表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第5章 小さな町ですが、物騒な事件の匂いがします!
76/120

よりみち5 フーリエちゃんの魔法教室 実践編!前編

「覚醒がしたいです」



 ふとそんなことを私は口走りました。キョトン、と首を傾げるフーリエちゃん。あぁっかわいい!!



「覚醒、って何を?」

「決まってるじゃないですか、魔法ですよ。私ってまだまだ戦闘経験が足りないじゃないですか。だから魔法の腕前を磨きたいんです!」

「はぁ」



 フーリエちゃんは納得のいかないご様子。

 ほらよくあるじゃないですか、主人公が成長して一気に強くなるやつ。特に日曜の朝にやってる番組ではお約束の回。あれになってみたいというのもありますが、そもそも私は今の腕前に満足していません。

 経験回数も少ないし、攻めより受け……じゃなくて守りに徹していることが多い気がします。コルテでは爆破事件の犯人に私が人質として取られてしまう情けない姿を晒してしまいました。

 自分の身を守るためにも、憧れた魔法をもっと好きになれるようにも、ここでひとつ“覚醒”が必要ではないかと思った次第なのです。



「とはいえ覚醒も生半可では成し遂げられないのも承知です。なのでフーリエちゃんお願いです! 実戦で使える魔法の扱い方を私にご教授願います!」

「私は戦闘とか知らないし……」

「知らないんじゃなくて、一発で終わらせるから誰も参考にならないんですよね」

「エリシアみたいな戦闘狂に言われたくないよ」

「お願いですこの通り! お金も出しますから!」



 私は引き下がらず、異世界転生した日本人における伝家の宝刀、ジャパニーズドゲザで懇願しました。大抵のお願いや許しはこれで解決するってラノベで読みました。



「本当に私、戦闘知識はほとんど無いよ?」

「上級魔法の類だけでも、どうか……!」

「だとしらた追従式のやつとか、あとは……」



 見上げた先でフーリエちゃんが顎に手を当てながら、ゴニョゴニョと考えています。土下座から頭を上げたアングルで見るフーリエちゃんは逆に大きく見えて、別の角度からの良さが出ていて尊…………



「じゃあ教えるよ。リラの要求通り戦いの中で役立つ魔法と、あと【戦闘のアイデア集】って本があったからあげるよ」

「物騒なタイトルですね。後で読ませて頂きます!」



 早速、人気(ひとけ)のない場所で向かい合ってフーリエちゃんの魔法教室実戦編スタート!



「最初に教えるのはGilaemf(追従せよ)。ホーミング魔法ともいう。名前の通り攻撃が杖の動きに合わせるようになる」

「|Gilaemf Deqazukk《火球よ追従せよ》だと炎の球がついていくようになるんですか?」

「そそ。そのままだと魔力弾が出てくる。とりあえずあそこのウサギ狙ってみて」

「『Gilaemf(追従せよ)』!」



 魔力弾が放たれると緩いカーブを描いてウサギに向かっていきました。

 するとウサギは気付いて一目散に逃げますが魔力弾はウサギを追いかけ、ついに追いつくことはできなかったものの、姿が見えなくなるまで追従し続けました。



「成功、ですか?」

「うん、そうだけど……」



 フーリエちゃんが妙に懐疑的な目でこちらを見てきます。私、悪い意味でなにかやっちゃいましたか……?



「リラってあの時のが最初になんだよね、魔法」

「妙な倒置法が気になりますが、そうです」



 あの時、とは言わずもがなフーリエちゃんと初めて出会った日のことです。正確にはその翌日ですが。



「相変わらず、いとも簡単にこなすよなぁって」

「だってフーリエちゃん、私にフーリエちゃんの魔力を流して即席で使えるようにしたじゃないですか。それに魔法は都合のいいものだとも」

「確かに言ったけど、それにしたってホイホイ使えちゃうのは何でだろなぁって。私の魔力の影響を加味しても、習得まで3年は掛かると思ってたけど」

「それってつまり、言い方悪いかもですけど、わざと難しい魔法をやらせて手っ取り早く諦めさせようとしてたってことですか?」

「そういうところ!」



 急に叫ばれ、心臓がキュッと締め上げられました。怒っている様子ではないものの、どこか腑に落ちないようで、私の頭も少しずつ混乱してきました。



「リラは直感が鋭いよね。瞬間的に色んな情報を受け取って閃きを得る能力があるんだと思う。これはスキルみたいな小技じゃなくて、リラの感受性とか思考回路がそうしているんだろうね」

「えぇ……?」

「魔法は感覚が大事って教えたでしょ? リラの類まれな直感が、初見で色んな魔法を扱えてしまう優れた感覚に直結しているんだ」



 フーリエちゃんは腕を組んでじっとこちらを見つめながら言葉を放ちます。ローブが風になびき、本人はそのつもりでないと思いますが、その姿に威圧感を覚えました。

 確かに閃くことは多かったですが、それは大抵オタクの妄想であったり、現実逃避の方法だったりで、とても戦術で生かされる方向性ではありませんでした。納得できる節がなくて頭クルクルパーになりそう。

 もしかして:無自覚系チート?



「いまいちピンときてない様子だから例えを出すと、物理法則って何となく想像がつきやすいよね? エリシアの腹部に向かってこぶし大の鉄球を投げたらエリシアはどんな様子で飛ぶ?」

「なんでわたしを例えに出したんですか?」

「えっと、くの字に曲がって、手足が前方に伸びた状態で飛んでいきます」

「ねぇなんでわたしなんですか??」

「そうだね。ではそう考えた理由として論理的な説明はある? 計算したとか何とかの法則でどうとか」

「ねぇねぇなんでわたしなんですか???」

「えっと、ないです」

「それと同じことが魔法で、そして高解像度で発生してると思って。」



 フーリエちゃんの例えで少し理解できました。そして私なりに考えた結果ですが、どこかで見たことあるから直感で捉えられるのではないのでしょうか。

 ボールが落下して跳ね返る様子、水の跳ね返り、卵の割れ方エトセトラ……全て物理法則が関係していますが、それらを無視しても動きの様子は想像できてしまいます。

 それは日常的に目で見ているからであり、同じく魔法も()()()()から短い時間で習得できたのでしょう。つまり私がこれまで享受してきたアニメやラノベで見てきた魔法と、比奈姉から教わった魔法の解釈が異世界で有利に働いているととではないでしょうか?

 何回も読んだ比奈姉の研究ノート。完全には理解できませんでしたが、この世界で魔法を使うにあたって無意識に意識して役立っているのなら………………比奈姉はどんな反応をしてくれるでしょうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白いです。感想を書くのが苦手なので上手く言えませんけど、読みやすい文章で情景が浮かんできます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ