第五話
「ほう、なるほど」
それから試行錯誤を繰り返し、クロードとマリーはアレクサンドリーヌ用の片眼鏡を作り上げました。
完成品をかけて、アレクサンドリーヌはご満悦です。
その顔は、これまで見た中で最も優しくて嬉しそうなものでした。
すがめることのない右目は、睨みつける形ではないのに鋭利さで、理知と誇りの光が宿っています。
相変わらず革系のぴっちりした服を着ていて、エッチでした。
クールでおっぱい大きな女王様系美女なので、片眼鏡がとみに似合っていました。
「ふたりとも、御苦労だった。文句のつけようのない仕事である。かけ心地も、悪くはないではないか……礼を言う。大儀であった」
「よ、よかった……」
「鞭が似合いそう」
マリーは安堵し、クロードは思ったことを口走りました。
「わらわの武器はこの剣じゃ」
アレクサンドリーヌが細身の剣を抜き放ちました。
「良い鉄だな。しかし、なんだい、この溝は」
剣身に、一定間隔を開けて何本もの横溝が入っていました。
「ふっ、これはこうするためのものだ!」
アレクサンドリーヌが剣を一振りすると、なんと剣がいくつもの刃に分割しました。
それが一本のワイヤーで連なっていて、幾重にも翼を纏った蛇がうねるようです。
どう見てもガリアンソードす、本当にありがとうございました。
「こ、こいつはすげぇ、なぁ、そいつをもっと見せてくれないか!」
アレクサンドリーヌが蛇腹を納め直して剣を元通りにすると、クロードが目をキラキラ剣に見入ります。
「それが報奨でもよいのか?」
アレクサンドリーヌがにやりと意地悪く笑います。
「なんだよ、ケチだな。見せてくれるぐらいいいじゃないか」
「冗談だ。貴様はよくやってくれた。この剣をくれてやってもいい。報奨とは別にな」
「本当かい!」
「二言はない。それに加えて、望みの報奨を述べるがよい。叶えてやろう」
アレクサンドリーヌが、威風たっぷりにクロードとマリーを見渡します。
ふたりとも、じゃあどうしよっかなぁ、とわくわく顔です。
そんな時、アレクサンドリーヌの従者が慌ててやってきました。
「アレクサンドリーヌ様、教会の連中が攻めてきました!」
「なんだと?!」
「もうすぐ神殿が包囲されてしまいます!」
「流派やいかに!」
「赤天派です!」
キリスト教の赤天派は、強力な武力を持っている一派で知られており、異教や異端を攻撃する時の激しさは有名でした。
「……なんで教会に攻められるんだ?」
クロードは薄々答えを分かっていながら言いました。
「何を言っている。我々ルシファーの使徒と教会は不俱戴天の仇同士だ」
「げぇー!? ここは悪魔教の神殿だったのかーーーーー!!」
ルシファーの使徒とは、教会と敵対する悪魔信仰をしている人達です。
普通の人は教会の教えに従っているので、関わらないようにしなければならないヤクザな人達です。
なのに、そんな人のために片眼鏡を作っていたなんて!
騙された!
クロードはそう思いましたが、でもそういえば騙すも何も、全然アレクサンドリーヌが何者かを尋ねなかった自分に非があるなと思い直しました。
でもマリーはその隣で失神していました。
このまま教会の人たちに見つかれば、問答無用でルシファーの使徒認定されて殺されるの待ったなしです、無理ありません。
「案ずるな。貴様らふたりは、わらわの威信にかけて送り届けてやる」
アレクサンドリーヌが従者に指示を出し、マリーを背負います。
そしてクロードを導きました。
「クロード、マリー。此度の仕事、大儀であった。落ち着いた後、改めて報奨を下賜して進ぜよう。その者がおれば不安にかられるにあたわぬ。無事に故郷に帰るがよい」
アレクサンドリーヌが剣を手にし、その周囲にルシファーの使徒達が集います。
その勇ましさたるや、絵画の一場面のような神々しさがありました。
「赤天派の有象無象が何するものぞ! ルシファー様の加護ぞあり! 使徒達よ、いざわらわに続け!」
アレクサンドリーヌの戦いはこれからだ!
ご愛読、ありがとうございました!




