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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第6章 蒸気都市で、便利屋として走り回ります!
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フーリエちゃんが病気になった!!!

【クラウンロイツ家の令嬢姉妹、迷い猫と共に強盗犯を捕縛!】

 なんて見出しが一面に掲載された新聞など見向きもせず、全員がフーリエちゃんのベッドを囲んでいました。


「ヤバい……幻覚見えてきた……」

「熱は下がったのに、どうして……」

「で…………猫は…………どうな……っ!! ……た?」

「飼い主の元に帰りました。銀色の体毛が太陽の光を反射して、鏡のような状態になることで姿が見えなくなるってことらしいです」

「そ………………か………………っ、ところで、エリシアが、胸を露出させてる…………いつものことか…………」

「してないです! それ幻覚ですから!」



 フーリエちゃんは熱は下がったものの、吐き気と息切れ、幻覚と幻聴に苦しんでいました。高熱で浮かされて幻覚を見る話はまれに聞きますが、下がってからというのが謎のタイミングです。普通の風邪ではないのは確定です。


 当初の見立てでは、上空を滞留していた有害物質による影響としていました。そしてその見立てが正しいのならば、その有害物質は相当に危険な物です。国民全体にも影響が及ぶ重大な懸念事項であることは火を見るより明らかです。

 しかしここで疑問が。上空に吐き出される煙といえば黒煙。それらはほとんどが石炭を燃やして排出される煙と聞きました。石炭から出る煙に幻覚や幻聴の作用、要は神経系を脅かす物質が含まれているのでしょうか?

 確かに肺への影響はありますが、神経系に影響が出るイメージはありません。もっとも、他の物質と化合してという話なら別ですが。どちらかといえば人工的に作り出された化学物資か、植物の持つ毒性によるイメージが強いです。



「先日の休日は何処に行っていた?」

「0番街と工業区、それから神秘の泉です」

「工業区も神秘の泉も怪しいけど、倒れたのがフーリエだけと考えると、やはり怪しいのは捜索範囲の上空……」

「持病などはございましたか?」

「……うっ、ない…………っ、原因……た、たぶん、植物系…………」

「とはいえ、どう調査すべきか……空気中に含まれる物質を調べる道具なんてないし、実際に飛んで確認したら被害が広がるし……」



 メフィさんの言う通り、調べる手立てがありません。フーリエちゃんが空を飛んでいたのは住宅地で工場はありません。一軒一軒回って違法な植物を所有していないか調べるのも、権限を持たない私達には不可能です。



「仕方ない。あそこ行くか」

「あそこ、とは?」

「情報屋。便利屋には付き物ってね。彼女ほど役に立つ存在はいないけど、クセが強いし、要求してくる対価もメンドクサイけど」



 メフィさんは目を逸らし、眉をひそめました。誠に不本意である、との心の声が漏れ聞こえるようです。



「私行きます。待っててくださいフーリエちゃん、必ず治してあげますから!」

「わたしも同行します!」

「エリシアさんはフーリエちゃんの看病をお願いします。私とメフィさんで行かせてください。エリシアさんに頼ってばかりではフーリエちゃんに示しがつきません」

「分かりました。でも無茶はしないでください。その時はわたしが駆け付けますから!」



 エリシアさんの心強い言葉に背中を押されながら、フーリエちゃんの弱々しい表情に覚悟を決めて、情報屋のいるというレストランまで向かいました。



「【ドゥラメンテ】って名前の店なんだけど、その店主が情報屋なんだ。情報を貰う代わりにランチタイムの営業を手伝うのが対価なのさ」



 なるほど、飲食店のランチタイムは激混み。その中で働くのですから嫌な顔になっても仕方ありません。

 扉をノックすると、トタトタと軽い足音が中から聞こえてきます。そして勢いよく開け放たれた扉から現れたのは、和風なエプロンドレスを着た黒髪で背丈が低めの少女でした。フーリエちゃん以上、私未満くらい?



「はいはいどなたって、メフィちゃか。さては聞きてことあんだない? ところで、隣のめっこさどしたい?」

「旅人だと。訳あってうちを手伝ってもらってる」

「は、初めまして。モトヤマ・ヒナです……」

「おらはキャリィ、もっぱらわがからは情報屋いわっちけどもない。立ち話もなんだ、上がってない」


 確かに訛りが強く、滑るような話し方でなんとなくしか内容を理解できません。メフィさんも最初は困惑したに違いありません。

 カウンターに案内され、キャリィさんこと情報屋は開店準備を進めながらメフィさんの話に耳を傾けます。



「もうひとり手伝いで魔法使いの女の子がいるんだけど、最初は熱が出て風邪かと思ったら、下がった途端に酷い息切れと幻覚に幻聴が出てね。最初は工場からの煙が原因かと思ってたけど、どう考えても石炭が原因とは思えない症状なんだ」

「リラちゃはさすけねえってことは、魔女っ娘だげ他の場所さ行ったとかでねの?」

「その通り。でも水平方向ではなく、高さ方向に違う場所だけどね」

「煙は上さ上がっから、危ねえ煙も空さ流れっぺ。そんだがら人さに影響が出ねえように高くしてっぺ」

「でも飛んでいたのは30と35だよ? 居住区だよ? 工業区には3人とも行ったけど、他2人は無事。つまり怪しいのは居住区の上空ってこと」



 そう答えると背中を見せていた情報屋が振り向き、目を見開いてこちらを見てきました。



「それはおがしい。居住区には有害な煙が流れてこねえように風の流れが制御されでるはずだべ」

「でしょ? 仮に工業区からだとしても、報告によれば煙は9割が石炭で、他は水蒸気や紙とか木材を燃やした煙。これはセンチュリー家の下で管理されてるはずだし……」

「上の人だぢ信用しねえにしても、したらみんな倒れてるはずだし」

「変でしょ?」

「おっかね」



 標準語と方言が入り乱れる会話を聞いていると、また違う世界に来たような気分です。頭がこんがらがります。

 居住区に精神に異常をきたす物質が流れてくるのはありえない、と言っているぽい気はしますが。

 要するに危ないってことですね。



「どうだったがなぁ。そだこど聞いたことあったべが」

「些細なことでもいい。今回は手っ取り早く解明しないと手遅れになる可能性がある」

「少なくとも、気流システムがぼっこれた話は聞いてねえ。となれば怪しいのは居住区だべ」

「何かをバラ撒いてるのか……」

「今のどごろは、そだのは聞いだことねえ」



 情報屋は作業の手を止めると、腰に両手を当ててこちらを見下ろしてニヤリと口角を上げました。それは不敵な笑みという言葉がぴったり当てはまるような企みを隠した表情でした。

 何を言われんとしているかは、私でも察することができます。



「そんじゃ、いづも通り店手伝ってけろ。リラちゃも体験ってことでお願いすっぺ」

「い、あ、う、ががあ、ええっと」



 うろたえているとメフィさんの手が肩にポンと置かれ「諦めなよ」の一言。



「む、無理っ………………! た、たすけて………………っ!」



 しかしそのか細い声は誰にも届かないのでした。

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