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梶原殿と12人  作者: キムラ ナオト
参ノ元老 中原掃部守寂忍
16/61

第14話(1200年3月) 陸丸と牛車①

◇◇梶原平三景時視点◇◇


 俺は銃の照準を向かってくる兵から、奥にいる大江広元に移す。

 二代目の前で俺を見捨てた、あの顔を忘れはしない。


 銃口が火を吹く。しかし、大江広元に異変は起こらなかった。


 くそっ! 距離が遠い。もう一度!


 銃声が鳴る――だが、倒れたのは隣の武士だった。


「お館様、どうしたのさ。急に当たらなくなったじゃないか。しっかりしてよ!」


「早く次の銃を寄越せ。敵の大将を打ち抜いてやる!」


「大将だって? あんな遠くの敵に当たるわけないよ! 向かってくる敵を撃たないと、オイラたちが斬られちゃうんだよ!」


「わかってる! 次こそ当てる!」


「馬鹿お館! もう銃を渡さないぞ」


 陸丸の悪態は俺の耳には入らなかった。呼吸を整え、血の激流を鎮める。


――南無八幡大菩薩。


 集中力が極まったとき、俺は神の名を唱え、引き金を絞った。


 この弾は必ず広元に届く。


 確信めいた予感は半分当たり、半分外れた。広元に当たる寸前に、青白い影が広元の前に飛び上がり、銃弾を受けたのだ。広元は馬を返すと、護衛に守られながら後ろに下がっていった。


 俺は拳を叩きつけ、次の銃を手に取ろうとした。だが、陸丸の姿は側には無かった。


「くそったれ!」


 敵兵は目前に迫っていた。腹が立ったが、陸丸が怒って逃げるのも仕方ない。俺は牛車から飛び降りた。こうなったら、全力で逃げるだけだ。


 パパパパーン!!!


 幾つもの銃声が聞こえた。振り向くと敵兵がバラバラと倒れていく。

 隣の牛車の後方から、安達藤九郎の妾たち6人が銃を構えているのが見える。

 状況を理解できない俺の耳に陸丸の詫びるような声が聞こえた。


「ごめんねー、オイラの姫たち。贈り物の牛車に焦げ目がつかなかった?」


 あのマセガキめ。牛車は女のために盗んだということか。


「さあ、姫たち。こんな怖い場所から逃げようねー」


 陸丸は牛に鞭を入れて牛車を走らせた。


「おい! 陸丸! 俺も乗せろ!」


「定員いっぱいだよ。お館様は走って逃げて。姫たちを危険に合わせた罰だよ」


「何が姫たちだ。お前が勝手に連れて来たんだろうがあああっ!」


 走りながら叫ぶ。もう反撃はないと思っただろう。道をふさぐほどの人数が追いかけてきた。


 ゼイ、ゼイ、今日は何度目のダッシュだ。斬られる前に肺が破れて死ぬかも……。


 そう思ったとき、後ろで雷が落ちたような音がして、俺の身体がフワリと浮いた。

 牛車とともに前を走っていた陸丸が振り向いてニヤリと笑う。


「お館様、もう追手はこないよ」


 俺の背後には粉々になった牛車と無数の死体が転がっていた。



◇◇◇◇


 平子(不死身の)十郎は轟音から大江広元を守るように前に立っていた。右肩に受けた銃創を不思議そうに触っている。


大江広元(別当)殿。あれは落雷……かのう?」


「いや、空は晴れている――術かもしれん。引き返して見てみたい」


「危険じゃ。雷相手ではわしでも守り切れぬ。京都守護所へ戻ってはどうだ?」


「無用だ。占いではこの地は凶と出ていない。むしろ凶と出ているのは――」


 広元は最後まで言わず、口の端で笑った。



◇◇中原掃部頭寂忍なかはらかもんのかみじゃくにん視点◇◇


 京都守護所に騎兵が侵入してくるのを、じっと観察していた。しかし、知っている将も郎党もいなかった。わかっているのは、敵の策に嵌まったことだけだった。密偵頭が退避を促してきたが、私はうなずかなかった。


「こちらの罠を読み切って、裏をかいてきた将だ。逃げても無残に殺されるだけだ。ならば、捕まったほうが活路はある。敵の狙いは私だ。そなたは隠れていれば助かる」


 奇妙な面をつけた将が回廊に近づいてきた。


「落ち着き払っていて、つまんないなー。もっと悔しそうな顔をしてよ。勝った気がしないじゃないか」


「そうではない。感心していたのだ。卿の主は誰だ?」


「僕が主だ」


「ふむ。ならば、この乱はすぐ治まるな。卿の言葉は軽い。それでは誰もついてこぬ」


「――負け惜しみだね。ムカつくけど、あいつが殺したがっているから、我慢してあげるよ。弁慶、寂忍を縄で縛るんだ。痛いぐらい強くやって!」


 まるで子供だな――しかし、この物言い、どこかで聞いた記憶がある。


「あいつとは何者か?」


「源テロリストさ」

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