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梶原殿と12人  作者: キムラ ナオト
陸の元老 二階堂民部大夫行政
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第55話(1201年2月) 「江口の戦い①」

◇◇八田筑前守知家視点◇◇


 平安京郊外の六波羅では、各街道から兵を集めながらやってきた幕府軍が駐屯している。しかも兵は六万ではなく八万にまで増えていた。聞けば大江広元の指示だという。誰もかれも好き勝手に動いておる。

主だった将は、京都守護所で二階堂から状況の説明を受けた。敵は二万五千まで増えており、摂津国福原を中心に守りを固めているらしい。


「それから江口の色里は攻めるのは厳禁ね」


「善信入道が殺されたところだな。これだけの兵がいて、仇を取らねば幕府が舐められるぞ」


「あの場所は上皇が関わっているのよ。藪を突いて蛇が出る、なんてことは避けたいわ」


「本当かのう。どうも信用できぬ。だいたい、おぬしの報告は遅い。西国の乱の情報をこの瓦版のほうが早かった」


「あれは予想よ。恐ろしく当たっているけど、すべてが正しいわけではないわ。信じたければ、どうぞ瓦版をお信じなさい。米の相場についてどう書いてあるかしら?」


「西国・畿内では米が大豊作で値が暴落している……」


「まったく逆だわ。こちらで兵糧を調達しようと思っていたら、木曽義仲の二の舞になっていたわよ。私を信じて兵糧を持ってきて良かったわね」


「むう……」


 確かにそうだった。しかし、この男は信用できぬものを感じるのだ。江口の色里には二階堂の利権があるのではないか。わしの嗅覚がそう告げている。


 軍の編成が決められた。和田と北条の大手軍六万の兵で摂津を攻め、わしが二万で守護不在となった四国を攻める。渡航に船が集まるまでは、しばらくやることはなさそうだ。


 北条も大江も二階堂も好き勝手やるのなら、わしもやってもよかろう。

 郎党に命令する。

「江口の色里を調べろ」



◇◇梶原平三景時視点◇◇


「テロリ様、兵糧の集積場所はまだ見つからないわ」


 江口の色里は一ノ谷陣地と京都の中間点にある。俺はそこで密偵を放ち、幕府軍の動向を探っていた。江口の遊女たちというと戦争に怯えることもなく、戦争後の特需に期待して活気づいている。実にたくましい。さすがに公家はおとなしく京にいるようで、竜宮屋の客は少なかった。


「二階堂が来ているわ。今、藤原様が案内している」


「案内? どこにだ」


「上皇様のところよ」


 俺は竜宮屋に預けてあった銃を取り出すと、稽古屋敷に向かった。



 稽古屋敷の窓から中を伺うと、上皇、お亀、お菊、二階堂、高衡、零夜叉がいた。


「上皇陛下、こちらは危険です。すぐに宮城へお戻りを。欲深き者がこの色里を嗅ぎまわっております」


二階堂(民部大夫)、ここにいるのが何故わかった? 上手く変装したと思っていたのだがな――」


「色里に出入りする染師が零夜叉を見ました」


「卿にとっては職人が密偵ということか。黒布を顔に巻いているものなど、そうはおらぬからのう」


 上皇は何の変装もしていない零夜叉を見て苦笑する。


「民部大夫。京へ戻る船を用意しろ」


「すでに一艘用意しております」


「朕だけではなく、竜宮屋の白拍子も助けたい」


「時がありません。万の兵に囲まれては――」


「菊や亀たちは、朕が親しくなった初めての民だ。同門の弟子でもある。民部大夫、これは勅命だ」


 上皇はお亀とお菊の手を握って笑った。


「――わかりました。戻ってくるまでは、安全なところへお隠れになっていてください」


 

二階堂と高衡が稽古屋敷から出て行く。俺は道へ戻ると、二人の前で銃を構えた。


「二階堂! 頼朝公の命により、お前を誅殺する!!」

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