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梶原殿と12人  作者: キムラ ナオト
伍の元老 比企藤四郎能員
52/61

第49話(1186年) 回想「貿易王子」

 陸奥国・気仙沼。この港から藤原家の貿易の拠点である十三湊へ向けて奥州金が運ばれる。大きな港町ではないが、なかなかの賑わいだった。ここから西へ二十kmほど行けば、奥州藤原家の本拠地・平泉がある。


「ありがとう、平三。礼物を連れてくるから、宿場に止まっててよ」


「父上、鮫が食せる宿にあるようです。きっと強くなれますから、ぜひ泊まりましょう。馬市場も見に行って良いですか」


 いい気なものだ。景季は旅行として楽しんでいる。

 この港一番の大きな宿に入ると景季を馬市場に行かせ、二階の部屋で考える。


 義経の安全は確保したが、いずれは鎌倉が攻めてくる。それまでに異国へ逃げてくれればいいが、言うことを義経が素直に聞くかどうか――。


「あら、景時ちゃんじゃない?」


 女の姿の妖しい貴人。白檀の香り。


「二階堂――。どうしてここに」


「それはこちらが聞きたいわ。アタシが頼朝様から奥州を任されているのは、知っているでしょ」


「ああ、そうだったな。俺はその――」


 景季の顔が浮かんだ。


「た、旅だ。中尊寺金色堂を一度、拝みたいと思ってな」


「それはいいわ! あれは美しい。見えないところでさえも!」


 そうとう好きなんだな。二階堂が興奮して話すのを初めて見た。


「奥州の財をつぎ込んで、慶派の仏師も呼んでいると聞く」


「仏像が好きなのかしら?」


「俺が好きなのは面だ」


 上総介の獅子面を被ってから、気になるようになり、平安京でもいくつか買っていた。


「早く見ないと、戦で燃えてしまうかもしれないからな。いつまで見られると思う?」


「秀衡に聞いてみたら? 貴公はいつまで生きているの?って」


 そういうことか。頼朝は秀衡が死ぬのを待って、攻め入るつもりだ。



「父上―! 良い馬がいたので買ってしまいましたー!」


「あら、梅花の武者もいっしょなの」


 外から景季の大声を聞こえてきた。一ノ谷で梅の枝を差して戦ったのが評判になってから、景季を「梅花の武者」の二つ名がついていた。

 俺は二階堂を連れて、外が見えるところまで連れて行く。


「二階堂も来ている。酒を買ってきてくれ」


 頼んだぞ。息子よ。



 しかし、四半刻後、俺の期待は外れた。俺と二階堂の前に、育ちの良さそうな少年に太刀を突き付けた義経が現れたのだ。義経に伝えるかと思ったのに、本当に酒を買いに行きやがったな、馬鹿息子。


「義経、早く逃げ――」


「平三あぁ! 死ねえぇぇぇ!!!」


 義経が太刀を振り下ろすのを、慌ててかわす。二の太刀を交わし、三の太刀を小太刀で受け止めたとき、酒を持った景季が帰ってきた。


「父上!」


「くそっ! 覚えていろ!」


 義経は二階から飛び降りると、景季の馬を奪って逃走した。

 この時点で俺にも芝居だと気づいた。俺に疑いがかからぬよう義経が考えたのだろう。


「ああ――っ!」


 馬を盗んだのはアドリブだな。景季が本気で残念がる姿を見て思った。

 ところで、この少年は誰だ?


「坊や、怪我はない?」


「知っているのか? 二階堂」


「藤原秀衡の四男坊、高衡ちゃんよ。元服してすぐ奥州藤原家の貿易を任されてるのよ。ね、貿易王子」


 これが、俺と藤原高衡の出会いだった――。


◆◆◆◆


◇◇梶原平三景時視点◇◇


 向けられた銃口を見て笑う。


「また、いい出会いがあるといいな」


「変なことを言ってごまかさないで! 私は元老を――」


「慌てて狙わなくてもいいさ。播磨で待っていれば向こうからやってくる。俺を信じろ。嘘を言ったことがあるか?」


「わかったわ。テロリ様を信じる。予想は信じないけど」


 瓦版をひらひらさせて、薫は笑った。

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