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梶原殿と12人  作者: キムラ ナオト
伍の元老 比企藤四郎能員
45/61

第42話(1200年9月) 「狙撃の代償」

◇◇梶原平三景時視点◇◇


 旧上総介邸の屋根の上で残暑の日差しを受け、俺は汗だくになっていた。飯をかじりながら待っていると、大倉御所のほうから政子の輿がやってきた。素早く回転式火縄銃を構える。距離は五十mもない。八発全弾撃ち込めば、仕損じることはない。


 今日はいつもと違い輿が二つあった。襲われるのを警戒しての偽装か? いや違う、輿の横にある御簾は上げてある。一人は当然、政子。もう一人は、銀髪の男――。


「朱塗りの大傘を持つ郎党が日差しを防いでいる。間違いない、大江だ」


 咄嗟に銃口を大江に向け、引き金に指をかける。


 いや、待つんだ。動揺してどうする。これじゃあ薫と変わらないじゃないか。六条のときのようにミスしたら、二人とも撃ちもらすことになる。大江の側には不死身の十郎もいるのだ。


 銃口を政子に戻し、引き金を絞る。パーン! パーン! パーン! パーン!

 銃声が鳴っても、政子の従者はしばらく何事が起こったか、わからないようだった。異変に気付いたのは、血まみれの政子が輿から地面へ崩れ落ちてからだった。さらに政子に二発撃ち込むとこれも当たった。


 よし、残りの二発はお前のものだ、大江!


 銃口を大江の輿に戻すと御簾が下げられていたが、お構いなしに撃った。

 すると、バン、バンと音を立てて防がれた。


 なんだ、あの御簾は鉄でも巻いてあるのか? だとしたら――。


「その奇妙な笠。京にいたテロリストという賊か?」


 ぎょっとして声の方を見ると、背は曲がり、青白い肌をした不死身の十郎がいた。

 連射したせいで、俺の周りにはまだ銃煙が漂っている。煙をたどられたか。


「シェアッ!」


 十郎が脳天に振り下ろしてくる太刀を、何とか銃身で受け止める。


「その武器、そのようにも使えるのか? 便利じゃのう」


 腕にしびれがずっと残っている。今は大江の護衛をしているが、元は義平十七傑の一人、金子十郎家忠だ。生半可な斬撃ではない。ここまで間合いを詰められたら、短筒を取り出す間に斬られるだろう。

 銃の火縄を自分に向けてガードする。


「テロリスト。胸がガラ空きだぞ。斬り合いをしたことがないのか?」


 十郎が斬りつけるのと、同時に火縄を胸につける。

 すると、小さい爆発が起こった。陸丸の新兵器だ。

 俺と十郎は逆方向にふっとび、屋根を転げ落ちる。


 ぐおおお、やっぱり痛い、苦しい、息ができない……。


 懐から薄い鉄板を取り出して捨てた。鉄板の上には鉄のお椀がくっついており、そこに火薬を詰めていた。指向性とまではいかないが、爆風はお椀の逆の方向に向かう。


 這いつくばりながら、短筒を手に取った。足音が聞こえてくる。


「やるのう、テロリスト。見ろ、わしの体が傷だらけじゃ」


 不死身の十郎があの程度で死ぬわけはないよな。狙うなら眉間しかない。

 連続で引き金を絞る。だが、腕が、手が、傷みで震えて当たらない。


「首とその武器でチャラにしてやろう」


 不死身の十郎が飛び掛かろうとする。しかし、十郎は前のめりに倒れた。裏山から銃声が聞こえる。十郎が立ち上がるたびにガクンと膝を落とす。


「仲間か? しかし煙が見えぬ」


 十郎は足を隠すように太刀を逆手に持った。


 ガサガサッという音と共に茂みから五人の義経兵が現れ、俺の肩を担ぐ。


「待てぃ、テロリスト――」


 十郎の声は義経兵が投げた瓢箪爆弾によってかき消された。


◇◇◇◇


 俺が義経兵の肩を借りて隠し村に引き上げる間、ずっと薫は泣いていた。


「ごめんなさい! 私が狙撃を失敗したから、敵に備えをされたんだわ。私せいよ!」


「いや、薫の援護射撃のおかげで助かった。本当に感謝している。だから、もう泣くな。それに――この怪我は母親を撃った天罰だ。薫に撃たせなくて良かったよ」


 薫の頭を優しく撫でる。


 テロは成功した。もう争いを止める者はいない――。

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