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梶原殿と12人  作者: キムラ ナオト
参ノ元老 中原掃部守寂忍
22/61

第20話(1200年3月) 院政

 平安京の郊外の林の中。


 上総介のことを思い出すと、いつも手を見てしまう。罪がそこにあるかのように。


 木に縛られている中原掃部頭寂忍なかはらかもんのかみじゃくにんが、得意げに言った。


「上総介か。あのときは私が頼朝様から調査を一任された。思い出せ、私が弁護したからこそ、そなたは忠臣となり罪を受けなかったのだ」


「俺は罪を受けたかったんだよ! あの後、俺が誤って殺したとどれだけ訴えても、お前は取り合ってくれなかった。そして、上総介一族も謀反者として処罰され、所領は三浦介義澄(みうらすけよしずみ)の預かりとなった」


「忘れてもらっては困るな。上総介の罪も後に晴らしてやったではないか」


「平家を滅ぼした後でな! 上総介は冤罪となり、名誉は復活した。だが、そのころには上総介の一族は衰え、関東の小豪族の一つになっていた。智者を気取っているが、お前の知恵は悪知恵だ。そんな頭脳は吹っ飛ばしたほうがいい」


 銃の火縄に火をつけると、寂忍の頭に銃口を向ける。

 寂忍が俺を睨みつける。


「愚か者め。しょせん開拓民(野犬)の末裔だ。頼朝公にしてもそうだ、野犬の頭でしかなかった。京都に幕府を移さず、朝廷を御すだと? 外戚になるだと? 頭がおかしい。関東から動かぬだと? 私は頼朝公を野犬の王にするために、身を捧げたのではない!」


「それだけ自白すれば十分だ」


「不満だけで殺すのか! 反対だけで殺すのか!」


「上総介もそうしただろうが!」


 銃声が林に響き、寂忍の頭が砕けた――。


◇◇◇◇


 三日後、俺たちは摂津国の大港・渡辺津でペリー号の出港準備をしていた。陸丸が牛車を吊り上げて搬入している。内大臣が使っていた物なので、惜しいのはわかるが、牛車なんてものは、平安京のような整備された道路があってこそ、役に立つものであって、地方都市程度じゃ、無用の長物だ。


「いい子よ、陸丸くんは」


 黒髪をポニーテール風にまとめた女が声をかけてきた。参河国で救った安達藤九郎の六人の妾のリーダー格で、薫と言った。宝塚の男役のような凛々しさがある。


「戦いに巻き込んで悪かったな。銃まで使わせて」


「銃の扱い上手かったでしょ? 陸丸くんがみんなに教えてくれたの」


「また、いいとこ見せようとして……」


「そうじゃないわ。こっちからお願いしたの。戦いの役に立ちたいって。ここって、テロリストとかいう名の反乱軍なんでしょ。何もしなければ捨てられちゃうわ」


「俺は誰も見捨てはしない」


 薫は真っすぐな目で見つめてきた。


「いい人ね――みんなにも伝える。きっと安心するわ」


 ペリー号の甲板から声がする。


「お館様――っ! オイラの姫たちにちょっかい出しちゃダメ――っ!」


 俺と薫は目を合わせて笑った。



 義経に会いに行くと、義経が平安京に置いてきた密偵が戻ってきていた。


「平三、あの日から小山朝政が姿を消したらしいよ」


「きっと、死んでいるな。上皇は約束を守る御方のようだ」


「そして、恐ろしい」


「どういう意味だ」


「姿を消したのは小山だけじゃないよ。内大臣・土御門通親もだ。さらに、北面の武士が全員殺された。上皇は新たに西面の武士を作るらしいね」


 足立遠元(零夜叉)の仕業だ。というか、やつにしかできない。


「土御門通親が死ねば、上皇に意見する者がいなくなる。北面の武士も一新した。これからは強力な院政が行われる」


「おもしろくなってきたね」



 頼朝の誅殺状(殺せリスト)を拡げる。

 三浦介義澄、安達藤九郎盛長、中原掃部頭寂忍の三人の名は、彼らの血で消されている。

 残るは九人。すべて消したとき、頼朝様の命令と俺の復讐が終わる。


 そのとき、俺は上総介のように強くなれているだろうか?

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