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梶原殿と12人  作者: キムラ ナオト
陸の元老 二階堂民部大夫行政
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第51話(1200年12月) 「次の戦場」

◇◇梶原平三景時視点◇◇


 播磨国府のある姫路には、一万五千の兵が集まっていた。他にも水軍が五百艘五千人。総勢二万の軍だ。領土こそ増えはしなかったが、『西国の大地と海は西国武士のもの』というスローガンを見た、武士たちが集まってきたのだ。その光景を丘の上から感慨深く眺めていたのだが、水を差す男がやってきた。


「保つのが難しいっちゅうても、せっかく稼いだ領土を捨てるのは、もったいないんとちゃいますか? 後一年で五カ国ぐらい領土を増やせなかったら、破産でっせ」


 ソロバンの音をパチパチ鳴らしながら、藤原高衡がぼやく。


「戦意が萎えるようなことを言うな。お前も昔は可愛い少年だったんだがなあ……。今は嫌味ばかりいう狸に変わってしまった」


 高衡が突き出た腹をなでる。


「見た目でいうたらあきまへん。二階堂様は今でも、坊や、と呼んでくれはります」


 義経と室平重広が丘に上がってきた。


義経(カルラ)重広(シゲ)。上出来だ」


「上手くやったのは僕さ。シゲなんか二千も失ったんだよ」


「相手が佐々木高綱なら仕方ないさ。ウチの嫡男もいつも手柄争いでよく負けていた」


「まったくでござる。なんで某ばかり強い相手に……」


 集まった一万二千のほとんどが、源平合戦に負けて所領を奪われ、生きるために源氏に仕えていた武士。つまり平家ゆかりの西国武士だ。


「兵の質はどうだ?」


「悪くないね。募兵した兵は西国の連戦を経験し一人前になった。新しく集まった兵は奪われた所領を取り戻そうと、みな燃えている。士気は高いよ」


「これで幕府軍を迎え撃つ兵はそろった。俺たちにとっての富士川の戦いにするぞ」


「うん。戦い方は任せてくれるよね」


「ああ、戦略の仕事はここまでだ。俺は十三元老殺しに専念する」


 義経はニコリと笑うと、弁慶を呼んで戦支度をするよう命令した。


「おい! 迎え撃つと言ったろ」


「軍の演習を兼ねて、東隣の摂津を攻めるだけさ」


「京を攻めじゃないだろうな」


「しないってば。前から考えていたんだ。摂津国・一ノ谷――あの戦場で僕は再び英雄になる」



 鍛冶工場では銃の生産が続けられていた。今では陸丸が監督しなくても作れるようになっている。幕府軍が来るまでには二千挺は欲しい。西国での戦いで、陸丸は鉄砲隊隊長、茜とお鶴は副官として臨んだが、備前国の戦い以降、出番は多くなかった。


「お前の作った火薬具足に命を救われた。体中、打ち身になったけどな」


 不死身の十郎に襲われたときの話をした。


「おかしいなあ。猪で試したときは、元気に走ってたのに」


 俺は猪ほど頑丈じゃねーよ。


「あの鉄の柱はなんだ」


「お館様に作れ、って言われた大砲だよ」


 3mの長さに直径30cmの円柱で、真ん中に10cmの穴が開いている。思っていたのと違って、えらく穴が小さい。これより砲口を大きくすると撃つたびにヒビが入るらしい。重さも五百貫と乗用車並みで、移動させるのにも苦労しそうだ。


「思ってたのと違う。穴が小さくてカッコ悪い」


「止まっていて、大きな相手じゃないと当たらないよ。もう一本作る?」


 きっと知らない技術が必要なのだ。俺は首を振った。



 製紙工場で紙漉きの音を聞きながら、瓦版四号の記事を考える。二号は外したが、三号の「西国で大乱! 播磨に集まる大軍の狙いは?」は当たった。四号は――。


「播磨軍、幕府を一ノ谷で破る!」にしよう。


 しかし、つまんないな。嫌だが静御前に見てもらうか。


 俺は薫を連れ、江口の色里へ向かった。

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