続いて困っています。

 確かに止めたはずの水道の蛇口がいつの間にか開いていたり、閉めたはずのたんすの引き出しが開いていたり、一つ一つはたいしたことではないのですが、あまりにもおかしなことばかり続くのです。

 不思議な世界のことをよくご存知のみぶさんなら、何かアドバイスいただけるかと思いお手紙を書きました」

 ぼくは早速彼女に連絡を取り、そのアパートへ向かった。

 静かな住宅街、スマホで見ても怪しい霊はいない。

 アパートの前まで行くと、彼女が出迎えてくれる。色白の美しい人だった。

「みぶさん、こちらです」

 階段を上がり、彼女がドアを開けた途端、何かがぼくの首を絞めて来た。スマホで見ると、恐ろしい形相の男の霊だ。とっさに、住職に貰ったかみそりを出し、紙に書いてある文言を唱える。

「南無帰依仏、南無帰依法、南無帰依僧」

 亡霊は二つに切れるように分かれて消えてしまった。

 you tubeにアップしたその時の様子は数日で100万回以上視聴され、男の霊は“アパートの亡霊”として人気者になった。

 同時に、彼女のアパートの異変はなくなったようだ。以前、この部屋にはお笑いタレントが住んでいたらしい。有名になりたいという執着心が満たされて成仏したのだろう。

 ちなみに、ぼくのスマホには今でも霊が写る。。。。


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