第58話(1201年2月) 「江口の戦い④」
◇◇薫視点◇◇
侍大将の頭を打ち抜く。これで何人目だろう。
「もう殺しても、殺しても。全然、退かないじゃないの!」
一万近い兵が竜宮屋に殺到している。
千挺の銃が火を吹けば、敵は後退すると思っていたのが間違いだった。後ろからの押し寄せる兵が怪我をした兵であろうが前へ前へと押し出すのだ。おかげで前列の兵が盾の役割をして、銃撃の効果が出ていない。
それにしても尋常な攻勢ではなかった。打ち鳴らされる戦鐘は、敵大将の激しい怒りを表すかのようだった。
「藤原様! おろおろしてないで指示を出してよ! 正面はもう突破されるわ。竜宮屋の外にいる遊女たちを川に退却させて!」
「ほ、ほな、そうします! みな、はよう逃げるで!」
「藤原様まで逃げてどうすんのよ! 二階に上がって瓢箪爆弾を投げて!」
――お願い、間に合って!
◇◇八田筑前守知家視点◇◇
よくも! よくも! わしの息子を。
危険を教えるつもりだった。だが、殺されようとは。
「静御前を囲んでいた、千が壊滅!」
竜宮屋を囲んでいるのはいい。だが、この死体の山はなんだ!
「千人が死亡。千人が深手を負っています」
三千が死亡、千が負傷だと。遊女屋を襲っただけだぞ。
頭上で何かが光った。鳴り続ける破裂音といい、何なんだこの敵は?
「あの武器を知っております。鎌倉で尼御台を殺したものと同じです。
テロリストまで繋がっておるのか、この色里は!
「このままだと、後、千は損害は出ます。どうしますか?」
「どうするも、こうするもないわあぁっ! 遊女相手に負けては、恥ずかしくて鎌倉に帰れぬ。ものども、恥を日本中にさらされたくなければ、皆殺しにしろ!」
いくら銭があろうが割に合わぬ。わしの嗅覚にしたがうべきだった。
◇◇後鳥羽上皇視点◇◇
竜宮屋・地下の金蔵
頭上が騒々しくなってからずいぶん時が経つが、まだまだ収まりそうな気配は無かった。
太刀を抜いて確かめる。名のある刀匠を宮城に呼んで作らせたものだ。
一尺四方の大きさの扉の窓を覗くと、地下へ降りてくる者が見えた。知らぬ顔だ。目が血走っておる。朕は鍵の締まった扉越しに命じた。
「下がって跪け。朕は上皇である」
「上皇だぁ。そんな偉い人がこんなとこに隠れているわけねえだろ!」
下郎が。叩き斬ってやりたいところだが、鍵は零夜叉が持っていた。
扉から離れて、構える。
扉の鍵をこじ開けようとする下郎を窓から突き殺した。
「気をつけろ。窓から離れて鍵を壊せ!」
何人も武士が降りてくる。
鍵がついている鎖に太刀を叩きつける音が響く。
太刀が使い物にならなくなるではないか、馬鹿な男だ。
地下室の武士たちが悲鳴が聞こえた。
窓を覗き込むと、お亀とお菊が小太刀を持って戦っていた。
「陛下! 御身はご無事で良かった」
「おお、
だが、地下室に降りてくる兵は途切れることなく。二人は徐々に血に染まっていく。
「もうよい、こっちに来い! 朕が守って――」
しかし、扉が開かない。
「降伏しろ! もう戦うではない!」
太刀を鎖に何度も叩きつける。
名刀だろ! 切れよ! 切れよ! 切れよ――っ!
クズどもが雑音を発している。
「なんて小娘どもだ。手こずらせやがって」
「……何が朕が守ってやるだ。女子に守られて、何が帝王だ」
「く、鎖を斬ったのか!」
全身が怒りでどうにかなりそうになる。
「下郎ども、万死を賜れ!」
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ここまでご愛読いただきありがとうございました。
ブックマークの伸びが見込めず、一度練り直さそうと思います。
すいません! 次はもっとおもしろいものを書けるよう頑張ります。




