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讃えよ、眼鏡を Ah───!!!  作者: ローリング蕎麦ット
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第七話


 マリーの村で作った眼鏡は、クリスティナにとても好評でした。


 各段にかけやすく見やすくて、クロード大好き!


 ちゅっ!


 とまではなりませんが、かけやすくて見やすいのまでは確かでした。


 クロードにもクリスティナの眼鏡ショーは好評でした。


 ヘヴンしっぱなしでした。


 後半もうトリップしすぎて、行ったことも学んだこともない様々な外国の言葉をしゃべり始めました。


 その時のクロードの顔は、十二使徒に劣らぬ聖なる顔であったとクリスティナは語ります。


 使徒行伝に謳われる、聖霊降臨の再来でした。


 眼鏡と修道女と巨乳の三位一体で、この修道院が聖霊に満ちたのです。


 改良された眼鏡の話は、たちまち村に知れ渡りました。


 視力が回復するということで、村の老人達からもクロードに声がかかりました。


 しかしクロードの鍛冶場ではレンズの製作ができません。


 ひとしきり希望者を募り、各人の顔の形を記録して、マリーを訪ねることにしました。


 それをクロードはクリスティナへと一声かけておきました。


「というわけで、またちょっと留守にするよ」


「行ってらっしゃい、クロード。私、本当に眼鏡に助けられてるの。だから他の人をクロードが助けてあげるの、とっても素敵だと思うわ」


「おう、任せてくれ。最初は本当にクリスティナと眼鏡の組み合わせで萌えていただけだったが、今では誰かを助ける充実感でいっぱいなんだ」


「うん、そうやって生き生きしてるクロード、とっても格好いいな」


「ん゛ん゛!」


 クロードがトリップしかけましたが、何とか耐えました。


「クリスティナ、もうひとつ、お前にも眼鏡を作ってくるよ。いくつも眼鏡をかけてもらって、もうひとつ、さらにいい眼鏡の構想が浮かんだんだ。最高の眼鏡になると思う」


「楽しみにしてるわ、クロード。早く帰ってきてね」


「ん゛あああああ!」


 はにかみながら眼鏡越しの上目遣いをされて、今度は耐えられませんでした。


 こうしてクロードは村を留守にして、マリーの手伝いをしながら、空いた時間に工房を借りてレンズを作りました。


 もうすっかりマリーとはいいコンビです。


 何日もかけて、村で募った希望者分の眼鏡をこしらえました。


 そして、最後に全身全霊を懸けた最高の眼鏡をクリスティナのために作り上げました。


「クロードさん、凄い眼鏡ですよこれは!」


「ああ、俺の最高傑作だ!」


 意気揚々とクロードは村に帰ります。


 日が傾いた頃、村に辿り着いて眼鏡希望者の老人達を訪ねて眼鏡を配ろうとします。


 しかし、


「い、いや、やっぱり要らん。そんなものは要らん!」


 と眼鏡を拒絶されました。


 村で希望してきた者達全員がこの調子でした。


「なんだよ、せっかく作ってきたのに」


 クロードは眼鏡の素晴らしさが拒絶されたように感じてしまいました。


 ふてくされながら修道院へと向かうと、修道院長が怖い顔でクロードを迎えました。


「クロード、よく聞きなさい。クリスティナはあなたのせいで、ローマへ裁判のために連れていかれました」


「な、なんだって!?」


「この悪魔の道具のせいです」


 院長がクリスティナに送った眼鏡のひとつを指して言います。


「め、眼鏡の何が悪魔の道具だってんだよ!」


「ローマからの使者の論調はこうです。視力が衰えるというのは自然なことなのです。神の作りたもうた、自然の理。神の理に耐え忍ぶでなく、このような道具を使ってそれに反するというのは冒涜なのです。その罪を裁くため、ローマへ連れていかれたのです」


「そんな馬鹿な!」


「最後まで、クリスティナは眼鏡を……クロード、あなたを弁護し続けました。しかし……」


 院長の震える唇が、言葉を最後まで紡がせずに消してしまいました。


 クリスティナにリーディングストーンを与えて、視力の助けにしたのはそもそも院長です。


 忸怩たる思いがないはずがありませんでした。


 クロードも打ちひしがれてorzとなります。


 家に帰って、クロードは消沈し続けました。


 傍らには、老人達のためにつくったいくつもの眼鏡。


 そしてクリスティナへと贈るために完成させた至高の眼鏡。


 クロードは鍛冶場でひとり、夜を徹して打ちひしがれてうなだれていました。


 しかし、黎明と共に顔を上げます。


「やっぱり、納得できねぇ」


 一晩をかけて、クロードは結論を出しました。


 眼鏡は悪魔の道具ではない。


「行こう、ローマへ」


 決然とクロードは言葉にします。


 しかしローマへの道など知りません。


 間に合うかどうかも分りません。


 それでも行くと決めました。


 クリスティナと、眼鏡を助けるために。


 絶望の荒野に、独り進む気持ちでした。


 ゴールへの道は分かりません。


 夜の闇よりも暗い道行きにしか思えません。


 それでも、犀の角の様にただ独り歩むしかない。


 クロードが旅支度をしている最中に、ひとりの女が訪れました。


「クロード、報奨の話をしに来た」


「あんたは、アレクサンドリーヌの従者の! 無事だったんだな」


「お前のおかげだ。お前があの時、早く私を返したおかげで、被害がかなり軽減できた。礼を言う。本当に、礼を言う」


「いや、いいよ。顔見知りが、死んじまうのは寝覚めが悪い。それで、そうか、報奨か。アレクサンドリーヌも律儀だなぁ」


「ルフィファーの使徒は誇りを重んじる。約束を違えるなど、誇り高き者の行いではないのだ」


「そうか。そうだな。だがすまん、今はそんな報奨なんて……」


 苦笑しながら、報奨の話などはローマから帰ってきてからに、と思ってクロードは止まります。


 絶望の荒野に、光が差す。


「なぁ……報奨なんだが、頼みがある」


「なんでも言うがいい。アレクサンドリーヌ様は、いかなる望みとて叶えてくださるだろう」


「俺をローマに連れて行ってくれ」



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